第三十話
見返すと誤字が酷い…
まだ気づいてないところもあるかも
「おっ、ようやく見えてきたな」
ザイウスが声を上げる。
エテジアを旅立って三日目ようやく王都に辿り着いた。道中、立ち寄った街で商人がドラゴンを見たなどという眉唾な情報もあったが、旅は滞りなく進んだ。
「うーん、あれを見ると帰ってきたって感じがするわ」
「そうだな。何故か懐かしく感じる」
見つめる先には、立派な門がそびえ立っていた。街をグルリと囲む無骨な門。その前には門番が立っている。この門は戦争時などに街を守る城壁として作られたらしい。街の中にもいざという時の為に地下道があるという噂だ。建国以来目立った争いは起きていないので活かされたことはないが。
門番の前は人の群れがこれでもかと言うほどに並んでいた。三列程作られた、門番の前に並ぶ人の列に加わり順番を待つ。
「この時間帯だと、混んでるわね」
「ここは混みそうだから俺は別の列に行く」
メギドはそう言って別の列に行った。大して変わらないだろうに。
時刻は昼を少し過ぎた辺りか、暗くなる前のこの時間は人が多い。
「これは…?」
ここまで黙っていたレイリーが口を開く。他国の人からすれば、王都に入るのに検問があるというのは不思議な事なのだろう。
「王都に入るには検問があるの。ちゃんとした目的が無いと門番に止められる」
「じゃあ、俺たちは…」
「大丈夫、実際目的なんて観光とか言っとけばフリーパスだから」
自分でそこまで言ってからふと気付く。あれ? この制度意味無いんじゃ。
首を傾げていると、思いの外早く順番が回ってきた。促されるまま前へと進むと、見知った顔が見える。
「次ーって、お前らか」
「マイクの爺さんじゃねぇか」
「誰が爺さんだ。せめておっさんと呼べ」
「おっさんはいいんだ…」
ザイウスと言い合いをする老兵士。白い口ひげを蓄えた60手前のお爺さん。
彼は、門番一筋40年という凄いんだか凄くないんだかよく分からない経歴を持つマイクさんだ。
この街で育った私たち三人にとっては、なじみ深い人である。
昔はよくザイウスが暴れて叱られたものだ。
「おう、お前らなら勝手に入れや。お前らに検問なんてするだけ時間の無駄だしな」
本当にこの国の検問の存在意義が無い気がしてきた。呆れながらも門を抜けようとするが、
「ちょっと待て」
という言葉によって止められる。
「んだよ。さっきは通っていいっつっただろ」
「その子供たちは誰だ?」
指さした方向にはレイリーとスーラーがいた。
「お前らだけなら通ってもいいが、その子たちは?」
「観光です」
「そうか観光か。って、そんなわけないだろ。明らかにお前らの後をついてってるだろうが」
この言葉で通してくれないとは…、どうやら真面目に仕事していたらしい。検問の存在意義を少しだけ確認した気がする。
「まさか…お前らの子供か!?」
「んなわけあるか!!」
思わず声を上げ反論してしまった。後ろに並んでる人の視線が痛い。
「じゃあなんだ? 生き別れた弟か?」
「ボケるのも大概にしろよクソジジィ」
ザイウスが私の思っている事を代弁してくれた。ありがとう馬鹿と心の中で言っておく。
別に嘘をつく必要もないだろう。一息つき事情を説明する。重要な所は伏せて。
「彼らは行く宛がないというので一時的に引き取った子供なんです」
「どっかに預ける宛はあるのか? お前らだって四六時中連れてくわけにいかないだろ?」
「ええ、だからこれから王都で預け先を探そうかと」
「それならほれ」
そう言って小さく丸められた紙を渡された。
「これは?」
「王都からちょっと離れた所に孤児院があってな、それの地図だ。預け先が見つからなかったらそこに行け。あそこならちゃんとしてるしな」
孤児院に預ける気はないのだが一応貰っておこう。
「なんで爺さんがそんなもん持ってんだよ」
「門番の仕事は検問だけじゃないんだぞ。検問が終わって、道を聞かれた時教えられるように大体の地図はもってんだよ」
知らなかった。どうやら門番はしっかり検問以外にも仕事をしているようだ。
「それにしても子供連れっていったら、あの人を思い出すな」
「あの人?」
「よく王都に来る人なんだがな。ちっせぇ弟連れて冒険者してんだよ。」
「へぇ…」
弟を連れて冒険者とは珍しい。中々出来ることじゃない。
「本当お前らと違って礼儀正しいし出来た人だ」
「王都に来た人には敬語が門番のルールなのに、俺たちにタメ口で話してる爺さんに言えた義理かよ」
「うっせぇ。お前らは昔から知ってるからいいんだよ」
ザイウスと言い合うその様は親子のようだ。
「じゃあ、私たちは行きますね。地図ありがとうございました」
「気にすんな。じゃあな、たまには親御さんの所にも顔出してやれよ」
マイクさんから受けとった地図をしまい、お礼を言って私たち4人は門の前を立ち去った。
あれ? 何か忘れている気がする…?
「俺の並んでる列だけ進まないんだが…」
メギドは一人遅々として進まない列の中で呟いた。




