第五十七話
はい、名も無き村終わりませんでした
じっ、次回から本気出す
後は少年の昔話書いて、クロノとメアリーの接近書いて、祭り当日書いて、つなぎで日常っぽいの書いて終わり
あれ?結構かかんじゃね?
「よいしょっ…と…。」
メアリーはクロノをベッドへと、寝かせる。
ボスンと、柔らかいベッドが一時的に凹み、小さなクレーターを作り出す。
「ああ、ごめんね…。」
疲れきった表情のクロノの声は、やはりどこか元気がないように聞こえる。
クロノに毛布をかけたメアリー自身は椅子を持ってきて、ベッドの前に置き自分でそこに腰を下ろす。
そしてメアリーは疑問に思っていたことを口にした。
「なにやってたんですか?そんな、泥塗れになって…。」
「秘密ってことで、一つ頼むよ。どうせ、すぐばれるだろうけどね。」
はぐらかすクロノ。どうやら喋る気はないらしい。
追及しようかとも考えたが、今はそんな場合ではない。
「む~。まあ、それならそれでいいですけど。」
不服そうな顔をするメアリーを見て、クロノは薄く笑う。
「それにしても、昨日とは丸っきり逆ですよね。昨日は私が寝てる側だったのに。」
「そうだね。はぁー、こんなんでダウンとか自分が情けないよ。」
「いいんですよ。今日は休めってことなんです。ただでさえ、昨日は大変だったでしょうし…。」
「大変……?」
頭に疑問符が浮かぶ。クロノからすれば、そこまで重労働だったわけではない。
実際のところ、今動けないのは八割方自分のせいだ。
レベル5など使わなくてもレベル4いや、レベル3で十分に昨日のやつらなど片付けられた。
そうすれば、今日こんなに身体を痛めることはなかったのだ。ちょっと調子に乗って、レベル5を使った自分のミスである。
気をつけよう、と自分を戒める。
そんなクロノの考えにメアリーは気づかない。
「そういえば、クロノさんはどうして冒険者に?」
「うーん、一番やりやすかったからかな。俺はかーさんに、世界を見て来いっていわれてね。」
「世界…ですか…。何かデカイですね…。」
「まあ、かーさんはそういう人だから。もう2年近く会ってないかな。どこにいるのかも分からない。あっちも、色々回ってるんだろうけど。」
「いいなぁ…。私なんて他の村になんて殆ど行ったことないですから、そうやって世界を回るっていうのに憧れます。」
羨望の眼差しを向けるメアリーの言葉をクロノはバッサリと切り捨てる。
「そんな、いいもんじゃないさ。当然リスクもある。安全なのに越したことはないよ。」
「おかあさんは大丈夫なんですか?」
「ははっ、心配なんてするだけ無駄さ。かーさんは俺よりも、誰よりも強い。世界最強を名乗るくらいだからね。」
クロノからすれば真面目に言っているつもりなのだが、メアリーには冗談と受け取られたのか、フフッと軽く笑うメアリー。
思えば、同年代とこうして長く話をするのはヘンリー以来だ。
こういう雰囲気も悪くない。
クロノはこの安楽な雰囲気にしばし浸ろうかと思っていた―――が、突然の来訪者の声によってその考えは打ち崩される。
「おーい、いねえのか?おーい。」
声が遠い。どこからだろうか?
クロノが考えるよりも早くメアリーは確信を持って立ち上がる。
「ちょっと、行ってきますね。」
途端に不機嫌そうな表情になったメアリーは、そそくさとクロノの部屋を後にした。
クロノの部屋を出たメアリーは表情のとおりイラついていた。
メアリーの方もあの空気に心地よさを感じており、それを崩されたのだ。
声を聞いた瞬間に、誰だかはすぐ分かった。
これが別の人間であればまだしも、今のアイツとはあまり話したくはない。
声がしたのは大きさからして入り口だろう。
メアリーが入り口へとたどり着くとそこには、予想を裏切らない顔があった。
「なんだ、いるじゃん。よう。」
「一体なんの用?トーリ?」
不機嫌さを隠そうともしないメアリー。
慣れているのかトーリは気にした様子はない。
「別に今日はお前に用ってわけじゃあない。」
「今日はじゃなくて、今日も用がないでしょう?用がないなら、帰ってもらいたいんだけど?」
「残念、そうしたいのはやまやまなんだが、今日は村長からの伝言があってな。上がらせて貰うぞ。」
「村長からの…?って、どこいくの!?」
メアリーを押しのけてずかずかと中に入っていくトーリ。
遅れないようにメアリーも後をついていく。
何度も来たこの家をトーリは迷わずに目的の場所へと進む。
しかし、いきなりある所で立ち止まった。後ろを歩いていたメアリーはそれに気づかず、トーリの背中に顔をぶつけた。
「いたっ…!なにいきなり…。」
トーリは止まったまま、どこかを見つめ動かない。
トーリの視線の先を見るとそこには、チェスの姿があった。
鬼ごっこか、かくれんぼでもしているのか、眼を両手で覆い数を数えている。
数え終わったチェスは両手を眼から離し立ち上がった。
そこで一瞬、トーリとチェスの目線は交錯する。
その間はほんのわずかなもので、すぐさまチェスはどこかへと消えていった。
トーリはチェスがいなくなった先を暫し見つめ、眼を鋭くしながらいつもは見られない真剣そうな表情を見せる。
「ねえ、何かあったの?」
「いや…なんでもねえよ。」
短くそう答えたトーリは、再び歩き出し、一つの部屋の前で立ち止まる。
そこはクロノの泊まっている部屋だった。
「どうせここだろ?昔っから、初めての客はここに案内するもんだからな。」
知り尽くしたこの宿屋の傾向。
メアリーの返答を待たずにトーリは無遠慮に扉を開けた。
そこにいたのは勿論クロノ。
ただ先ほどと違ってベッドに寝てはいない。
メアリーが座っていた椅子に座り、来訪者を待ち構えていた。おまけにフードまでつけて。
「お前が、クロノか?」
「…なにか、俺に用があるみたいだな…?」
「なーに、大した用事じゃないさ。村を救った冒険者様の顔が見たくなっただけだ。」
皮肉気にヘラリと笑うトーリ。
「それと、村長から伝言だ。出来れば三日後の祭りに参加してくださいだとよ。じゃーな。」
「……考えておこう…」
端的な会話を交わし、トーリは何をするわけでもなく部屋を出て行く。
予想していたよりもアッサリした会話にメアリーは安堵し、トーリに続いて部屋を出て行った。
部屋から出たところで、メアリーはトーリに尋ねた。
「ねえ、アンタに村長からの伝言って…どうなってるの?」
「さあな。しーらね。ジジイに聞けよ。」
腕を頭の後ろで組みながら、答えるトーリ。
納得していないメアリーを適当にあしらって、トーリは宿屋を出て行った。
メアリーはその後姿に違和感を覚える、と同時に落胆もしていた。
もしかしたら、盗賊が捕まったことで、彼も昔に戻ってくれるかもしれないという淡い期待をしていたのだ。
だが、あの様子ではまだ暫くかかるだろう。口では憎まれ口を叩きながらも、本気で心配はしているのだ。
小さく溜め息を吐く。
そんなメアリーの心とは裏腹に、宿屋内には無邪気な少年たちの声が響き渡る。
「みーつけた!」
「あー!みつかちゃった!さっき、目の前を通り過ぎたとおもったのにー!後ろからなんて卑怯だよ!」
「卑怯じゃないよ!鬼っていうのは、どこにいるかわかんないものなんだから!」




