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追放された少年  作者: 誰か
少年期
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第十二話

ギルフォードのランクはBクラスくらいです


「クーロノ今日は街でも回りましょー」


 そんなかーさんの言葉で城から出て街に来ているのだが、両手には荷物荷物荷物。

 昨日いきなり王城に跳んだ僕たちは客間に通されそこで一夜を過ごした。

 出かけてすぐ人の多さに圧倒される。流石は王都というべきなのだろうか。 

 色んな店が軒を連ねている。

 昔は別の国の王都に住んでいたが、あまり外には出た事がなかった。

 僕自身迷いの森に入って以来、人の居るところには行ったことがなかったのでわくわくしていたのだが

(こんなに買うとは…うわ、まだ買ってる)

 僕よりもかーさんがはしゃいでいるようで、次から次へと物を買っている。

 荷物は全て僕持ちだ。

 こうして元気に買い物をしている姿をみると無邪気にはしゃぐ子供のようだ。

 かーさん曰く


「女の買い物は長いのよ、男は大体荷物持ちって相場はきまってるの。」


との事らしい。

 世の男性の不幸を嘆きつつ視線を集めていることに気づく。

 僕とかーさんは黒髪という珍しい特徴を持っているからだろう。

 僕は元々黒髪ではないのだが、かーさんの息子になってからすぐに息子の証として黒髪にしてもらった。

 僕にとっては過去との決別の象徴である。


「クロノも欲しいのがあったら何でも言ってねー」


 ジャラジャラとお金の音がする財布を叩く。

 どこでお金を手にいれたのだろう? ずっと一緒に迷いの森に居たはずだが。

 いや、よく考えればたまにいなくなる時があったか。


「今のところはないかなー」


「ふーん、まあいっか。さて、後はもう一周したら終わりにしましょうかねー」


「もう一周するの!?」


 夕暮れまで黒髪の親子は街を回っていた。


 翌日、黒髪で美人と美少年な姉弟がいたと、街で噂になることを彼らは知らない。





翌日

 最初に転移した場所――謁見の間に僕たちは呼びだされていた。

 相変わらず騎士たちの目からは殺気が出ていた。


「来てもらったのは他でもない、お主に剣の手ほどきをしてもらいたいのじゃ」


「いやよ、めんどくさい」


 ばっさり。王様の言葉は一刀両断された。騎士たちにどよめきが広がる。


(で、なーにを企んでるのかなクライス?)


 以前のように頭に声が響く。

 王様には王様の事情があるのだろう。

 それをかーさんが察してテレパシーを使ったわけだ。


(すまんな、あれからお主たちの事を臣下たちに聞かれてな。つい剣術指南の為に呼んだ剣士じゃと答えてしまったのじゃよ)


(なーにがついだ。絶対アンタは前の王の血を継いでるわね。断言してもいいレベル。腹黒いとこがそっくりだもの)


(さて何のことやら? まあ、そんなわけじゃから、一試合だけでもいいからしてくれんかの?)


(はー、しょうがないわね。私の息子にやらせるわ。私だったら相手殺しちゃいそうだし)


(そうしてくれ。お主が本気だすと国が焦土と化すからな)


 えっ、僕ですか。

 勝手な約束をして会話を切った二人は話を合わせる。


「まあ、わたしはやらないけど息子ならいいわよ」


「ほう、そなたの息子なら期待できるじゃろう」


「お待ち下さい陛下!! こんな子供に教われと仰るのですか?」


 一際大仰な鎧を着た騎士団長らしき男が口を挟む。年は三十代前半くらいか。

 頼むから頑張ってくれ騎士団長。僕はずっと迷いの森にいたので人の力量がわからない。

 母さんは僕を強いと言うが、騎士というからにはそこそこ強いのだろう。

そんな人たちと試合などしたくなかった。


「へー、私の息子よりあんたの方が強いと思ってるの? そんなわけないじゃない。あんたなんか一太刀も浴びせられないわよ? なんなら試合してみる?」


 あからさまな挑発。騎士団長の顔はみるみる赤くなっていた。これは避けられない。


「いいだろう。そこまでいうなら、試合しようじゃないか」


「うむ、話はまとまったようじゃな。場所は第一修練場にするとするかの。異論はないな?」


「ないわ」


「ありません!!」


 元気よく返事するかーさん

 いや、当事者は僕なんですけど。






第一修練場


 下は土の地面。正方形に広がっている土。森とは違って足場は大層安定しそうだ。

 僕は目の前に立つ騎士団長を見つめた。

 がっしりとした体つき。全身を覆う銀色の鎧。手にはキラリと光るロングソード。どちらもが光沢が凄まじい。まさに騎士。

 対して僕は腰に二本の剣を差したこと以外はまるっきり一般人の服装だ。

 周りには騎士やら王様やら大臣やらが僕をみつめていた。

 ちらりとかーさんのほうをみると、なにやらやっちゃいなさいと言っている。

 相手の力量も分からないのにそれはないだろうと思いながらも、始まりの時を待つ。

 騎士たちからは「団長やっちゃえー」などと聞こえてくる。ちょっと軽すぎないか?

 始まりは王様の合図。

 剣も構えずにその時を待つ。

 王様の声が響く。


「はじめっ」


 はじまった瞬間騎士団長がこちらに剣を構え向かってきた。たいして僕は丸腰。



 その時騎士たちは確信していた。

 団長の勝ちだと。

 団長ギルフォードのもっとも優れている点はスピード

 圧倒的スピードで相手との距離を詰める。

 今現在丸腰で突っ立っている少年に対応できるわけがないと。

 騎士たちの懸念はどうやって殺さずに試合を終わらせるかということだけだった。

 その騎士たちの考えはすぐさま打ち砕かれる。まだあどけなさの残る少年によって。




 第一印象は

(遅いな~)

だった。

(こんなのオーガキングどころかブラックレイ・ウルフより遅いぞ)

 そもそも、Aランクのなかでも最も素早いブラックレイ・ウルフと、SSランクのオーガキングの二体と比べれば、人間など遅いのは当たり前であり、比べることから間違っているのだが、そのことをクロノは知らない。

 こんなものどうにでもなる。

 瞬時にそう判断する。問題はどう仕留めるかだ。

 正直こんなのに舐められていたかと思うと、イライラしてきたので

(そうだ鎧と刀全部粉々に砕こう)

と憂さ晴らしを込めて行動に移すのであった。


 ギルフォードはなにが起こったのか理解できなかった。

 確かに先ほどまでは前に少年はいた。丸腰の少年。

 早すぎて自分のスピードについてこれないのだろうと思っていた。

 剣を振り下ろし頭の前で止めてやれば降参するだろう。

 そう思っていた。

 しかし現実は、鎧は砕け、剣はいつ食らったか分からない一撃ではじかれ、今はもう剣も砕かれていた。

(なにがおきた?)

 理解出来ない。男はその場に呆然と立ち尽くしていた。唐突に首筋に剣を当てられる。

 そこには、消えたはずの少年がいた。


 皆が静まり返った中少年はいい放った。



「まだ、つづける?」









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