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愛憎のラプンツェル  作者: 銀ねも
第七話 結実
72/227

結ばれる

性交を仄めかす描写があります。注意です(;゜∀゜)

 え? とラプンツェルは目を丸くする。


「あなた……経験があるの?」

「子をもうけるのは王の責務だ。その為に必要な技術は、会得していて当然だろう」

「聞いてないよ」

「知らせる必要があったか?」

「……ないね」


 頬をひくつかせていると、ニーダーに顎を掬われる。ニーダーの妖しい微笑みに、ラプンツェルは引き攣れた笑顔を返した。


「と、とにかく、今夜は解散だね。もう、そういう雰囲気じゃなくなっちゃったし」


 胸の前で手をぱたぱたと振って、じりじりと後退を試みる。けれど、抵抗むなしく、ニーダーに難なく取り押さえられた。ラプンツェルを寝台に押し倒し、ニーダーは皮肉気に唇をたわめた。


「私は雰囲気など気にしない。夢見がちな女の子ではないからな」


 ニーダーの手がラプンツェルの首筋をなぞる。ラプンツェルはひぃ、と情けない悲鳴を上げて、首を竦める。毛衣を逆立てる猫のように戦慄くと、ニーダーは苦笑した。

 しかし、手はちゃっかりと、襟元を寛げようとしている。不埒な手を、ラプンツェルは両手で押さえつけた。 

 これ以上を看過すれば、ニーダーは調子にのって狼藉を働くだろう。きっぱりと断らなければならない。

 しかし、焦りで思考は空回りする。ラプンツェルは、思い付きで喚いていた、


「ニーダー、怒ってるのね!?」

「私を怒らせるような事をしたのかな?」

「……ちょっとだけ。でも、あなただって悪いんだから……!」

「君には私を受け入れ、妃の責務を全うする覚悟があるのだろう? ならば、この成り行きに不満を唱える筈がない」


 ニーダーは有無を言わせない口ぶりで言うと、素早くラプンツェルの米神にキスをした。ぎりぎり、石の心臓に触れないところだ。吐息を吹きかけられると、体の芯が痺れ、力が抜ける。


 ニーダーはその流れで、ラプンツェルの肌に唇を這わせた。ところどころ吸い上げて緩急つける。擽ったい唇の感触と、吸いつかれる、ぴりぴりとした小さな痛みに、ラプンツェルは翻弄された。

 夜着の裾から侵入したニーダーの手は淀みなく動き、内腿の薄い皮膚を探っている。剥きだしの膝でニーダーの腰を挟み、留めようとするが効果は無い。ラプンツェルは泣きが入っていた。


 一体、これはどういうことなのか。思っていたのと違う。とにかく、シーナがこの行為を「愛の試練」と呼んでいた意味がわかる気がする。


 恥ずかしいことをされて、恥ずかしい声を聞かれ、恥ずかしい顔を見られる。

 これでは、愛する男性が相手だったとしても、二度目を望めないと思った。恥ずかし過ぎて死んでしまう。

 

 子どもという宝を得る為には、相応の試練に挑まなければならないということだろう。しかし、だとしたら不公平だ。ラプンツェルは本気で嫌なのに、ニーダーは楽しそうではないか。目が爛々としている。


 そんなことをとりとめなく考えて、現実逃避をしていた。けれど、いよいよとなると、そうもしていられない。 

 ラプンツェルは、両手で覆った唇から、湿った息を零しながらニーダーを見上げた。


 殆ど着衣を乱していないニーダーは、ずるいと思う。ぐずぐずと鼻を鳴らすと、ニーダーは困ったような顔をして、ラプンツェルの額にキスをした。


 優しい感触に僅かな希望を見いだす。ラプンツェルは潤んだ上目づかいで問いかけた。


「ねぇ、ニーダー? 怖くなったら、やめてくれる?」


 ニーダーは瞠目する。そして、柔らかく微笑んだ。


「……善処する、と言いたいとこだが……君があまりにも愛らしいものだから、歯止めが利かなくなってしまいそうだ」


 期待外れだ。優しいのは微笑みだけ。ニーダーの返答はまったく優しくない。

 ラプンツェルが瞬きをすると、大粒の涙が頬を伝った。ニーダーはラプンツェルの赤い頬に唇を寄せる。涙を舌ですくい取り、赤い耳朶をはんだ。震える耳元で、煮詰めた糖蜜のような声色を使い、囁きかけてくる。


「私はこのような行為に嫌悪感を抱いていた。だから、驚いている。私も普通の男と同じように、愛する女性を抱きたいと思うのだな」


 ラプンツェルの額に自身の額をこつんとぶつけ、ニーダーは目を細めた。


「怯えなくていい。実を言うと、ちっとも怒っていない。私の心は今、君を愛しいと思う他に、何も感じられないよ」


 結局、ニーダーはやめてくれなかった。

 

 ラプンツェルはニーダーに首っ玉に縋りついた。それだけでは飽き足らず、ニーダーの肩や背を掻き毟る。

 ニーダーの左肩を掴んだとき、石のように固い箇所に触れた。ニーダーは息を詰め、眉根を寄せた。歯を食いしばって、苦鳴も噛み殺す。痛かったようだった。古傷に爪を立ててしまったのかもしれない。


 しかし、ニーダーはそれでも、ラプンツェルの腕を振りほどこうとはしなかった。ラプンツェルにとって、せめてもの救いだった。


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