シーン11:ちゃん付け公認です。
「で、美久ちゃん。さっきぼくのこと、おにいちゃん、って呼んでたみたいだけど」
「うん」美久は満面の笑みを見せた。
「おれ美久ちゃんの兄貴じゃないよ?」
「アニキじゃないよ。おにいちゃんだよ」美久は晴れわたるような笑顔を崩さない。
「さっきは、霧崎さん、じゃなかった?」霧崎は困惑の色を見せている。
「だめ?」霧崎の様子を見て、美久は悲しそうな顔をした。
「………、なんだこのエロゲ」霧崎は呟いた。
「なぁに?」
「いや。なんでもない」霧崎は手を振った。「ま、別に悪いことないよ」
「じゃあおにいちゃんだね」美久は嬉しそうな顔をしている。
「ふーん」美羽が悪戯っぽいまなざしを向けてきた。「あんたエッチなゲームやるんだ」
「聞こえやがったのか美羽さん」
「ちゃん」
「はい、ちゃん付け公認です。むしろ推奨されました」霧崎はだいぶ慣れてきたようだった。「…で、美羽ちゃんはおれのこと、あんた、と呼ぶわけだ」
「あんた名前なんだっけ?」
「霧崎鋼」
「ハガネ!はがねって、似合わねー」美羽は吹き出した。「もっとさあ、なよなよしい名前なかったのかよ」
「ほっとけよ」
「じゃ、あたしはハガネって呼ぶから。ハガネ、あー、あたし喉渇いたなあ」
「あ、じゃあ、あたしなにか飲み物とってこようか?」美久が手を挙げた。
「美久はいいんだよ。ハガネ、あー、喉が渇いたなあ」
「なんでおれ?」
「いいのかあ?エッチなゲームやってること、姉貴にバラしちまうぞぉ」
「雨宮さんにバラす?そりゃ言われたら恥ずかしいけど、だから?」霧崎は平然としている。「…ていうか、そもそもやってねーし」
「なにぃ。て、てめえら、そこまでの信頼関係ができているっていうのか?」
「は?」
「どんなことでも許容しあえる仲だっていうことか!」美羽は大げさに頭を抱えてみせた。
「???」霧崎は首をかしげた。「まあ飲み物くらい持ってくるよ」霧崎は立ち上がって、冷蔵庫のあるキッチンに向かった。
「ねえねえ美羽ちゃん。なんの話?」美羽の様子を不審に感じて、美久が言った。
「考えてもみろよ美久。ただの友達に晩飯まで振舞うと思うか?」
「仲いいんだねえ」
「そう、あねきとハガネはかなり仲がいい。つまり」美羽は言葉を切った。「2人はできてるってことだよ」
「できてる?」
「付き合ってるってことだよ」
「付き合ってるって?」美久はしきりに首をかしげている。
「………、美久には早かったか」美羽はため息をついた。
「なにが早いんだ?」声に驚いて振り返ってみると、そこに霧崎が立っていた。美羽に向かってジュースを差し出している。もう一方の手にも同じジュースが握られているようだ。
「は、ハガネじゃねーか。早かったな」美羽は慌てて霧崎が差し出したジュースを受け取った。
「はい、美久ちゃんも」もうひとつのジュースは、美久に渡した。「お姉ちゃんが、もうカレーできたから、取りにきなさいってさ」
はーい、と2人とも立ち上がってキッチンに向かった。
「あ、美羽ちゃん」霧崎に呼び止められて美羽は振り返った。
「付き合ってねーよ」霧崎は不機嫌そうな声を出した。
「聞いてたのかよ、ハガネ」




