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第1話

第1話《旅人、職を失い路頭に迷う》



シブヤの街の片隅


その日、彼は途方に暮れていた。


彼は拡張パック追加による依頼とアイテム要項を確認し

テストプレイヤーになって何度めかになるだろうか

いつものようにバグ調査テストをするためにログインしていた彼は…。


「公務員だった私が無職だなんて、笑えない冗談だ・・・」


異世界に迷い込んだ事は二の次らしい、彼は今の自身の現状でいの一番で無職である事が気になるらしい。


「この歳(28)になってリストラされた全国のお父さんの気持ちを味わうとは…」


彼はいま全国の大変なお父さんの気分に打ちひしがれていたが…

ピロリンという携帯の着信音にも似た音に顔を上げ自身のゲームステータスを開くと、そこには【ギルドに黒猫の大和急便が届きました】という

システムメッセージが表示されていた。


「ギルドシステムは健在なのか、よく見るとステータスもそのままだな。」


彼はフムと考え込むと色々思考を巡らしログアウトやGMコール等を様々な事を試したが効果が無い。


「効果なし…か」


次第に思考が冷静になり、徐々に落ち着きを取り戻していく


「まずはアキバに戻って店に届いた荷物を確認してみるか。」


そう行動を決定し、腰を上げた所でその行動は中断されてしまった。

念話がかかってきたのだ、念話の相手を確認すると


葛葉くずのは】と表示されている。


彼女は付き合いの古い友人でこのシブヤを統治するギルド

【陰陽術師連合《破軍》】という巫女たちの巫女による巫女のための巫女のギルドで野郎声の可愛い巫女、リアルに京都の巫女、ちゃんとした中身女性の巫女までいる、ある意味現実世界では警察に通報必須な怪しいギルドである


(まあ、禰宜もいるけどな)


通称【陰陽連《破軍》】

葛葉はそのギルドの筆頭巫女ギルマスであり彼女もエルダーテイル歴10年超えの歴戦プレイヤーである、どうやら彼女もこの事故に巻き込まれたらしい。


「はい、鷹宮ですが。」


ボタンを押して通話を開始した彼女の第一声はとても辛辣なものだった


「うっわ、オッサンやん」

「黙れ、一体何のようなんだ?、用がないなら私はアキバに戻りたいのだが。」

「あ、そうやったそうやった、あんな…今からギルドに来てくれへんか?」

「破軍に?」「そや、破軍に」

「わかった、少し待ってくれ」「まっとんで〜♪」


ひっきりなしに喋り続け会話を一段落させると

友人の明るい声を聞き落ち着きを完全に取り戻した彼は彼女の言う用事を聞くために彼女のギルドに向かって歩き始めた。

シブヤの街を歩いて数分


ギルド【陰陽連《破軍》】

ギルドの扉を開けるとあちらこちらからキモイ唸り声がひしめいていた


「警察に通報したほうがいいんじゃないか?」


思わず漏れたその声に、入口付近に立っていた狐耳の神祇官でありギルドマスターの葛葉だった。


「それはカンベンしたってや、それに自分だって逮捕対象やで?。」

「何故?。」


彼は首を捻った、別に捕まるような事などしてはいないのだから。


「そないな美人はんやのに、声オッサンなんやもん」

「美人?、誰が?、お前か?」「ちゃうちゃう」


葛葉はそう言うと手鏡を取り出し彼へと向けるとその鏡を覗きこみ

彼はしかめっ面になる。


「うわぁ、アバターのまんまなんだな、現実世界の欠片もみえない。」

「そうやなぁ、なんでやろう?、それはそれとしてしかめっ面はアカン、

 美人さんなやから」

「心当たりはあるな…」

「ホンマなん?」


彼には確かに心当たりがあった、テストプレイヤーへとなる際に

自身のアバターを一新しキャラデザを見せてもらったことがあったのだ

今の自身の姿はそのデザイン通りなのである。


「普通の設定アバターと違って私のアバターはオリジナルメイドだから、

 そういったものが反映されないんだろう」

「あぁ〜、そういやそやったな」

「そう言う桐葉きりはは耳と尻尾が付いてる以外は変わらないな」

「ありがとな♪」


お互い住んでる場所は遠いが本名を知っている友人だし

オフ会であったことだって何度もある。

この道10年来の友人なのだから当然といえば当然であるが。


「外観再決定ポーション飲むか?」

「他の奴に飲ませろよ、あそこにのたまっている明らかに中身キモオタな奴らに」

「巫女になれて喜んでんねん、放うっといてやるのも優しさや…」


明後日の方向を見ながらそんなこと言われても説得力はないのだが

面倒でもあったし信じておくことにした。

そしてポーションを受け取り飲んでみたのだが


「何も変わらないな(*女声*)」

「いやぁ〜〜〜〜ん。」


葛葉のはクネクネと体をクネらせハートを大量に巻き始めた

葛葉の行動の意味が分からず首をかしげていると


「カワイイやん、イイやんイイやん、ウンウン美人はんはそうじゃなきゃアカンな」

「だから何が…」

「声、女の子になってるで♪」

「マジデ?」「マジで♪」

「本気で?」「本気で♪」

「MAJIDE?」「MAJIDE♪」

「そういやこのアバター……専用キャラボイス付いてた……」

「おかげで助かったやん♪」

「ね〜よ!、エルダーテイル15年やってきて一番の悲劇だよ!!」


しかし葛葉はまーまーと肩を叩くと


「いままでバグ体験しかしてこなかったんやから、これもゲットやん♪」


しかし反抗する気も失せてしまいただひたすら俯く。


「ほんで本題なんやけどな♪」

「今更!!!」


ツッコミをスルーし葛葉は話を続ける。


「あんな、…妹を…、ウチの妹を預かって欲しいねん。」

「は?、え?、伊織ちゃんを?」

「うん、そうやねん、伊織〜〜」


姉に呼ばれ1人の少女が静かに近づいてきた


この出会いが旅人と少女の妙な物語の始まりとなるのだった。



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