~プロローグ~少女の呟き
何となくプロローグとか書いてみただけだったり
今後気分次第でこれが一話になるかも
多少修正しますた
ある日、いつもは話しかけてこない父上に「食事が終わったら私の書斎に来なさい」と言われた。
僕は何事かと思いながらも内心怯えていた。
父上はあの日以来全く話しかけてこない。話しかけてきたとしても僕を罵倒する時くらいのものだ。時には暴力も振るわれた。
なので今回書斎に呼ばれたのも、罵倒するためなのだろうと思い憂鬱になる。
―――逃げ出してしまいたい。
そんな感情を抑えながら、最早歩くのが億劫になるほど無駄に広い廊下に出て書斎へと向かう。書斎は、紅い絨毯が敷き詰められた廊下の突き当たりにある。
書斎へと向かう途中、突然後ろから長い袖を引っ張られた。
何事かと振り向いてみると、僕を上目使いでみる6歳になったばかりの妹がいた。
兄である僕の目から見てもとても可愛く聡明な妹。僕と違って才能溢れる妹。
妹は心配そうな目で「おにいちゃんちちうえのしょさいにいくの?」と僕に聞いてくる。
僕が罵倒され暴力を振るわれる姿をよくみている妹からすれば、またそうならないかと心配なのだろう。
心優しい妹の言葉を聞き、なんて素晴らしい妹なんだろうと思いながらも、だからこそ心配をかけるわけにはいかないと思う。
「大丈夫、少し話しをしてくるだけだからね。ちちうえを待たせるわけにはいかないからもういかないと」
大分柔らかく、僕はそう言った。表情から怯えの色をかき消して。
妹はまだ何か言いたげだったが、僕は妹に背を向け書斎へと歩きだした。
「なにか嫌な予感がする…どこか遠くへ行ってしまうような…」
そんな少女の少女らしからぬ呟きを聞いた者は居なかった。