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追放された少年  作者: 誰か
回想:帰還編
92/150

~エピローグ~

『道化師と世界の話』


「時間軸違うから、どの時代に跳んだかな…。原始時代とかじゃなきゃいいけど…」


「さてさて、この世界の最低人数二人を割っちゃったけど、どうする気だい? ――って、聞くまでもないか。連れてくるだけ。また新しい人間をね。これから少しして、或いは今、まるで偶然のように術式を出現させる。後は人間に任せておけば、勝手に起動してくれるからね。今だと召喚を研究してるのは、『偽りの王家』かな。まーたあそこになるのか。十年ちょっと前の君の試みが失敗したのもあそこだったけ?」


「あ、やっぱり? 図星だった? 後千年は、最低二人最高二人だからね。一度に世界に居られるのは。その人数に意味があるのかないのか、そもそもそのルールは誰が決めたのか、僕はしらないけどね。少なくとも一枠は僕で埋まってる。そしてあの時は彼女がいたから、新たに人を呼べなくて君はイライラしてた。だから、試した。死んだ別世界の人間を呼んだらそのルールに引っかかるかどうかを」


「結果は、まあ、アレだ。成功はした。けど、異世界から連れてきた人間に与えられる力を得られなかった。ルール上あの子は、この世界で生まれた人間として認知されたんだろう」


「君は少なくとも神じゃない。全知全能でもなんでもない。戦争とか、戦乱とか、君はそういったものが大好きな何かだ。あえて名づけるなら『ナイアーラトテップ』かな。どこぞの小説家たちが創りだした怪物――狂気と混乱を生み出すために暗躍するもの」


「君は大きな戦争を起こす為に、大きな力を持った僕たちを呼ぶ。そして、無意識に囁き唆す。殺せって。全部全部殺せって。まあ、僕には聞こえるから効かないけど」


「僕たちはピエロだ。君を楽しませるためだけに、ここに呼ばれた哀れなピエロ。そして君は団長兼観客」


「一人のピエロは地獄のサーカスから脱出した。怒った団長はまた新たなピエロを連れてくる」


「さようなら朱美。そして――ようこそ、名も知らない誰か。このクソみたいな世界に」




『灰色の地面』


 気づくと、彼女は立っていた。空は陽が高く昇り、容赦なく日光が降り注ぐ。照りつけられた地面は通常の地面の何倍も熱く、空間が歪んだかのように陽炎が点在していた。

 周囲を見渡す。人間が歩いていた。緑の光が見えた。空に届きそうな建物が見えた。白いワンピースの少女がいた。半袖半ズボンの少年がいた。携帯を手に持った男性がいた。

 ここがどこだか、ようやく彼女は知った。そして今、自分がどうなるかも。

 道行く人々は、触らぬ神に祟りなしとでもいうかのように、突如として現れた彼女を気に止めない。次々と、横を、前を、後ろを、通り過ぎていく。

 彼女は四方から伸びる白線の中心に立っていた。もう、痛みはない。

 溶けていく。自分が。空気の中に。指先から肉が消えていく。風の中に肉が流れていく。

 倒れる。その直前、彼女が見たのは少年の顔。幼い少年の何ともいえない、恍惚とした顔だった。

 それを最後に、彼女は、灰色の地面に倒れこんだ。

 



『化物』


 盗賊の男は逃げていた。肺が悲鳴を上げているが、そんなことで立ち止まっている場合ではなかった。逃げなければ死ぬ。息がどれほど苦しくても逃げるしかない。

 仲間は死んだ。一瞬で。目にも留まらぬ速さとはああいうことを言うのだろう。まさか、瞬きしている間に死ぬとは、考えてもいなかった。血飛沫が顔にかかり、ようやく目の前の惨状を理解出来た。

 残った男は、自分でもどの道を通っているのか分からないほどに必死に逃げた。

 が、目の前にそれは突如として現れた。


「…化物…め…ぇえええええええ!!!」


 呻き声を上げ、無駄だと分かっていながら男は飛び掛った。

 しかし、相手が短く


「死ね」


そう言うと、既に男の命はこの世界から消え去っていた。


――化物? ああ、いいよそれで。人として何も守れないくらいなら、俺は化物でいい…





 

  

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