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Ex-Stage 04

天秤祭も数日後に迫り、街が熱気に包まれて行く中

直継は狩りのクエストで、あるゾーンへとやって来ていた。

鷲獅子もあるので余裕だと思っていたのだが

実は全然余裕じゃなくて焦っていた。

それでもレベル92の<守護戦士>である彼は、焦っていても冷静に対処し

少しづつだが魔物を片付けていき、余裕のうまれた直継は

三日月同盟にお土産でも採ろうと思ったのだが

そのせいで魔物のトレイン、全力疾走するはめになってしまった

空が少しづつ暗くなっていくのを見た直継は


「このままじゃ晩飯食いそびれる、全力本気祭だぜ!!」


そして狩りへともう一度向かうのだが、魔物が多く

思った以上に戦果が上がらなかった、しかし、思わぬ人物の参加で

直継は窮地を脱する事に成功した。


「まさか、あんな戦法を使うなんて思わなかったぜ」

「まあ、私達だけの亜流の戦法ですからね」

「何にせよ助かったぜシグムントさん、感謝感激お礼祭りだぜ」

「いえ、困っている人を救ってこその騎士ですから

 では、私は友人を待たせていますので」


馬で颯爽と走って行くシグムントを見送り、直継もアキバへと急いで戻る

何とか夕飯迄には間に合い、直継もホッとしていた

夜もふけ、シロエの仕事でも手伝うかとシロエの部屋へとやって来ると

部屋にはにゃん太も来ていて、シロエの仕事を手伝っていたようだ

直継はシロエの仕事を手伝いながら今日出会った知人の話をした。


「え!?、シグムントさんもアキバに居たの?」

「ああ、少し前にアキバ戻って来たって言ってた」

「随分ご無沙汰なお名前ですにゃ、いつか挨拶に伺うとしましょうかにゃ」

「<軌跡>の人達、元気にやってるんだ、良かった・・・」

「あのレイドで一緒に戦って以降、何かある旅にはいつも一緒だったもんな」

「にゃ~」


3人は妙な切っ掛けで出会った友人達との旅に想いを馳せる

彼ら<茶会>のメンバーが<軌跡>のメンバーとであったのは

もう何年も前の出来事。





              EX 04 ~追憶~



その日もシロエは彼女カナミの無茶振りで頭を悩ませていた

彼女は突然レギオンレイドに参加したいと言い出したのだ

シロエは無理だと彼女を諌めたが一向に聞いてくれない。


「無理でも無茶でもな~い~!!!」

「いやそもそも僕らじゃレギオンには参加は出来ないんだってば!」

「何でよ!、<D.D.D>は<神託の天塔>に参加して突破したじゃない!」


この出来事の数日前、<D.D.D>が海外遠征を行い、レギオンレイドを制覇した

彼らが参加した<神託の天塔>は日本人には突破出来ないというふれこみだったが

<D.D.D>はこれを突破して見せる事で、ヤマトと海外にその名を知らしめた

そして彼女が参加したいと駄々を捏ねるレイドは<冥府の断罪者>と言う

日本人には今度こそ制覇はさせないと、これまたはた迷惑な理由でヤマトへと

挑戦状とも言うべきイベント告知が大々的に送られてきたレイドである。

シロエはただただ頭が痛くてしょうがなかった


「シロ君だって初めての冒険は大好きでしょ?」

「嫌いじゃないけど、コレとは話が別!!」

「シロ君のイジワル!、腹黒!」


彼女はぷくぅっと頬を膨らませ可愛らしく拗ねるが、シロエも一歩も引かない


「そもそも、僕達<茶会>は24人で、レギオンレイドは96人も必要なんですよ!?」

「そっか、だから無理なのね」


彼女はポムと手を叩き、シロエの説得を受け入れてくれたように見えたのだが

彼女はシロエに人指し指を向けるとある事を言い出す。


「じゃあシロ君、人集めお願いね♪」

「はぁ!?」

「だって参加出来ないのは人数が居ないからで、居れば問題無いんでしょ?」

「いや、まあ・・って本気ですか!?」

「本気も本気よ~♪、私はレギオンに参加したい人、シロ君は人を集める人♪」


彼女の言葉にシロエは溜め息をつく、ここまで来てしまうと

彼女はもう、絶対に止まってはくれないのである。


「分かりました、でも・・集まらなくても責任は取れませんからね」

「さっすがシロ君、頼りにしてるね♪」

「まったくもぅ」


シロエはとりあえずメンバー達に事の経緯を説明し友人を誘ってもらうことにした

運がよければそれで集まるだろう、しかしシロエは


(どうか集まりませんように!)


と・・心の中では逆の事を考えていた、しかしシロエの願いは通じることなく

にゃん太が<ねこまんま>のメンバーを12人と友人を1人連れて来た

にゃん太が連れて来た友人は少女で、少女は頭を下げて挨拶をしてくれた


「初めまして私はサクラと言います、まだまだ駆け出しでレイド未経験ですが

 足を引っ張らないように精一杯頑張ります!」


そんな少女にシロエも釣られて頭を下げ、挨拶を返す


「いえ・・此方こそ、急な勧誘に応えて頂いて感謝してます」


お互いに挨拶を交わした後

少女はにゃん太の元へ行き、レイドの心得を習い始める


次に人を連れて来たのはソウジロウで、連れて来てくれた25人は全員女性だった

これにはシロエも呆れるしかできない


「なんでこう、ソウジロウはモテモテなんだ」

「聞きたいかいシロエ」「今からたっぷりとソウジの魅力を教えてあげる!」


思わぬ一言がナズナと詠に聞かれてしまい、余計な災いを呼んでしまったと

シロエはグッタリした、それから数時間に渡りソウジロウの魅力を延々と

語り尽くされたシロエは


(どうしよう・・・・ソウジロウは良いやつなのに

 なんかソウジロウの事が嫌いになりそうだ)


若干重症のシロエ、そんなシロエに直継が駆け寄り、集まった人数を教えてくれる

それによると後24人足りないとの事だった


(よし、今回は僕の読みの勝ちだ)


と、シロエが心の中で小さくガッツポーズをするが

次の瞬間、シロエはドン底に叩き落とされる


「シ~ロ~君♪、残りの24人は私が見つけて来たわよ♪、どんなもんよ~♪」

「・・・・・・・・・」


開いた口が塞がらないとはまさにこの事だとシロエは落胆する

どうやらシロエは彼女にこの先もずっと勝てないのかもしれない・・・と

諦めてしまいそうになっていた

とりあえず彼女カナミに、勧誘したメンバーと会わせてほしいと

案内を頼んだシロエは参加してくれた24人に会うと

彼女の天真爛漫には一生勝てないかもしれないと、恐怖を覚えてしまった

集まってくれた24人は<閃空の軌跡の彼方>と呼ばれる

プレイ歴皆勤賞の人がマスターを勤める、かなり名前の知れ渡ったギルドである


「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


思わずシロエはみっともない声を出してしまう

コレは流石にシロエの想定の外のさらに斜め上の出来事である


「ってかいいんですか!?、僕達みたいな無名の集団とレイドをするなんて!!」

「何を言う、今が無名でもこのレイドが終われば、その名は一気に躍進する」

「そりゃ、制覇できればそうかもしれませんが」

「皆も初めは無名なんだ、無名を恥じる必要が何処にある、胸を張れ!」


<軌跡>のギルドマスターにエールを贈られてしまえば、シロエも後には退けない

シロエはギルマスの青年と握手を交わし


「お互いに、全力を尽くしましょう」

「レオンハルトだ、レオンで構わない」

「はい、今回は宜しくお願いしますレオンさん」


人数が揃い、パーティーを割り振ったシロエはそこでまたもや想定外の事態に遭う

カズ彦の呼んだ友人の1人(施療神官)が急用でログアウトしてしまったのだ


「そんな!?、ココまで来てコレですか!?」

「え~つまんな~い」


彼女もお預けを喰らい文句を言いシロエのマントをグイグイと引っ張る

コレばっかりはシロエのせいではないので、自分を責めないで欲しいのだが

一方レオンは至って冷静で、さっきから誰かと連絡を交わしている


「ああ1人足りなくなってな、どうだ?、そうか!、じゃあ頼む」

「あの・・・」


シロエが恐る恐る声をかけるとレオンは笑顔で振り返り

さっきの相手からの朗報を教えてくれた


「組んでたパーティーが解散してしまって余っているソロがいるらしい

 傭兵としての参加でソッチに連れて行くから、少し待っててくれとな」

「他でもイキナリ解散とかあるんですね」

「なんせ96人だ、1人や2人ならいいが

 10人単位で予定が合わないのも珍しくないしな」


レオンと話ながら辺りを見回すと、それぞれパーティーを組んだ面々で

色々な話をしていた、パンツの話が聞こえるのは直継のいる辺りなのだろう

シロエはパンツ好きの友人に心の中で自重してほしいと念を送っておくことにした

届くかどうかは分からないが、いや・・・もし届いても聞いて貰えないだろうが


数分後、シロエとレオンの所へ黒い鎧に身を包んだ騎士がやってくる

おそらくは<守護戦士>だろう、そして黒いドレスローブを着た術士を

レオンに預けると、騎士はシロエ達に会釈し、帰っていってしまう。

レオンは術士の女性にパーティー編成の案内をして、宜しく頼むと挨拶していた


「これで準備は出来たな、行こうか」

「あの、さっきの人は?」

「どっちだ?」

「えっと、一応両方お願いします」

「騎士の方はミヤ、ウチのサブマスだが、訳あってレイドには参加出来なくてな」

「そうなんですか」

「術士の方は君と同じ<付与術士(エンチャンター)>だそうだ

 しまったな・・名前を聞くのを忘れてしまった」

「名前は後で聞けば問題ないのでは?、しかし・・・ソロで<付与術士>ですか」

「シロ君♪シロ君♪、早くっ♪早くっ♪」


はやる彼女にマントを引っ張られたシロエはレオンと戦術を確認する

パーティーメンバーは

シロエ、レオン、シグムント、インティクス、京子(ヒーラー担当)、そして彼女(カナミ)

<茶会>3<軌跡>3で割り振ってある、シグムントが<守護戦士>なので

直継はカズ彦達と組ませ、パーティーのバランス化を図ったのだ

直継は同じ<守護戦士>であり、経歴では先輩のシグムントの戦闘を

見たがっていて、メンバーから外されたときは少し落ち込んでいた


(後で僕が教えてあげれば問題ないかな?)


とシロエは考えていたが、戦闘が始まるとシロエは後悔する

他は友人同士で組んであるので問題ないのだが、シロエのいるパーティーは混成

特殊な亜流戦術を持つ<軌跡>のメンバーと上手く連携出来なかったのだ

しかも彼女がレオンとどちらが先にゴール(制覇)につくかで競争しはじめたのだ


こうなってしまってはシロエにはどうにも出来ない

ただでさえ96人もの人数のマナコントロールを行おうとしているのだ

マトモに連携の修正も出来ないまま問題を先伸ばしにしていく

だが、思った以上に戦局は混乱してはいなかった、それは

傭兵参加の<付与術士>がかなりのクラウドコントロールの使い手だったのだ

そのお陰でパーティーを外れることができた直継がシロエに合流してくれた

直継はレオン達の戦闘を見るやいなや


「なんだありゃ、滅茶苦茶・・・なのか?」

「さあ・・・?、レオンさん達は亜流みたいで独自に動くし

 彼女はインティクスを引き連れて張り合い始めちゃって

 もう・・・なにがなにやら」

「こりゃ、レイド失敗するな・・・参謀」

「そうだね・・・・はあっ~、だからレギオンは無理だって言ったのに」


落ち込んでいる参謀を慰める直継、そんな2人に気付いたインティクスは


「なにをしているんですか2人共!、私達<茶会>を知らしめる為に

 姫様に続きなさい!!」


インティクスにどやされ、2人は仕方ないと武器を構え戦場へと駆け出す







結果を言えば・・・・見事な迄にレイドは失敗に終わった


シロエは参加者の1人1人に丁寧に挨拶とお礼を言って周り

同じ<付与術士>の女性と話をし、彼女の事を「敬意が持てる」と称賛した


そして・・・・・


「なかなかやるじゃないか」

「当たり前よ、私の自慢の仲間達だもの♪」


どうやらレオンと彼女の間にライバル的な友情が芽生えたらしく

それからと言うもの、彼女が海外サーバー遠征を切り出す時は

レオンの入れ知恵であったり、そうじゃないときは海外の案内を頼んだりと

以降<軌跡>の面々とは色々と顔を合わせる機会が多かった。










しかし、シロエには気になる事があった


「結局あの時以降、サブマスの黒騎士の人には会ってないんだよね」

「そういやそうだな、レイドでもイベントでも姿を見せないもんな」

「その後<軌跡>の人達は各々ギルドを立ち上げたり、他のギルドに行ったり

 事実上は解散扱いみたいだしね」

「別のサーバーで初心者の育成に性をだしているとも聞いていますにゃ~」


シロエは湯呑みに入っている黒薔薇茶を飲みながら星を見た


「いつか、ゆっくり話を聞きたいね」

「だな」

「にゃぁ」



懐かしい話をしたせいか、その日のシロエは月を見たい気分になり


ただ・・・空を見上げ続けた・・・・・


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