表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/100

シーン24:嫌いなもんは?

 夕食を終えて、雨宮家はしばしのくつろぎを楽しんでいた。雨宮はテーブルの前に座っており、霧崎は両手を組んで仰向けに寝転び、美久と美羽はソファに背を持たせかけていた。楊はもう自室の帰っていていない。

 楊、今日は一言もしゃべらなかったな、と雨宮はそっとため息をついた。

「もうちょっと、楊が協調性を持ってくれればねえ」

 雨宮の呟きに霧崎は体を起こした。

「そんなことないよ。楊くんは美久ちゃんの手当てを手伝ってくれた」

 雨宮は目を見開いた。へえ、あの楊が。

「でもあれはおにいちゃんが無理やり連れてきてくれたんでしょ?」美久が嬉しそうな声を出す。

「美久ちゃんが怪我してるって言ったら、すぐ出てきたんだ」

「下手なうそつくなよな。おーかたハガネが強引に引っ張ってきたんだろ?」美羽が口を挟んだ。

 さあね、と霧崎はごまかした。「でも、ちゃんと手当てしてたじゃん」

 二人はうなずいた。確かに楊は嫌がる素振りもなく、テキパキと美久の手当てをしてくれた。楊にあんな面があったのか、と二人の妹は兄を見直した。

自分も居合わせたかったなあ、と雨宮は少し寂しい目をした。

 ――それから話題を変えて雨宮が霧崎に訊いた。

「ねえねえ霧崎。あんたの好きなもんってなに?」

「なに?雨宮さん。藪から棒に」

「次にうちに来る時、初日くらいはあんたの好きなもん作ってやろうと思ってね」

「ふうん。サービスいいね」霧崎は少しだけ考えた。「カレー」

「なにい!」この場にいる全員が反応した。そんなもん、今食ったばかりである。

「いや、だからカレー」

 沈黙。

「あの、カレ」

「却下!ほか!」

「あとは特にない」

 雨宮は頭を抱えた。美羽は爆笑し美久はニコニコしている。

「………いいよ。もうあんたにはなにも訊かん」

「いや、事実ですからね?」

「事実でもむかつく。…あんた、嫌いなもんは?」

霧崎はしばし躊躇してからつぶやいた。「………………茄子」

「よし、今度茄子カレー作ってやる」

「あの、それは勘弁してください雨宮さん」

「だめだ」

「うう」

 そういえばデザートがあるのを思い出した、と雨宮は席を立って台所に向かった。

「美久ちゃんは嫌いなもんとかあるの?」気を取り直して霧崎が訊いた。

 美久はかぶりをふった。「ううん。あたしは嫌いなもの、ないよ」

 へえ、と霧崎は鼻を鳴らした。羨ましいな。

「美羽ちゃんは?」

「あたしも嫌いなもんはねーよ」美羽は親指を立てた。

「そっか。いいなあ二人とも。ぼくなんて嫌いなもんが多くて怒られてばっかだよ」

「ピーマン」背後から急に声がした。

振り返ると、雨宮がキウイフルーツを盛った器を持って立っていた。

「なに?雨宮さん」

「美久はピーマンが嫌い。だからうちでは出さない」

 霧崎が美久の方に目を向けると、美久は目を逸らした。

「べつにかっこつける必要ないでしょ。嫌いなものなんて誰にでもあるんだから。それから…」雨宮は美羽のほうを向いた。「美羽はえびが嫌い」

「あねき!」

「なんであんたたち、霧崎にかっこつけるの?」雨宮はデザートを机の上においた。

「別にかっこつけてるわけじゃないよ」

「でもわざわざ言うこともねーじゃん」二人はバツが悪そうに抗議した。

「でも、さすが雨宮さんだね。家族のこと理解してるんじゃん」

 みんなデザートに手を伸ばして食べ始める。

「で、肝心の雨宮さんは?」

 雨宮は妹たちの方に視線を向ける。妹たちはニヤニヤしながら姉のほうを見ていた。雨宮は目線をそらした。

「嫌いなもん?………ないよ?」

「あー、おねえちゃん嘘つき!」

「あねきは刺身食えねーじゃん!」

「ちょ、わざわざ言うことないでしょうが!」雨宮は妹たちに口を尖らせる。

 妹たちはあっかんベーを返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ