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追放された少年  作者: 誰か
回想:帰還編
88/150

『勇者』

基本メンタルは皆弱いし、皆汚い

次でルーク戦終わりだ…多分

結局似たもの同士

 俺は最低だ。

 二百年振りにあったアイツとの会話で、あんな馬鹿な事言うんだから。いや、それ以前の問題か。

 アイツが好きだった。だったというのも語弊があるか。好きだ。今でも。愛してるといってもいい。

 だが、俺にそんな言葉を吐く資格はない。

 そいつに嘘をついた。汚くて醜い嘘を。きっと、俺という人間自体が醜くて汚いんだ。

 初めて会ったのはアイツがこっちに来たときだったか。それで、世話係を任されたのが始まりだ。

 アイツの能力を知ったときは嫉妬に駆られた。神様ってやつを怨んだな。どうして俺じゃないのかと。なんでこんな奴が俺よりも強いんだと。神様死ね! と、声を大にして叫んでやったこともあったか。

 もう既に醜い。神様は別にして、アイツには何の罪もないっていうのに。アイツは被害者なんだから。

 今考えると、俺は死ぬべくして死んだんだ。

 戦争が終わって、俺は『勇者』に祭り上げられた。同時に以前の『勇者』は用済みになった。何の役にも立ってなかったしな。俺にとってはアイツがいなきゃ、無属性なんてものに気づきもしなかったが。

 浮かれてた俺に下された暗殺指令。

 今でも思い出す。豪雨の夜。静寂に包まれたアイツの部屋。アイツは寝息を立てている。

 そんなアイツに刃を突き立てる俺。その時の俺はどんな表情だったか、思い出せない。

 結果は見事返り討ちに合い、王都が丸ごと消えたが。

 無様だな。無様としか言いようがない。

 アイツには国を優先したなんて格好付けて言ったが、本当にそうか? そこまでの忠誠心が俺にあったか?

 違うだろ? 俺は怖かっただけなんだ。

 暗く深い穴から、一度陽のあたる地上に出てしまった俺は、その光を失うことを恐れただけなんだろ?

 もう二度と戻りたくないと。

 だから、あの命令を断らなかった。断ってアイツと逃げる選択肢を選ばなかった。

 こんな人間は死んで然るべきだ。『勇者』? 笑わせるな。『臆病者』の間違いだろ?

 俺は怨む。自分の心の弱さを。

 俺は懺悔しよう。アイツを裏切ったことを。

 もう一度やり直せれば、アイツと逃げる手を選ぼう。そんな機会は永遠に訪れないけれど。

 ああ、自分勝手。ほんっと俺って最低だ。

 

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