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愛憎のラプンツェル  作者: 銀ねも
第二話 呵責
19/227

嘆きは深い ※6月20日に割り込み投稿しました

なんということでしょう……!

この話、投稿し忘れていました。大失態です。短いお話ですが、これが抜けていると、話がブツ切れになってしまい、違和感があります……。

今まで気がつかなかったなんて、ダメダメです。どうも、すみません(;_q)

 ***


 顔を痛打されるのは、背を鞭で打たれるよりも、少女の心を痛めつける。


 目を覚ますと、腫れぼったい瞼が房のように垂れ下がり、視野の殆どを覆い隠していた。メイドを呼ぼうとしたが、舌も口腔もずたずたで、喋ることが出来ない。唾を呑むことすら、苦労する。ベルを手さぐりで探しているうちに、転倒してしまった。その物音に驚いて、メイドがやって来た。


 翌朝には、瞼の腫れがいささかひいていたので、ラプンツェルはメイドに言いつけて手鏡を持たせた。おずおずと手渡すメイドの様子を見て、ある程度覚悟をしていたけれど、鏡にうつった顔を見てしまうと、涙がとまらなかった。


 それから数日は、岩のように腫れあがった顔に目を瞑り、啜り泣いて暮らした。


 五日後。手で顔を触った感じが良かったので、久しぶりに手鏡に顔をうつしてみることにした。ラプンツェルの、蚊が鳴くような小さな呼び声に、メイドはすぐに駆けつけてくれた。


「いかが遊ばしましたか?」


 鏡に顔をうつしたいの。と言うと、メイドはすぐに鏡をとってきた。メイドから手鏡を受け取る。恐る恐る鏡を覗き込むと、円らな瞳の少女が、泣きそうな顔をして見返していた。少女の強張った頬が、かすかに緩む。

 そっと頬を撫でてみた。輪郭は元通りの卵形で、滑らかな肌に覆われている。


「お綺麗です。お綺麗ですよ、お妃さま」


 無駄口を叩かないメイドが、ラプンツェルの励まそうとして、そう言った。同じ女性として、思うところがあったようだ。ラプンツェルはつられて微笑んだ。怪我が治れば、次の試練が訪れることを、一瞬だけ忘れられた。


 ところが、完治してもニーダーは迎えに来なかった。ラプンツェルの髪をけしくずりながら、メイドの声は、なんとなく明るい。


「陛下は当分の間、お見えにならないそうです」


 目をぱちくりさせるラプンツェルに、メイドは慈しむような微笑みを絶やさずに言った。


「お妃さまのお世話を抜かりなく、と言付けられました。この月はもう、いらっしゃらないのではないでしょうか」


 ラプンツェルは苦笑した。主人に能天気な憶測を吹き込むなど、メイドとしてあるまじき越権行為である。主人を思いやるからこそ、口をついて出た励ましを、ありがたいと思えども、咎めだてするつもりは毛頭ないけれど。


 メイドたちの細やかな心配りのお陰で、ラプンツェルの暮らしは快適だった。メイドたちが話しかけてくれると、憂さ晴らしになる。少しずつ持ち直し、食事も徐々に喉を通るようになった。


 ニーダーの沈黙は気味が悪かったが、体と心を、休めるうちに休めようと思った。ニーダーがいつ、どのような気まぐれを起こすか、皆目見当がつかないのだから。



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