シーン4:友達
「ふうん。雨宮さん妹さんがいたんだねえ」小学校の方向へ向かう美久と別れて、霧崎と雨宮は並んで歩いていた。
「それはともかく、あんたは何で傘持ってないの」雨宮は霧崎の傘を差し出しながら言った。
「いや、そりゃ、雨宮さんに貸したから…」
「んなこたわかっとるわ。あんたん家には一本しか傘がないわけじゃあるまいし」雨宮ははっとした。「……、あるよね?」
「いや、そんな悲しげな瞳しないでよ。ちゃんと傘くらいあるから」
「じゃなんで」
「今日は晴れてよかったよね」雨宮の本日2回目のひっぱたきが飛んだ。
「いや、そもそもそんな降ってないじゃないスか。これくらいなら朝は傘なしで行って、帰りは雨宮さんが返してくれるかと」
「うーん、ま、確かにあんまり降ってないけど」
「で、ちょっと聞いておきたいことがあるんだけどさあ」
「なに?」
「怒るかもしれないんで言いにくいんだけどさあ」
「なに?」
「いやほんと怒ったら嫌なんでいいたく」本日3回目のひっぱたきが以下略
「雨宮さんさっき俺のこと友達って言ったよね」
「んー?うん。言った」
「ぼくらって友達なの?」
「なにその、『え、俺の方は彼女だと思ってたのに俺らって友達なの?』みたいな質問」
「あー、いや、やっぱなんでもないです」
「なに、霧崎さんはわたしが友達じゃ不満なんですか?本気でひっぱたきましょうか?」
「…いや、そういうことじゃなく、というか逆で、おれなんかが友達でいいんですかと言いたいんですけど」
雨宮は肩の可動域を確かめるように二・三回振ると、おもっきしのひっぱたきを霧崎の後頭部に炸裂させた。岩石が降ってきたような鈍い音がした。
「………………」
「セリフ三点リーダだけかよ」
「………………………………」霧崎は涙ぐんでいる。
「おい」
「…本気で痛い。…死ぬ。死にます」
「ふつーに歩いとるやつが何を言っとる」
「いや、謝るとかないの?本気はだめだよ本気は。なんなのこの怪力は。雨宮さん実は鬼なんじゃないの?」
「もう一回ひっぱたきましょうか?」
「全力で遠慮しときます。…だから言いたくなかったんだ」
「じゃ言うなよ」
「うん。ごめん」
「……」
「……」
「また言ったらまたひっぱたくからね」
「…うん」
雨が強くなってきたので会話が途切れた。霧崎が何か呟いたような気がしたが、雨音でよく聞き取れなかった。




