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追放された少年  作者: 誰か
青年期
31/150

第二十五話

クロノ視点終わんなかったorz

新キャラ登場は一旦メイで終わらせたい…




「やっぱりクロノの兄貴、リルに見つかったんッスね。相変わらず仲がよろしい事で。」

紅朱音を取りにウッドブック工房に入ると、俺の姿を見たカイが楽しそうに聞いてくる。

「やっぱりって…、お前リルがこの街にいる事知ってたのか…。」

未だに俺の腕にはリルが絡みついている。

昨日宿屋で別れ一旦離れたのはいいのだが、朝会うなりまたこれだ。

「いやー昨日ちゃんと忠告しようとしたんスけど、その前に出て行っちゃいましたし。」

カイは依然楽しそうにニヤニヤしている。なぜだろう、見てると何となく殴りたくなってくる。

「相手がアレじゃー、リルも大変ッスね。」

「本当じゃのぅ。」

「だいじょーぶ頑張るから。」

「お前らは何の話をしてるの?」

(アレが大変って魔物で討伐しづらいのでも、出たのか?リルでも討伐出来ないとなるとA以上か?)

頭の中で考えを巡らせるが答えは出ない。

そんな俺の様子を見て三人は

「「「はぁー。」」」

と大きな溜息をつくが、俺には全く意味が分からなかった。


「ほいッス。言われてた紅朱音の手入れは終わったッスよ。」

ポンとカウンターに置かれた紅朱音。

店の灯りに照らされて妖しく光るその光沢は、手入れ前よりも増しているように思える。

「ありがとう。それにしても前に比べたら本当上達したね。」

「そっ、そういってもらえると嬉しいッス。」

照れくさそうに答えるカイ。

「代金はこれで足りるはず。」

王様から貰った袋をヒョイッと投げる。

「いつも言ってるッスけど、こんなにいらないッスから。」

「まあそういうなよ、これはここでしか手入れ出来ないんだしね。」

袋の中は確か30万コルくらいか、いつもやってもらっている感謝料込で妥当な金額だろう。

それに一年半前先代が倒れてからはここの経営も厳しいらしいし、潰れてもらっては困る。

「あくまでこれは預かっておくッス。この店が完全に復活したら返しますので。」

「ははは、楽しみにしてるよ。」

いつも大体こんなやり取りで支払いは終わる。

カイの腕も前に比べてかなり上がってきているので、客足は次第に戻ってくることだろう。

「じゃあ行くか。リルは頼んでる武器とかあるか?」

「あるけどー、後数日はかかるって。」

リルのメインは無数の短剣、そんなに手入れに時間がかかるようには思えない。

「何頼んでるんだ?」

「うーんっとね、秘密。カイが作る新武器だってー。」

カイの方をちらりと見るが、目をそらされた。どうやら答える気はないらしい。

少し怪しいが、答えたくないなら無理に聞く必要もないだろう。

「まあいいか。んじゃあね。」

昨日と同じように手を振って店を出ていった――


「これから予定はあるのかの?」

「いや、特には。」

工房から出て大通りをぶらぶらと歩く。天気は快晴。こう天気が良いと働くのが馬鹿らしくなってくる。

「リルは依頼でこの街に?」

「うん!魔物討伐に来たんだ。」

無邪気な笑顔で答えるリル。口から出てきたのは笑顔とは合わない物騒な言葉だったが。

こういう風になってしまったのも、俺の責任か。

「そうか、今日はこれから予定とかある?」

「うーんとね、クロノと街を回りたいなー。」

予想外の返答。断るのもなんだか悪い気がしてくる。突然の不意打ちに戸惑っていると

「そういうことなら儂は別行動にさせて貰おうかの。」

思わぬ所からの追撃を喰らった。そそくさとどこかへと消えていくドラ。

これでもう逃げ道はない。今日一日リルに付き合う事確定だ。

「行こ?」

謎の連携プレーによって逃げ道を塞がれてしまった俺は、上目遣いで聞いてくるリルに誘われるがままなす術なく街を回る羽目になったのだった――


「ああ何か久しぶりに、ドラと会った気がするよ…。」

心の底から疲れた声を漏らす。

「たわけ、同じ部屋なんじゃから毎日顔合わせとるじゃろうが。」

宿屋の食堂で向かい合って座るドラと俺。

あれから三日間毎日リルと街を回っていた。

無邪気に街中を回る背中を見て微笑ましく思うと同時に、疲労感が募っていった。

妹の様なリルに慕われるのは悪い気はしないが、あそこまでくっつかれると色々と周囲の目に気を使う。毎日逃げ道を模索したのだが、一昨日はドラ昨日はカイに絶妙な言い回しでまたも塞がれてしまった。それこそコイツらわざとやっているんじゃないかと思うほどに。

断る事が出来ない俺にも問題はあるが。

しかし、今日リルはいない。

カイの新武器とやらが完成したらしく、試し撃ちをしに行った。

試し撃ちというのが少々気になるが、久々に手に入れた自由を逃すわけにはいかない。

椅子から立ち上がり、背伸びをすると骨が少しボキボキと鳴っているのがわかる。

ここ数日依頼を受けていないせいか体が鈍っているようだ。

(体動かさないと…。)

この宿の名物である魚を刺し身にして小さいご飯の上に盛られたスシを食べ終え、今日の予定を決定する。

「ギルドにでも行くかな。」

「そうか、儂もここ数日退屈しておったし付いて行くぞ。」

「退屈だったなら、一緒に街回ればよかっただろうに。」

「これだから主は…。」

やれやれと首を振って呆れるドラ。ここ数日のドラとカイにはなぜか馬鹿にされている気がしてならない。聞いても答えてくれなさそうなので聞く事はしないが。

「なんか気になるけどまあいいや。んじゃ行こうか。」

数日の滞在ですっかり慣れた食堂を出て、ギルドへと向かった――


ギルドへ向かう道の途中には市場があり、色とりどりの果実やら珍しい魚が並んでいる。

ここは街で最も活気に溢れいつも人でごった返す。

昔森で栽培していた野菜なども多く見受けられる。

思いでに浸りながら興味深く市場を観察していると、何やら店の前で揉めているのが一人。

「だーから、高すぎやろこれは。後50コルは負けてもらわんと買わへんで。」

「しかしですね…。これ以上の値下げは…。」

俺は一人だけ知っている。こんな特徴的な喋り方をする人間を。

関わるべきではない。本能がそう告げる。

そそくさとドラの手を引いてその場を離れようとする。

背を向けて小走りで、ギルドへと向かう。

背後の声からすれば未だ揉めているようだ。

「ふぅ。」

市場から離れギルドの前に着き小さく息をつく。

ここまでくれば問題ないだろう。

危機を回避した自分を自画自賛しながら、豪華とはいえないギルドの扉を開ける。

ギィッと軋むような音をたてる扉を抜けるとそこには――

「おーやっぱクロノやったか。久しぶりやの。」

先ほど店で揉めていた筈のシュガー神聖国領主メイ・シュガーが満面の笑みで立っていた――


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