~04~
黒歴史のヤマト篇を、正直言って封印したい今日このごろ。
レオン達がダンジョンから急いで首都に戻ると、平原ゾーンで暗黒龍と数千の冒険者が戦っていた、しかし、不思議な事に暗黒龍のブレスを受けても冒険者達は神殿送りになる者はおらず、魔法でHPを回復し、ひたすら戦い続けている。
「変だな、あの龍の攻撃を受けても、神殿送りになる者がいないなんて」
「あのブレス、ダメージを人数で等分する効果なのかな?」
「分からん、む、龍が倒れるぞ」
暗黒龍は大地へと倒れ、緩やかな光を放ち、姿を消していく。レオン達はその光景に違和感を感じたが、ハッキリとどこがおかしいのか分からないので、気のせいかも知れないと思い直し、平原ゾーンへと急ぐ。
平原では暗黒龍がドロップした素材や武具を冒険者達が回収して回っている。どうやらあの暗黒龍は、ダンジョンの八竜の素材全てを落としたらしい。だが、ここでも少し違和感があった。しかし、違和感の正体が分からないので、言葉には出せないでいた、他の冒険者達の勝利の余韻を壊す必要もないと思い直し、レオン達は街に戻ることにした。
「取り敢えず、メシでも食うか」
「ナナはどうするの?」
「私は····宿を·····探します」
「それなら、ひとまずここでお別れね」
街の入り口でナナと別れ、レオン達は料亭に入り、食事をすることに。
「違和感があるのは事実なんだけど、それが分からないのよね」
「伊織もそうなのね」
「取り敢えずメシ食って、宿に戻ろう」
「妾も疲れたのじゃ~···」
「そうね、そうしましょう」
皆が食事していると、肩を落としたナナがフラフラとやってきた。
「どうした?」
「お部屋····とれませんでした·····どこも満室です」
「ミカドの成人の儀を見に来た人が多いものね、なんなら私達の部屋に泊まる?」
「いいんですか?」
「妾はよいぞ」
「ええ、私もいいです」
「俺も同室だが、それでもいいなら」
アナスタシアの提案に他の皆も同意してくれたので、ナナはペコペコtl頭を下げてお礼を言った。
~夜~
宿の屋上で月を眺めていたアナスタシアのもとにレオンがやってきた。何でもナナに襲われそうになり、慌てて逃げてきたらしい。
「何をしてるんですかあなた達は」
「断じて俺のせいではない!!、服脱いでベッドに入ってきたのはナナの方だぞ!?」
「外国の方は、情熱的よね~」
「笑い事じゃないんだが····」
レオンはアナスタシアから差し出された湯呑みを受け取り、中身を啜る。
「美味いなこれ」
「桃の薬湯だそうですよ」
「へぇ」
レオンは薬湯を啜りながら月を見上げた、昼間の事が気になっていたのだ。
「明日、平原に行ってみるか」
「なにか手掛かりが残っているといいんですが」
薬湯をのみ終えたレオンは湯呑みをアナスタシアに返し、部屋に戻る事にしたのだが。
「忘れていた」
レオンのベッドは絶賛ナナが占領中だったのだ。結局、レオンはアナスタシア同様に2つあるソファーの片方に寝ることにした。
翌朝、朝食を摂った皆は、平原ゾーンへとやってきた。昨日の違和感の正体を探る為である。それぞれ、平原を探し歩き。昨日の冒険者達が回収し忘れた素材などを広い集めたりした。昨日の暗黒龍は、《八竜の祠》に登場する全ての竜の素材をドロップした事から、冒険者達から『八典竜』と名付けられていた。
「手掛かり無し···か」
「そうね」
レオン達が集合場所で伊織達を待っていると、伊織達が慌てて戻ってくるのが見えた。
「昨日の違和感の正体が分かったの!!」
「本当か!!」
「あの龍は多分死んでない!!」
「妾達が探索したゾーンで、ワイルドボアに遭ったのじゃが、そやつは倒したらその場で弾けとんで消えたのじゃ!!」
「「それだ!!」」
伊織達に言われ、ようやくレオン達も違和感の正体に気づく。違和感の正体、それは消えかただ。普通モンスターは倒されたらシャボンのように弾けて消える。そしてアイテムや金貨をドロップするのだが。あの暗黒龍は光に包まれて消えた。そして、もうひとつの違和感にも気付いた。
「たしか、八竜以外の素材は···」
「ええ、落ちてなかったって話よ、それに金貨も」
「だとすると、奴はどこに····」
レオン達が暗黒龍の消え去った場所を考えていると、何処からか拍手が聞こえてきた。音の出所は一見すると冒険者のような人物のようだ、姿だけでは男か女かは分からないが。その人物は、座っていた岩から飛び降りると、ゆっくりとレオン達に近づいて来た、そして。
「思ったより早く気付かれちゃったね♪」
「「「「「!!!!!」」」」」
その人物の声を聞いた全員が武器を構える。その声は····、昨日ダンジョンで聞いた物と全く同じものだった。つまり···。
「昨日は挨拶してなかったよね、僕の名前は『ジェイド』、種族は古代龍で
【災厄の暴虐龍】って言うんだ♪、宜しくね♪」
「やはり、生きていたのか・・」
レオン達は、今の危機を乗り切るため必死に思考を巡らせ始める。だがジェイドは。
「いやだな~♪、今日は戦いに来たんじゃないよ♪」
「なら、なんだというんだ」
「君達に会いに来たのさ」
「悪い冗談ね」
「本当なのに。それより、昨日のパーティーは観てくれた?」
レオン達がなんの事だと言うと、昨日の平原での戦いだと言う。
「あの祠の竜の素材を盛大にばら蒔いたから冒険者の皆、喜んでたでしょ♪。集めた甲斐があったよね~」
「お前は、一体なんだ?。なぜお前は」
「なぜ、この世界が元はゲームだと知っているのか?。って言いたいんでしょ♪」
「「「「「!!!!」」」」」
「さあ?答えはよくわかないけど、何でか知ってるんだよね~♪」
「そう言う存在が居るらしいと、噂には聞いたが、貴様がそうなのか?」
「いいえ、少なくとも、その存在にこの『龍』は含まれてなかったはず・・・」
「別に細かい事は気にしなくていいじゃん?、あ、僕の姿はそっちの皇帝龍様がしてたのを真似してみたんだけど、どうかな?、似合ってる?」
ジェイドは人に化けた姿をクルクル回ってはレオン達に見せる。しかしレオン達は感想なんて言える状態ではなかった。
「お前が「ジェイドだよ♪」、あ~····。ジェイドが戦いん来たのではないなら、質問に答えて貰いたい」
「いいよ、答えれるものなら答えちゃう♪」
「まず、昨日の平原での戦いは、あれはなんだ?」
「ん~、皆イベントがなくてつまらなさそうだったから。盛り上げてあげようと思って。あ、ちゃんと手加減したよ?」
昨日の平原での戦いで、神殿送りになる冒険者が居なかったのは、ジェイドが手加減していたからのようだ。
「そして、何故俺らの前に出てきた?」
「ん?、だってそうしないとこの世界で遊べないじゃない」
「どういう意味だ?」
「そっちの【神の契約者】のお姉さんは、僕が言った事の意味に気付いてるみたいだよ♪」
「········」
レオン達がアナスタシアに振り返ると同時に、レオン達はジェイドの言った意味に気付いた。
「質の悪い冗談にしか聞こえないな」
「ひどいな~」
そう····。今のアナスタシアはイベント発生判定が起きないので、他の誰かについて行く以外にイベントを体験できないのだ。そして、ジェイドはこの世界で遊びたいと言っているのである。
「僕は確かにモンスターだけど、この世界の参加者なんだよ?。だったら僕にだってこの世界で遊ぶ権利があるはずじゃない?」
「それが質の悪い冗談だと言っている」
「むぅ~なんでさ~、冗談じゃあないのに~」
「冗談じゃないならもっと質が悪いな····」
「ま、今はいいや♪。それじゃまた今度、ゆっくりお話しようね♪」
そう言うとジェイドは翼を背中に生やし、どこかへ飛んで行ってしまった。レオン達は緊張が解け、皆揃って地面に座り込む。
「【典災】とは別に何か····か、まったく、相当に厄介みたいだな」
「ええ。まったく·····」
「俺らの旅はなんで何時もこう·····トラブルしか起きないんだ·····」
「言わないでよ、涙でてきちゃったじゃない」
「なんか、ヤマトに帰りたくなってきちゃった·····」
「あんなのに眼を付けられてしまったのじゃ、諦めるしかないじゃろうて」
「皆さんの····冒険は·······いつもスリリング····ですのね♪」
「喜ぶ所じゃないから、あ~·······普通に旅したい」
レオンの愚痴に、その場の全員が頷いて溜め息を付いたのだった。
さてさて、彼等のグダグダな旅はどうなっていくのやら。
続きはいつ載る事になるかわかりませんのであしからず。(dogeza!!)




