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追放された少年  作者: 誰か
幼年期
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第二話

魔惻の方法を追加しますた。

 書斎から放りだされた僕は、未だに現状を把握しきれていなかった。未だ、朝、夢から覚めたような感覚だ。しかし、頬を抓ったところ痛かったので、これは現実なのだろう。

 父上の言葉を思い出し、ふらふらとした足取りで自分の部屋へ戻った。


 僕に与えられた部屋は狭く、兄上の部屋の三分の一程度しかない。それでも、一般庶民よりは大分優遇されている。

 まあ、今しがた追い出されたわけだが。

 言われるがまま、自室で必要そうなものを茶色いカバンにまとめていると、次第にどういうことなのかを把握した。同時に涙が出てきて止まらなかった。

 ドウシテコウナッタノ? ボクガナニヲシタノ?

 自問自答を繰り返す。 何度も 何度も

 しかし、疑問という迷宮の行きつく先はいつも同じ


「落ちこぼれだから」


 解答はこれしかなかった それ以外の解答はなかった。

 ではどうして「おちこぼれ」なのか?

 僕は自然と自分の今までの人生を思い出していた。


十年前


 レオンハルト王国の名門貴族ユースティア家の次男として生まれた。

 レオンハルト王国は、フィファル大陸の中心部に位置する大国である。

 二百年前には魔物大侵攻を受け混乱の最中王都が壊滅する等甚大な被害を受けたものの、一人の勇者の活躍によってなんとか持ちこたえた。

 今ではすっかり持ち直しており、フィファル大陸での中では最も繁栄している国である。問題点としては、海に面していないことだが、小さな小競り合いはあれど、ここ数十年フィファル大陸は安定しているので、隣国を経由しての貿易も可能である。

 ユースティア家は、そんな王国の中でも魔法の名門としてその名を轟かせていた。二百年ほど前は今ほどの権力はなく、中堅貴族といった位置にあったが、王都が壊滅した際、最もいち早く復興に尽したことで地位が上がり、今の位置につけることとなった。

 僕の上には三つ上の姉と一つ上の兄がいた。昔は、三人でよく遊んでいたのを憶えている。

 最初の転機が訪れたのは姉が六歳になった時だった。

 この国では六歳になると魔力測定(魔惻)をほぼ全員が受けることになる。

 魔測というのはその名の通り魔力を測る儀式である。儀式と言っても只教会にいって測るだけなのだが。

 方法は色見水晶と呼ばれる水晶に触れ、その色の濃さで測るというもの。

 色は各属性によって変わる。光なら黄色、水なら青といった具合だ。属性は地、水、火、風、光に分類される。

 姉はその年でもっとも高い魔力を記録した。 

 周囲は皆称賛し、将来を期待した。

 魔力というのは生まれた時から一定で、成長する事はないと言われている。

 それゆえに、魔法は才能の世界と呼ばれている。

 世の魔術師がする修業というのは、魔力の制御法であったり オリジナリティのある魔力の使い方であったりする。

 魔力を上げようとする者もいたがそのすべてがことごとく失敗し、成功した者はいない。

 魔力量が多いというのは魔術師にもっとも必要な才能とされている。

 そのような事情もあって、姉は国でも有名になった。

 その二年後。

 今度は兄が魔惻を受けることになった。

 結果はその年の二位。兄は不服そうだったが、姉の時のように皆称賛した。

 その頃から、奇跡のユースティア姉弟と呼ばれるようになり、国中にその名は轟いた。

 僕はそんな姉と兄を尊敬していた。

 二人ほど魔力があれば、おとぎ話に出てくる二百年前の魔物大侵攻を一人で止めた勇者や、不老不死となった賢者のようになれると思っていた。

 そして一年後。

 僕が魔惻を受ける時が来た。

 周囲は皆期待した あの二人の弟なのだから彼もすごい魔力を持っているのだろう。

 僕は信じていた 姉や兄のようにぼくもすごい魔力があるはずだと。

 そして結果がでた。


 魔力無し。水晶は何の色も示さなかった。

 現実は残酷だった。

 全員が何かの間違いだと思った。

 しかし、何度やっても結果は同じ

 周囲の期待は侮蔑へと変わり、僕の希望は絶望へと変わった。

 その日以来何もかもが変わった。

 父上は全く話しかけてこなくなり 暴力をふるうようになった。

 母上は侮蔑の視線を向けてくるようになった。

 姉は視線すら合わせてくれなくなった。

 兄は魔法で僕を痛ぶるようになった。時には死んでしまうんじゃないかと思うほどの魔法も放ってきた。

 僕の怪我を見る度、兄は首をかしげていたが、どういう事か僕には分からなかった。

 唯一二歳の妹は変わらず接してくれたが、それも時間の問題だと思った。

 それでも僕は諦めなかった。諦められなかった

 家の書庫に行き魔法に関する知識を片っ端から覚えていった。

 魔力を上げる方法もすべて試した。

 周囲の侮蔑は嘲笑へと変わった。

 それでも僕は努力し続けた。

 誰になんと言われようとも魔法を使えるようになりたかった。

 しかし、何も変わらなかった。

 そしてつい先日妹が魔惻を受けた。

 結果、歴代最高を記録した。

 ユースティアの三兄妹として今まで以上に有名になった。

 そして僕はいつの間にか、世間的に居なかったことにされていた。

 僕は妹を妬んだ。羨んだ。

 同時に妹がもうこれまでのように接してくれないのかと思うと悲しくなった。

 魔惻が終わった後妹との接触を避けた。怖かったのだ。妹にまで蔑まれることが。

 ある日廊下で妹とすれ違ってしまった。僕は覚悟していた。妹から侮蔑の視線を向けられる事を。

 しかし、妹は変わらず接してくれた。それがどうしようもなく嬉しかった。



 これがクロノ・ユースティアとしての十年間の人生のすべて。





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