シーン100:絶対にそこら辺に捨てないこと
全員一箇所に集まる。
雨宮がライターを取り出す。
めいめい、好きな花火を持っており、雨宮が差し出す火にその先端を近づけていく。「終わったらバケツにつっこむこと。それから、絶対にそこら辺に捨てないこと」
「おーすげー。めちゃくちゃきれーだぜ」
「わぁ、色が変わったよぉ。すごいねぇ」
「わーすっげぇ勢い。よーし、振ってみよ」
「わ、隼くん危ないよ」
「あ、あち、あち、上にやったら、火が飛んでくるや」
「たりめーだろ。バカか隼」
「むー、美羽ちゃん、よくも言ったな。隼ビーム」
「ちょ、おめ、こっち向けてくんな。仕返しだ」
「美羽ちゃんも隼くんに向けちゃダメだよ」
「あーあ、もう消えちゃった」
「こっちもだ。あねきーもっとちょうだい」
「………」
「おお、雨宮くんが一人で座っている。なにをしているのでしょう」
「………」
「……一人で延々と線香花火やってるよ。一人でやってて楽しい?」
「……それなりには」
「おお、しゃべった。お、向こうから誰か来たな……」
「ねえちゃんほら見てー……ん?誰これ?」
「隼……。何回かあってるはずだよこの人には」
「むー。確かにどっかで見たことあるような」
「……雨宮、楊。君は、霧崎さんの弟の、霧崎隼くん」
「あー思い出した。美羽ちゃんと美久ちゃんのにいちゃんだね」
「……うん」
「あ、また花火消えちゃったー。ねえヤナギにいちゃん、次はこっちの花火やるから、火をおくれよ」
「……これは線香花火だから、多分不可能」
「いいじゃん。火、もらうね」
「隼、チャレンジャーだ」
「お、お、点いた!ありがとね、ヤナにいちゃん!じゃーね」
「あ、隼行っちゃった」
「……ヤナにいちゃん」
「ねえ雨宮くん、こっちでもっと派手なのやろうよ。みんなと一緒に」
「………」
「黙ってねーで行くぞ!」
「あ、ちょ、まだ消えてない」
「はいみんな注目―。でっかい花火やるよ」
「美緒ねえちゃん、なにそれ。なんか飛び出て来そうだよ」
「ふっふっふ、飛び出るよー。もうすさまじく飛び出ていくよー」
「へぇ。で、おねえちゃん、なにが飛び出るの?」
「引きこもりの夢とか希望とかが飛び出て、弾けて消え去っていくんだよ。悲しいねえ」
「引きこもりとか言うな!!!」
「霧崎のこととは言ってねえよ!とにかくもうバーでグワァーでドゥルヌワーだよ」
「なんだよその擬音」
「ええっ、バーでグワァーでドゥルヌワーでジャギーでなのか?!すっげぇぜあねき」
「……増えたぞ」
「な、なんだかわたしドキドキしてきましたよ。もう心の中までバーでグワァーでドゥルヌワーでジャギーでドゥワーンですよ」
「意味不明」
「さあさあ、みんな、準備はいいかな?」
「じゃ、ここまででまだ発言していない楊くんから最後に一言」
「……蝶」
「はい、楊くんからのありがたいお言葉でしたね。たぶん花火の鮮やかさが蝶に似ているとか言いたかったんでしょう。では雨宮さん」
「着火!!!」
「おおー」
「どうだ。バーでグワァーでドゥルヌワーでジャギーでドゥワーンでブォオオーンな花火だろう」
「……ま、確かに迫力があって綺麗ではある」
「よ」
「ども」
「線香花火か」
「もう残り少ないんでね。ラストはやっぱりこれやって切なくならないとね」
「切なく、ねえ。あたしもやる」
「はい」
「うん。……あ、落ちた」
「下手だな雨宮さんは」
「む。そういう霧崎は……まだ残ってんな」
「集中力が違うのだよ」
「普段の生活に活かせてないくせに」
「負け惜しみだな。あ、落ちた」
「じゃ、次点けますか。……線香花火って、あたし好きだな」
「切ないけどね」
「切ないけどね。小さな体から、小さな灯を必死でパチパチさせてんのが、好きだな」
「必死で?」
「必死で。この中央の火の玉がさ、もう命が残り少ないことはわかってんだよ。だから、最期に、自分の生きてきた証しを立てるために、火の粉を飛ばすんだ」
「なるほど。でも、火の玉はさ、ほんとはずっと生きたいと思ってんだろうね。だから、こうやって、棒に必死でしがみついてる」
「うん、そうかもな。でも、もし火の粉を飛ばすことができなくなっても、生きたいと思うのかな」
「それは……どうかな。そうなったら、なんのために生きているのだかわからない」
「生きていればさ、また火の粉を飛ばせる日が来るかも知れないよ」
「うん。でも、いずれは落ちる。こんな風に」
「うん。切ないね」
「切ないといえば、明日から学校だな」
「うん。……ああ、切ない!」
「ま、仕方ねーやな。おーい、みんな、そろそろ帰るよー」
忘れ物の確認を済ませて、帰宅。
作者より
『雨降りの日に』をここまで読んでいただいてありがとうございます。気に入っていただけましたでしょうか。
物語はまだ続く(はずな)のですが、ここで一旦お休みします。しばらく更新はありません。もし万が一、もっと読みたいのになー、なんて思ってくださっている奇特な読者様がいらっしゃったら、申し訳ありません。平に謝ります。
作者には物語をきちんと完結させる気はあります。いつになるかはわかりませんが、いつかまた更新を始めるつもりです。
その時はどうぞ、気が向いたらで結構ですので、お読みいただければ幸いです。
最後にもう一度。
ここまで『雨降りの日に』を読んでいただいて、本当にありがとうございました。




