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追放された少年  作者: 誰か
回想:名も無き村編
64/150

第五十六話

短め

次回一気に名も無き村編終わらせたいなあ

あくまで願望

少年二人黒杉

 ザクッ、ザクッ、という音が地面から聞こえる。

 その音は地面を擦るような足音――などではない。

 

「ふう~、これくらいでいいかな。」


 額に滴る汗を右手で拭う。拭った手にはべったりと土がついていた。

 左手には濁ったような色の土に塗れた鍬を握っている。

 鍬を一旦離し、腰に手を当て、自分が作り上げたそれを満足げに眺める。

 疲れながらも不思議な達成感があった。


「まだ色々やることはあるけど、とりあえずこんなもんか。」


 目の前に広がるのは、少し黒ずんだ土で出来た畑。昨日も一昨日もみた畑だ。

 初日に見たときに比べれば、大分畑らしくなった。土自体も変わり、赤茶けた土から黒ずんだ土へ。

 手を当てている腰が、小さく悲鳴を上げる。痛い。

 それもそのはずで、本来レベル5を使った次の日は休養をとらなければならないのだ。

 身体の限界を超えた無理な駆動で、全身の筋肉が悲鳴を上げる。

 だけれども、今日は朝から手近な(といっても普通に歩いて10時間以上はかかる)ところから、土を何往復もして運んできたのだ。疲れるのも無理からぬことであろう。

 午前中から始めて、今は陽が丁度真上に来ており、疲れたクロノの身体を容赦なく照らす。


 フラフラとよろめきながら、畑に背を向けて宿屋へと戻ると、廊下でメアリーと出くわした。

 びっくりしたようにクロノを見て、心配そうな声をかける。


「だっ、大丈夫ですか!?そんな、泥まみれになって…。」


「大丈夫大丈夫…。ちょっと、用があってね…。」


「だいじょばないですよ!眼とか、死んでますって!」


「死んでるって…、酷いなぁ…。」


「あっ、スイマセン…」


「冗談だよ、じょーだん。じゃあね。」


 後ろ手に手を振って、部屋へと戻ろうとするが、どうしてもよろめいてしまう。


「やっぱり、大丈夫じゃないでしょう!ちょっと待ってください。部屋に戻るんですよね?私が連れてきます。」


「いいって…。」


「よくない!!」


「………」


 凄まじい気迫で凄まれたクロノは、それ以上なにも言うことは出来ない。

 大の男が少女に肩を貸されながら、部屋に戻るという、なんとも情けない自分に溜め息を吐くクロノだった。

 



 一方その頃、ドラは宿屋内をはしゃぎまわっていた。

 勿論、演技の一環ではあるが、それが主ではない。

 ドラの本来の目的は別にある。


(あやつか…ちょっと探ってみるとしようかの。)


 目的の人物を見つけたドラはトテトテと近づき、声をかけた。


「ねえねえ。」


 声をかけられたチェスはビクッと身体を震わせながら、頭は冷静に回転を始める。


(コイツは……アイツの弟だったか…)


「なっ、なに?」


(反応が遅いのう…何か考えていたのか。それとも、単純に遅いだけか…)


「何やってるの?」


(年は同じくらいか?とりあえずは、予定どおり演じておくか…)


「いっ、今は掃除だよ。」


「手伝おうか?」


「いっ、いいよ。これが僕の仕事だから。」


(受け答えに不自然さはない…かの?喋り方はちょっと妙じゃが。)


 ここでドラは軽く仕掛ける。


「終わったら遊ばない?僕暇なんだ~。」


(これは…使えるか…?)


 丁度いい。チェスはそう思った。

 あの男の弟であれば、仲良くしておいて悪いことはない。弱みとして使える。

 殺すとき大いに役に立つだろう。

 

(どうでるかの?はてさて。)


 今、チェスを殺すのは簡単だ。

 だが、ドラはあえてそれをしない。

 チェスにはクロノを追い詰めて貰わねばならない。殺さない程度に。

 そして自分はそれを見張らねばならない。クロノが殺されないように。

 朝のように毒物を入れられては、今のクロノではどうしようもないからだ。


 二人の利害は一致した。表面上仲良くする、という点で。

 ドラが最後に喋ってから、一秒にも満たない思考でそこまで考えた二人は、再び演技を始める。


「うっ、うん!もう少しで終わるから待っててね。」


「僕も手伝うよ。二人でやった方が早いでしょ?」


「あっ、ありがとう…キミはいい人だね。」


「僕はドラっていうんだ。よろしくね。キミは?」


「僕はチェスだよ。僕こそよろしくね。」


 その会話は傍から見れば微笑ましいものであったが、純粋さの欠片もないほどに中身は真っ黒なものだ。

 二人の少年は互いに演じあう。

 心の中に、見た目からは想像も出来ないほど黒い感情を抱えながら。


(せいぜい利用させてもらうとしよう。アイツを殺すのに使えんなら、何だって使ってやるさ。役に立ってくれよ?クソガキ)


(好きなように動けばいい。だが、慎重に動けよ人間。あまり調子に乗ると、貴様の命の灯火は瞬く間に消え去るぞ?)




 

 

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