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シャープな診断 ②

♯1 FELLOW へのお題は〔眠れない日〕です。

〔オノマトペ禁止〕かつ〔匂いの描写必須〕で書いてみましょう。


 窓を通り抜けて部屋に降り注ぐ、青白い矢の雨。

 母は言った。


「あなたを思うと眠れない」


 眠れないことがなかった私。

 眠れないことは大人の世界。


 でも今は、時計の針が足をそろえて逆立ちをしている。

 窓を開け、風を鼻孔で受け止める。

 湿った中に草木の寝息が混じる。私は夜の匂いを知った。


♯2 FELLOWへのお題は〔伸ばした腕〕です。

〔モノローグ禁止〕かつ〔キーワード「猫」必須〕で書いてみましょう。


 彼女の伸ばした腕は、木の幹を取り込んで育つ蔓のごとく、彼の背中を抱きしめる。ひしと力を強め、静を保つかと思えば、今度は獣のように動を謳う。彼の背中に掌を合わせながら、まだ戸惑いの覚めない彼を、絹織の上に押し倒す。彼女は猫となり、彼の首筋の突起にたおやかな髪を擦り付けた。


♯3 FELLOW へのお題は〔かなしいひと〕です。

〔三人称(彼、彼女等)の使用禁止〕かつ〔「青」の描写必須〕で書いてみましょう。


 交通事故で私は左足を失った。だが、趣味のバスケットボールを続けたくて、車椅子で速く走る練習もし、市の障がい者チームに入った。

 そんな私に取材の要請が入った。断ると電話口の男は「取材してやってるんだぞ!」と吠えた。私は男に「あなたは悲しい人だ」とだけ吐き捨てて電話をぶった切った。


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