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追放された少年  作者: 誰か
戦争編
48/150

第四十話

書いてみたら次が回想になりませんでした

クロノの兄の名前初登場




領主の館


「――にゃーるほどねー。どおりでクリョニョンがあんな早くに出てったわけだー」


「まっ、そういうこっちゃ。うちらとしても、あっちで止めて貰いたいんやけどそう簡単にはいかんやろうしな。」


「そうですねえ……あっちから来た方々は、魔力が並外れてますからね。私たちも人の事は言えませんが。」


顎に手を当てながら、柔和な笑みを浮かべるユウ。


「はっははは、せやなぁ」


それにつられるようにメイも軽く笑い声を上げた。

ユイはまじまじと、ユウの顔を見つめている。


「うーん、やっぱりユウ君ってイケメンだねー。結婚しない?」


「丁重にお断りさせていただきますよ。ユイさん。」


話は道筋を誤ったかのように脱線していく。


「つれにゃーいなー」


「貴女にはもっと良い男性が見つかりますよ、きっと。私は家庭を作る気がありませんからね。」


「そう考えるとウッドブックのじーさんは上手く抜けたよねー。実子を作らずに養子とはね。」


「領主のウチとしては抜けてもらうと困るんやけどなぁ。今となっては三人だけやろ?」


小さく溜め息をついてわざとらしく落胆したように見せるメイ。


「ですね。千年前に比べたら大分減りました。」


「遺伝しない可能性もあるわけだから減るのもしょーがないよ。」


「…ウチとしては遺伝しない方がうれしかったんやけどな…」


ぼそりとメイが呟いた。

それは三人の本心でもある。

しかし、普段それを表に出すことはない。

無駄だと分かっているからだ。

三人の空気が少し沈む。

自分のせいで、空気が沈んでしまったと思ったメイはすかさず建て直しを図る。


「ま、まあええわ。ほな、そういうことで準備はしといてや~」


「分かりました。では失礼します。」


「じゃーねーー」


丁寧なお辞儀をして部屋を出て行くユウと、背をむけたまま手を振って出て行くユイ。

対照的な二人を見送るメイ。

客のいなくなった室内は静まり返る。

二人を完全に見送った後、メイは巻かれた紙を取り出して目の前の広げた。

その紙に記されているのは家系図。

普通の人間には読めない言語で記されている。

指でその紙をゆっくりなぞっていく。

そして、ある文字のところで指を止めた。

書かれているのは「佐藤 芽衣」という文字。

じっくりと眺め、憂鬱な溜め息を吐く。

その文字を、人差し指に力を溜め思いっきり弾いた。

記された自分の名前を恨めしく思いながら。





館を出た帰り道、ユウとユイの二人は同じ方向へと歩いていた。


「でー、実際どうなのよユウ君はー?」


「どうと言いますと?」


「またまたー、とぼけちゃってえ、こんな家に生まれたこと後悔してるかなってこと」


丸で世間話かのように尋ねるユイ。

対するユウはさして気に留めた様子もなく淡々と告げる。


「今更そんな事後悔するような年齢じゃないですよ。既に諦めました。そういう貴女はどうなんです?」


「それこそ、答えるまでもないかなー、分かってるでしょ?」


「…………」


「でも、メイちゃんはまだ諦めてないみたいだね。若いっていいね。」


「永遠の12歳じゃなかったんですか?」


「むっ、そこでそういうこと言うのは野暮ってやつだよう?」


「これは失礼。」


「ま、何にせよ、諦めた私たちとは違う選択をして欲しいなってことさ。」


どこか遠くを見つめながら、皮肉気にユイが呟く。


「この国は上手く維持出来てるようで、その実無理が出てきてる。現に今ですら人手が足りない。最初は大勢いたから良かったんだろうけど、近い将来にも今回みたいなことが起きたら、その時には存続できないだろうね。」


「そうですね。力は必ず受け継ぐわけじゃないですし、いずれ、私たちのような力を持った人間もいなくなります。」


「その原因は子孫を残そうとしない私たちが加速させているわけだけども、結局の所、遅いか早いかの違いでしかない。国を一から作り直さないと、いつか瓦解してしまう。そろそろ本格的に軍隊でも作らないといけないかもね。」


「「本家」筋の方がそれを許してはくれないでしょうけどね。あちらは規律やら伝統が大好きですから。」


「そこら辺は未来ある若者に期待だよう。」


「年寄りくさいですよ、言い回しが。」


「ユウ君には言われたくないなー、同い年でしょ私たち。」


「はて?私は18ですが?お嬢さんはまだ12でしょう?」


「こういう時だけ、そういうこと言って誤魔化すの昔から変わってないね。」


「ホントですね、昔から何も変わらない……何もね……」











ウッドブック工房地下


「リルこないッスねえ…」


鎧や剣などが壁際に立てかけられた地下。

下は土の地面になっており、外と変わらない硬さだ。

店のカウンター奥から入れるこの場所は、主に武器の試し斬りなどに使われる。


「今日は朝からこれの調整って言ったはずなんスけど…」


カイの手元には不思議な形をした小型の鉄の塊。

先が少し長く伸びており、真ん中には丸い穴がぽっかりと空いている。

これはカイの製作したものだが、発想自体は工房にあった設計図からだ。

どうやら初代が書いたものらしく、所々字が掠れていて長らく放置していたが、足りない部分は自分で試行錯誤して作り上げたのだ。


「先に始めとくッスかね」


リルが来るのを諦め、自分で調整を始めようと構えた。

両手でしっかりと握り、壁めがけ引き金を引く。

パァンと、乾いた音と共に手を鋭い衝撃が襲った。

衝撃で眼を閉じてしまう。

地下には若干の煙が立ち込め、鼻腔をくすぐる独特の臭いが充満する。

とてもじゃないが、良い臭いとはいえない。

眼を開けて放った方向を見ると壁に穴が空いてはいたが、カイにとってはやや不満だった。

狙った場所からは大分離れていたからだ。


「うーん、やっぱ調整が必要ッスね」


痺れた手をぶらぶらと振りながら、放った後の武器を見つめる。

損傷はない。だが、やはり命中と衝撃が問題だ。

一旦工房に引き上げて微調整を行おうとした時――


「へぇ…、面白そうな武器持ってるな。ちょっと、見せてくれないか?」



声がした。誰もいないはずの地下で。

男の声。強盗か何かかと、カイは身構える。

しかし、その構えはあっさりと崩される。

間の抜けた声によって。


「駄目だよ~~~~、勝手に奥に入っちゃ~~~」





名もなき村


レオンハルト王国第一騎士団団長ディルグ・ユースティアは、苛立っていた。

その理由はいつもどこかへと消える勇者。

戦闘が始まるとどこかへと消え、凄まじい戦果を上げてくる。

一々、報告するために探すのは骨だ。

そして何よりも、ぽっと出の勇者が軍を仕切っているのが彼を苛立たせていた。

王の信頼も厚く、なまじ戦果を上げてくるため降ろすことも出来ない。

本来であれば軍を率いるのは隊長である自分の役目だったはずだ。

それを、貴族でも何でもない勇者が先頭に立っているのは屈辱という他ない。

だが、今の彼には策があった。

最近多発している敵国民間人の殺害。

軍では労働力となる敵国民間人の無差別な殺害を許可していない。

その責任を勇者の監督不行き届きでなすりつけてしまおうと考えていた。

だからこそ、今すぐにでも見つけてしまいたかった。勇者をその座から引き摺り降ろすために。

制圧を終え、軍の人間でごった返す道を掻き分ける。

そんな中で一際、人がいる場所の中心に勇者の後ろ姿を見つけた。

人の群れは勇者を中心に輪を作っているが、何故か勇者と軍の人間とは少し距離を空けている。

ようやく人の群れを抜け、勇者の前に出る。

視界が一気に開けた。

そこでディルグは知る。なぜ、勇者を取り囲むようにして輪が出来ていたのかを。

視界の先にあったのは血に塗れた勇者―――と同じ軍の兵士だと思われる服を着た首のない人間の死体だった。


目の前の状況に理解が追いつかず、固まるディルグ。

よく見ると、勇者は左手に何かを持っている。

眼を凝らして見ると、それは男の首だった。

おそらく足元にある兵士のものだろう。

だらしなく眼が開かれており、同じ人間のようには見えない。

勇者はというと、ディルグを見つけたようでこちらに視線を向ける。

その眼を見た瞬間に背中がざわつく、圧倒的悪寒。

怖い、というのがディルグの正直な感想だった。

汗が頬を伝う。身体が縫い付けられたかのように動かない。

狂気に染まった眼。口元が少し楽しげに笑っているように見え、一層恐怖感を植えつける。


「…何をやってるんだ?…」


勇者が口を開いた。

同時に眼から狂気の相が消えたように見えた。


「…勇者様に最近の軍内における、民間人の殺害について意見を伺おうと思いまして。」


ディルグは軽く勇者を探るために、攻撃を加える。

ここでそれすらも知らないというのであれば、監督不足を糾弾出来る。

さきほどの悪寒は気になったが、それよりも自身のプライドが勝った。


「それなら、たった今解決したところだ。」


そう言って、左手に持った生首を差し出す。

事態が飲み込めないディルグには、只の気持ち悪い生首だ。

ディルグの疑問に答えるように勇者は言葉を続ける。


「こいつがその犯人だ。そして、私が処罰した。」


その言葉にディルグは歯噛みする事しか出来なかった。




(ったく、この世界の人間共は無菌室で培養された良い子ちゃんばっかですかァ?)


一人陣へと戻った勇者は心中で吐き捨てた。

気づいてはいた。軍の中で民間人の殺害が問題になっていたことは。

犯人探しなどされてはたまったものではない。

行っているのは自分だったからだ。積み上げてきた信頼が瓦解してしまう。

そこで思いついたのが罪を一般の兵士になすりつけ、見せしめとして皆の前で処罰することだった。

幸い彼には信頼があった。疑うものはいない。

同時に己の欲求を満たせて一石二鳥だ。


(…しっかし、まあ、危ないところだったな。思わずアイツを殺したくなっちまった。)


先ほどの部下とのやりとりを思い出す。

人を殺した事で何ともいえない高揚感に包まれ、思わず部下を殺したくなってしまった。

殺せ コロセ コロセ と頭の中で脳が狂喜していた。

まだ時期は早いと、必死に自身に言い聞かせ自制したのだった。

恐らく、あの時の顔はこの世界に来てから取り繕っている顔ではなく、本来の殺人鬼としての自分だっただろう。


(まだまだ、じっくりと行かねェとな…ケーキの苺は最後まで…な)












シュガー→砂糖→佐藤とかいう適当さ

あの三人の話はそのまま放置するかもしれません

時間あったら書くかもですが


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