表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/43

~08~

いつもこの話に気長に付き合ってくれる方々に感謝を。

いつもありがとうございます!!

 中国サーバーでナナと別れ、一路欧州サーバーを目指して旅を続けるレオン達一向、年明け間もない気温は綺麗な白い雪で樹々を装飾し、幻想的な白い世界を産み出していた。積もったばかりの雪に足跡のを付けながらレオン達が次のサーバータウンを目指して歩いていると。


「ん、狼か」

「結構近いね、この辺は非戦闘エリアじゃなかったっけ?」

「足が雪に取られてマトモに戦えねぇぞ、どうすんだ?」


 ロベルトが雪を踏み慣らしながら戦闘準備と周囲の警戒をおこなっていると、タカミヤが開いていたコマンドウィンドウを閉じて戦闘の危険性は無いことを告げる、自身のサーチスキルで周囲の状況を調べたらしいタカミヤが言うには、澄んだ空気が遠くの音を響かせやすくしているらしい。その現象に思い至ったロベルトも手を打ち合わせて納得していた。


「モンスターじゃないから普通の山犬の類いでしょうね」

「まあ、いざとなれば伊織に魔法で雪を溶かしてもらえばいい」

「ん、任せて」

「あ、そういやそうくぅおわぁ!?」


 魔法で雪を溶かすアイデアに感心していたロベルトは突如ころび、雪の中に盛大にダイブした、レオンはロベルトに手を貸して起き上がるのを手伝った。


「何をしてるのよ」

「何かよくわかんねぇが、何かに躓いたのは確かなんだ」

「ん?、待って、キャラクター反応があるわ」


 サーチスキルを使ったタカミヤの言葉にロベルトは転けた辺りの雪を掻き分けて行く、やがて硬い感触に行き着き、それを思い切り引き上げた、雪の中から出てきたのは鎧を着た男性で、その男性を見た瞬間レオンとタカミヤは言い表せない表情となっていた。怪訝に思ったロベルトが引っ張る出したそれを見せながら疑問を投げ掛けた。


「これが誰か知ってんのか?」

「知ってるも何も」

「公式サイトにも載ってる有名な英雄よ」

「『聖王騎士』ペンドラゴン」

「「!?!?」」


 伊織とロベルトも名前だけなら嫌と言うほど聞いた、エルダーテイルのサービス開始初期に産み出された英雄であり20周年を迎えた時でさえ現役バリバリの《原初の英雄》と呼ばれる存在である。そんな存在が雪に埋もれていたとなるとレオン達の反応も理解出来なくはない。とにかく介抱しようと近くの山小屋に向かい、暖炉に火をくべるとペンドラゴンをその近くに寝かせた、外は曇り再び雪が降り積もりはじめた頃、ペンドラゴンはようやく目を覚ました。


「う····」

「気が付いたみたいね」

「一時はどうなることかと思ったが・・・」


 レオン達がペンドラゴンが目を覚ました事に安堵した次の瞬間


  ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ~·····


 と盛大にお腹がなり、皆がその音のした方へ振り返った。


「腹····減った·····」


 これが英雄ペンドラゴンの最初のセリフであった······。



                ~2時間後~


 タカミヤが作りおきしておいた携帯食を全て食べ尽くしたペンドラゴンはご満悦な表情をしていた。


「いやぁ~♪、助かりました、ここ数日水しか飲んでいなかったもので」

「水だけって、貴方程の強い人ならモンスターくらい簡単に退治出来るでしょうに」

「いやいや、それは過大評価しすぎです、実際には金貨不足で行き倒れるようなちっぽけな存在ですよ、はっはっは♪」


 ペンドラゴンは本当にそう思っているらしく、嫌味な所なくそう言ってのけた。しかし実際、ステータス画面で覗いてみるとLv120である、謙遜し過ぎではないかと思い詳しく話を聞いてみることに、ペンドラゴンは大災害近辺からの出来事を静かに語り始めた。


「あれは、今ではもう去年の春頃になるでしょうか」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 天上の神からの啓示によりLv120へと成長したペンドラゴンは、英雄としてこれからも困った人を助ける為に精進していくことを誓った、しかし数日後、冒険者の間で《大災害》と呼ばれた事件の起きた日、彼は自分の存在が空っぽの空虚な存在であると気付き絶望にうちひしがれていた、しかしある時、彼は自分の存在に新しい意義を見つけた、冒険者達が混乱し戦闘に恐怖している今こそ、神に与えられた力をもって民の助けとなり、冒険者達に戦う勇気を示すという、英雄の矜持を持ってペンドラゴンはクエストをこなし、戦う日々が続けていた、しかし····、食事は味がなく飲み物も同様、雑魚モンスターもろくに出会わないのでクエストで貰った金貨は日に日に減って行く一方だった、味のない食事とは言え食べなければ飢えを凌げず、矜持や誇りよりも、生きることに精一杯な自分の情けなさに悔しさを覚えていたある日、その変化は訪れた。冒険者達が独自の調理法を広め、味のする料理が普及し始めたのだった、ペンドラゴンは味のする料理に歓喜した、世界にはこんなにも美味しい物があったのかと、それから数日で冒険者達はみるみる街を立て直し彼のいた街はみるみる活気を取り戻していった、ペンドラゴンも冒険者達が産み出した見たことのない料理の数々に魅了され食べ歩きをしていたある日、遂にペンドラゴンの財布の金貨が尽きてしまったのだった、クエストをこなそうにも活気を取り戻した冒険者達が解決して回っているので依頼はなく、雑魚モンスターも出くわさない彼には死活問題となってしまったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「こうして、強敵モンスターを探すあてのない旅を始めたはいいけど、お腹が減って動けなくなってしまった所に雪が降ってきて生き埋め寸前だったわけなんだ」

「「「「·················」」」」


 ペンドラゴンの話を聞き終えた一同は其々口を開くなり。


「甲斐性無し」

「計画性無し」

「考え無し」

「一門無し」

「ぐふぅ!!!」


 ペンドラゴンの精神に10000のダメージが入った、効果は抜群だ。


「だって、ゴブがでないんだよぅ\(∋□∈)ノシ」

「計画性無く金貨を使わなきゃ旅は出来たでしょうに、そうでなくても酒場で給仕の仕事をして金貨を貰えば問題無いのでは?」

「おお!?、その手があったかΣ(・ω・ )」


 若干残念な英雄ペンドラゴンに皆が生暖かい視線を送りつつ、雪が止むまで静かに時を過ごしたのだった。


                ~3時間後~


 雪は止んで空も晴れ青空が広がっていた、山小屋を綺麗に掃除し、タカミヤが召喚したロンバルディアに乗り、一路欧州サーバーのプレイヤータウンを目指して飛んで行く、一応ペンドラゴンも同行していた、帰ったら早速働き口を探しに行くのだそうだ。空を飛ぶこと1時間、レオン達の目当てだった欧州サーバーの中でも1、2を争うプレイヤータウン《聖都グランセル》へと到着した。タウンの門を潜った所でレオンの古い知り合いと遭遇し、自警団の詰所に来るように言われた一同は仕方なく自警団の詰所へ赴き扉をノックする。


「開いてるよ、入りたまえ」

「失礼する」


 入った先に居たのは同じく古い知り合いでオリヴァルトことオリヴァーが待っていた、オリヴァーは神妙な面持ちでレオン達に話を切り出す。


「早速で悪いがいきなり本題に入らせてもらうね」

「来た早々呼びつけたんだ、重大な要件何だろうな?」

「ある意味で重大だ、先ずは彼女に心当たりはあるかい?」


 そう言ってオリヴァーが退いた先ではテーブルのうえに山積みにされた料理の数々とその倍以上の空っぽの食器の山、そして·····。


「ふほ、ひあへあないふぁ(おお、ミヤではないか)」

「貴女、何してるのよ」

「彼女のせいで買い込んでおいた備蓄分が底を突いてしまってね、総額~~何だが」

「高っ!!!、貴女いくら食べたのよ····」

「このテーブルの上ので1/5だから」

「ひょうふぇんはのっひょふひはいふゅふぁふぇふぇほふふぁいは(訳:ぼうけんしゃのしょくじはいつたべてもウマイな)」

「だからって限度があるでしょうに」

「って言うかよくわかるな」


 オリヴァーに料理の代金を立て替えながら夜色の少女と会話していたタカミヤは呆れついでにオリヴァーにどうして彼女が詰所に居るのか聞いてみた。


「ん、街の門の所でお腹を空かせて行き倒れてたんだ、聞けばレオンやミヤっちと知り合いだったみたいだから面倒見てたんだけど」


 英雄は行き倒れるモノなのだろうかとペンドラゴンと夜色の少女を見比べるレオン達だった。


<キャラ紹介>

『聖王騎士』アルトリア・ペンドラゴン

【聖王剣コールブランド】を持つ英雄、実はエルダーテイル稼働初期に産み出された原初の英雄の1人であり最強の英雄の内の1人でもある、ノウアスフィアの開墾のアップデートでLv120へと成長したが、それが原因で雑魚モンスターが近づいて来なくなり金貨不足で行き倒れていた·····。

腹ペコ英雄その1


『聖霊天使』???(夜色の少女)、Lv120

エルダーテイル生誕20周年記念イベントで産み出され、ノウアスフィアの開墾で実体化した英雄の少女、英雄の中では古来種ではない珍しいタイプで、同じく20周年記念イベントで発表された新種族《天翼族》である。《天翼族》が解禁されているかどうか定かではない今現在では唯一の《天翼族》である。彼女の持つ【天晶剣アドナイ・メレク】は最大出力で使うとやたらとお腹が空くらしい。

腹ペコ英雄その2

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ