第四十三話
短めです
忙しいので暫く短め投稿になりそう
(あれっ?いつの間に近づかれたんだ?)
クロノは突如として掛けられた声に、顔に出すことはないが内心驚いていた。
そんな主の様子を見てドラは小さく溜め息を吐く。
(阿呆が……)
土塗れになった手を晒し、声のした方へと顔を向ける。
そこにいたのは栗色の短い髪をした同い年くらいの少女だった。
少女は懐疑的な視線でクロノを見つめている。
クロノは自分の格好と状況を客観的に考える。
全身黒で覆った怪しさ全開な服装。勝手に人の家の庭に侵入。この近辺には盗賊が住みついている。
(……うん……盗賊と間違われてもしょうがないね…)
少女の懐疑的な視線の理由をそう推測したクロノはどうしようか考えを張り巡らせるのだった。
一方のメアリーはというと、若干盗賊ではないかと疑ってはいたが、その可能性は低いだろうと考えていた。
理由としては後ろにいる緑髪の少年の存在が大きい。
この村の子供ではないし、黒い人間と一緒に来たと考えるべきだろう。盗賊が幼い子供を連れて野菜泥棒なんてするわけはない。
つまるところメアリーから見て、今のところこの人間は野菜泥棒をしに来た旅人という認識になっていた。
(まだ食べられるほど野菜なんて育ってないんだけどなあ……)
畑からは葉が顔を出してはいるが、とても食べられる状態ではない。
(そんな若葉まで食べないといけないほど生活に困ってるのかな……だとしたら、ちょっとかわいそうかも…)
どこか勘違いをしながら、状況の打開策を探る二人。
二人の間には気まずい沈黙が流れる。
「こんにちは!お姉さん」
沈黙を破ったのはクロノでもメアリーでもなく、ドラだった。
元気な声で子供らしさを演出しながら話しかける。
一方声をかけられたメアリーは一瞬ビクッとしたが、すぐに平静を取り戻しドラへと顔を向ける。
緑色というよりも、更に綺麗なエメラルドグリーンと言った方がいい髪をしたドラ。
その髪に少し見惚れてしまう。
(綺麗………)
メアリーの様子に気づかずにドラは言葉を続ける。
「ここお姉さんの家の庭なの?」
「え、ええ…」
「ごめんね。お兄ちゃんが勝手に入っちゃって。」
ドラはさらりと笑顔で元凶を指さす。
元凶はというと指さされたことに動揺を見せるが、ドラは何も間違ったことは言っていない。
(えっ、俺のせい?………俺のせいか…)
どう考えても自分が悪いことに気づきメアリーには見えないように唇を噛んだ。
ドラはそんなクロノを見て満足したのか、フンと鼻を鳴らして再び少年を演じる。
「さっき、そこの宿屋に泊まろうとしたんだけど誰もいなかったんだ。お姉ちゃんどこにいるか知らない?」
「そこの宿?えっ、お客さん!?」
信じられないといった様子で驚くメアリー。
突然の来訪者に慌てて頭を下げる。
「あっ、すいません……私が宿屋の受付です……」
俯きながら申し訳なさそうに頭を下げ謝る。
多少の罵倒も覚悟していたが、そんな言葉は飛んでこなかった。
代わりに飛んできたのは言葉――ではなく矢。
突如として飛んできたその矢はドラの背後から、ドラの頭めがけて一直線に襲い来る。
危ないと叫ぼうとしたけれど、声を出しても間に合わない速さで迫る矢。
もう突き刺さろうかという近さに来たところで、メアリーは眼を覆った。
その先の光景を見たくなくて。人の死から眼を背けた。
ただ、彼女の考えたとおりに物語は進まない。
悲鳴も、突き刺さった音も、聞こえてはこなかった。
不思議に思いおそるおそる眼を開けると、少年の姿は視界から消えており、代わりに矢は自分の眼前へと迫っていた。
今度は意図してではなく反射的に眼を閉じた。自分の終わりを本能で察知しながら。
しかし、またしても彼女の考えたとおりの光景になることはなかった。
パキン
と、何かが折れた音が聞こえて
「…大丈夫か?」
続けざまにそんな声が耳に響いた。




