『勇者』
基本メンタルは皆弱いし、皆汚い
次でルーク戦終わりだ…多分
結局似たもの同士
俺は最低だ。
二百年振りにあったアイツとの会話で、あんな馬鹿な事言うんだから。いや、それ以前の問題か。
アイツが好きだった。だったというのも語弊があるか。好きだ。今でも。愛してるといってもいい。
だが、俺にそんな言葉を吐く資格はない。
そいつに嘘をついた。汚くて醜い嘘を。きっと、俺という人間自体が醜くて汚いんだ。
初めて会ったのはアイツがこっちに来たときだったか。それで、世話係を任されたのが始まりだ。
アイツの能力を知ったときは嫉妬に駆られた。神様ってやつを怨んだな。どうして俺じゃないのかと。なんでこんな奴が俺よりも強いんだと。神様死ね! と、声を大にして叫んでやったこともあったか。
もう既に醜い。神様は別にして、アイツには何の罪もないっていうのに。アイツは被害者なんだから。
今考えると、俺は死ぬべくして死んだんだ。
戦争が終わって、俺は『勇者』に祭り上げられた。同時に以前の『勇者』は用済みになった。何の役にも立ってなかったしな。俺にとってはアイツがいなきゃ、無属性なんてものに気づきもしなかったが。
浮かれてた俺に下された暗殺指令。
今でも思い出す。豪雨の夜。静寂に包まれたアイツの部屋。アイツは寝息を立てている。
そんなアイツに刃を突き立てる俺。その時の俺はどんな表情だったか、思い出せない。
結果は見事返り討ちに合い、王都が丸ごと消えたが。
無様だな。無様としか言いようがない。
アイツには国を優先したなんて格好付けて言ったが、本当にそうか? そこまでの忠誠心が俺にあったか?
違うだろ? 俺は怖かっただけなんだ。
暗く深い穴から、一度陽のあたる地上に出てしまった俺は、その光を失うことを恐れただけなんだろ?
もう二度と戻りたくないと。
だから、あの命令を断らなかった。断ってアイツと逃げる選択肢を選ばなかった。
こんな人間は死んで然るべきだ。『勇者』? 笑わせるな。『臆病者』の間違いだろ?
俺は怨む。自分の心の弱さを。
俺は懺悔しよう。アイツを裏切ったことを。
もう一度やり直せれば、アイツと逃げる手を選ぼう。そんな機会は永遠に訪れないけれど。
ああ、自分勝手。ほんっと俺って最低だ。




