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~15~

まだまだグダグダっといくよ~

 グランセル中央会館にあるオリヴァーの執務室、レオン達はオリヴァーから解析結果の連絡を受けココへやって来ていた、オリヴァーはパサリと書類を静かに置くと静かに話を始める。


「結果だけ言うと白、とはいえミヤっちから聞いて厳重封印した呪いのテキスト文章のアイテムを除けば、と付け加える必要があるけど」

「感染したモンスターの出現はどうだ?」

「警備隊がフルレイド編成で少し遠くまで遠征してるみたいだけど、バグモンスターがPOPしたという報告は来ていない」

「そうか」

「むしろ遠征した結果が、帝都エレボニアからの亡命者(だいちじん)ときたもんだよ、まったくエレボニアのプレイヤーときたら」

「その内、エレボニアはプレイヤーが支配するプレイヤーの為だけの街に成り下がるだろうな」

「きっと、元の世界に帰れない事に対するやり場のない怒りが、彼らをそうさせているんだろう」

「俺らも、絶望してしまえばああなっていたんだろうな・・・・」

「そうかも知れないね」


 やりきれない想いを胸に秘めレオン達は静かに窓の外を眺め、彼方の空を眺めていた。だがオリヴァーはコホンと咳をして場の空気を変えると次の案件へと話を変えた。


「バグモンスターの解析の為にはやっぱ先輩の力が必要だと思うんだよね・・・・遺憾だけど」

「アイツか・・・俺アイツ苦手なんだよな・・・」

「僕も苦手だよ、あんな変人が得意な人なんて居ないって」

「まあ・・・なあ」


 オリヴァーの先輩のGM、一応ログインしているのは確認はしてはいるのだが、苦手な為念話で連絡したことはあまり無かった・・・だが、バグウイルス等と言うものが出てきた以上は力を借りるしかない。


「で、トマスはどこに?」

「あ~、こないだ下の受付に冒険届けが出てて、『アクルプスの地底寺院跡』に行ったみたい」


 グランセルではプレイヤー達の長期的(日帰りは問題ない)な冒険はグランセル中央会館の冒険者連盟の受付に外出届もしくは冒険届けと言うものを出さねばならない、これは街に住む冒険者の数が遥かに多いがゆえに隅々まで把握仕切れず仕方なく導入された処置である。だが届け出に記した遠征期間が過ぎても帰ってこない事を心配し捜しに行った結果、危うい状態で一命をとりとめた事態もあるので未だに続いているのである。

 とは言えトマスは基本的に冒険期間3ヵ月などと書くのもザラではない、先輩GMでオリヴァーよりもゲームに干渉する権限が上であるので、並のモンスター程度では相手にならない。


「基本的にこのゲームの裏設定とか歴史背景とか考えるの好きだったもんなアイツ」

「思う存分調べてくれれば良いよ、元の世界に帰る方法も見つかるかも知れないし」


 オリヴァーとしては一応放っておく理由もあるので、関わらないならそれに越したことはないと思っている、だが。


「残念な事に、研究に夢中で僕が念話すると3時間くらいセルデシアの歴史背景とかの蘊蓄を語られるんだよね·····、だから僕あの人に念話するの嫌なんだよ」

「・・・・それはまた、災難だったな」


 話を聞かないので、直に迎えに行って力付くで連れ帰るしかない状況のトマスにイライラしつつもオリヴァーは迎えに行くための理想的パーティー表をレオンに渡した、メンバー表には。


 レオン(経験豊富なパーティーリーダー)

 タカミヤ(何でも御座れの超絶防壁(にんげんせんしゃ))

 ペンドラゴン(宿代が給金で賄えないので)

 麻里菜(ペンドラゴン同様)

 以下2名自由選択。


 と書いてあり、書かれた理由を見てレオンとタカミヤはげんなりした。


「宿代が給金で賄えないって、どんだけだよ」

「全部食費に消えてるらしいよ?」

「いっそ住み込みで働かせれば?」

「店の食糧が夜中の内に全部消えるらしいよ(愛想笑い)」


 お腹を空かせた英雄様達は夜中に食糧を勝手に食べ漁る事も辞さないらしい、とんだ英雄も居たものである、しかし連れていかない訳にも行かず、打ち合わせを終えたレオン達は執務室を後にしカフェテリアに向かった。

 カフェテリア『キャッツアイ』、ココで給仕をする二人を呼びに来たのだがテラス席の片隅に御船と半蔵が居た、どうも様子がおかしく御船が何時もの侍装束ではなく、ジャケットにジーンズというカジュアルスタイルだった。


「ああタカミヤさんですか、どうもヘンリーです」

「どしたのいったい?」

「いえね、タカミヤさんの忠告を無視して刀を振り回し続けてたら、折れちゃったんです」

長剣(ソード)を使うくらいなら侍士辞めるとまで言った瞬間ポキリでござるよ」

「ああ、侍士辞めたのね、で?ニート?」

「グハァ!!、ニ・・・ニートではまだないですよ?・・・刀があればまた侍士やりますし」

「別に長剣(ソード)でもいいと思うのでござるが、御船も中々頑固でござるから」

「で、刀の当てはあるの?」


 タカミヤがその質問をしたとたんヘンリーは泣き崩れテーブルをバシバシと叩き出す、泣きわめいている内容から察するに、刀を扱っているプレイヤーマーケットは無かったらしい、まあ海外サーバーでは珍しくはないが(ヤマトは思った以上に刀に溢れている、運営の頭の中ではヤマトは侍士の国というイメージが少なからず有るのだろうと思われる)、刀鍛冶も当然存在しないこの街で刀は手に入らない逸品なようだ、哀れ御船。


「そういや半蔵はどうなのよ、アナタも確か」

「拙者は少し前から長剣(ソード)に切り替えているでござるよ」

「そう」

「タカミヤさぁぁぁぁん、タカミヤさんのお古でいいんですヨレヨレの中古でいいんです、刀ををを、刀をををををを!!!!!」

「キモい、ヘンリーキモいわよ」

「うう、グスっ・・・」


 確かにタカミヤは結構な刀をもってはいるが、基本的にオーナー登録制の代物なのでいくら中古だとは言え譲ることはできないのである、仕方ないのでタカミヤは御船(ヘンリー)の頭をポンポンと叩いて慰めると、クエストから帰ってきたら御船が持っている素材アイテムで刀を打つ事を約束してあげたのだった、御船は涙を拭いて直ぐ様アイテムの引き出しを行うべく中央会館へと走っていった。ヤレヤレとタカミヤが呆れるなか、ウェイトレスの一人が料理をひっくり返し、ペコペコ謝りつつも落とした料理を集めて皿乗せると、再び客に謝った後にキッチン奥へと向かっていった。


 (あれは麻里菜よね?)


 別にドジっ娘属性や設定等なかったはずなのにやたら料理をひっくり返すので気になってシェフの許可を取って、裏へと行ってみると。麻里菜とペンドラゴンは二人して落ちて残飯になるだろう料理を食べ漁っていた、正直かなりのショック映像である、腹ペコ英雄二人がタカミヤに気付くとむせてゲフゲフ言いながらも料理を死守する構えなのが余計に悲しい、一体何をしているんだと聞いてみると。


「冒険者には3秒ルールという、落ちた物は3秒以内に拾えばセーフなルールがあると聞いたのだ」

「ほっほ~う、だぁれがそんなことを教えたのかしら~」

「ロベルトだな、アイツは良いことを教えてくれた♪」

「あんにゃろう、今度お仕置きしないとダメね」


 再び残飯らしきものを食べ始めた二人の頭に拳を叩き込み、ガゴン、ゴガンという鈍い音を発生させたタカミヤは上目使いの涙目で睨んでくる腹ペコ英雄二人の首根っこを掴むと無理矢理引き摺っていく、カウンターでシェフに二人を借りていくと説明すると、泣いて喜ばれた、この二人・・固定ファンがついてはいるものの最近はやたらと料理をひっくり返すので食材の仕入れが大変で赤字になりかけていたらしい、迷惑な英雄も居たものである、今現在オズとノインも食材集めの狩りに同行して少しでも食材を確保すべく動き回っているらしい、迷惑な英雄二人がタカミヤに引き摺っていかれる様を見た『キャッツアイ』一同は皆涙を浮かべ手を振っていた。


「ああぁ~~~~、デザートのプリンをまだ食べてないのだ~」


 引き摺られて尚食い意地の張った英雄(マリナ)に再び拳骨を入れ、ぐみゃというみっともない声を聞きながらタカミヤは街門に向けて歩いていった。


 街門前に集まった4人は丁度狩りから戻った『リリカルカッツエ』の面々に出会った、マッシュも一緒だったらしい、カッツエがパタパタと近づいてくてペコッと頭を下げて挨拶をしてくれる、レオン達も挨拶を返して狩りの成果を聞くと、かなりの収穫らしくノインは「これで明後日までは持つわね」と言っていた、その言葉にタカミヤがギロっと腹ペコ二人を見るとわざとらしくそっぽを向き誤魔化すために口笛を吹いていた、吹けてなかったが・・・。どうやらオズ達はレベルアップも兼ねて何時も食材を自分達で集めに出ているらしい、『朝一番に取れた新鮮食材を惜しみ無く使った出来立て料理』という看板文句その通りらしい、たゆまぬ努力と言うのは人知れずと言うことらしい、オズ達にレオン達がクエストに出発する旨を説明すると、マッシュが胸を拳で叩いて「俺に任せておけ!!」と格好良くいい放った、さっきまでオズ達の食材運搬を引き受けて働いていたにも関わらず、マッシュのこの男前な発言を腹ペコ二人にも見習ってほしいと、再びタカミヤはジト眼で腹ペコ二人を見ると気まずそうに明後日の方向を向いていた、流石に同じ英雄を土俵に持ってくると二人も色々思うところがあるようだ、レオン達がいざ出発しようとしたところでオズが手を上げて。


「僕も行きます!!」

「ちょオズ何を言ってるの!?アナタは『リリカルカッツエ』の大切なマスコットなのよ!!」


 慌てたあまり取り繕う事も忘れノインは色々爆弾発言をしたのだが、オズは静かに首を振ると。


「だって、いつも戦闘では僕の出番はなくて皆の足を引っ張ってばかりだから・・・」

「いやいやギルマス、ギルマスを護りたいからこそ俺らも一層力強く頑張れるんですぜ!!」


 ギルドの戦闘部隊の隊長と思わしき大男がにこやかに言ってのける皆もウンウンと頷いていたが、詳しい事情を知っている人からすれば紳士(へんたい)発言以外に聞こえなかった。だがオズは一歩も引かず皆を助けることができるような立派な男になるんだ!!と言ってマッシュの後ろに隠れたオズに対して。


「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!脛毛生えたカッツエたんなんてやだぁっぁぁぁ!!」

「筋肉ムキムキのカッツエたんなって嫌だっっぁぁぁぁぁ!!!!神様ぁぁぁ助けてくださぁぁぁぁい!!!」

「誰かぁぁぁぁ!!!!!!、今すぐオズに成長しない呪いをぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「もう皆!!い加減にしないと怒るよ!」


 オズの見た目的にプンプンとしか言えない可愛らしさに、レオン達はげんなりしていた、付き合っていられないので放っておいて出発することにしたが、オズもマッシュに引っ付いてきているのでやっぱり付いてくるようだ、オズの同行は流石に認めたらしいギルドの面々だったがノインはマッシュを呼び止め。


「アンタァ!!!、もしオズにキズを負わせたりレベルが上がってムキムキになってたりしたら、ウチラギルド全員で300と数人、街全体にいる約5000のファンを敵に回す事になるからなぁぁぁぁぁぁ!!!!覚悟しときいや筋肉ダルマァァァァァァァァァァァ!!!!!ひゃぁーーーひゃひゃひゃ!!!」


 見た目美人なのに物凄くに残念で恐怖と呪いに満ちたノインの捨てゼリフにマッシュはただ。


「ぜ・・・・善処します」


 としか言えないのでした・・・・。




《トマス》

エルダーテイル内のレイドなどの物語テキストや歴史背景を担当するGMの1人。歴史マニアでエルダーテイルに良く変な裏設定を盛り込むのが好き、他にもウイルスチェックやデータスキャンを担当している。


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