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いずれは最強コンビ  作者: HAL
序章 管理者に会った
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第四話

 セシルに教えてもらったところで昼飯を食べた。絶品だったなぁ。また来よう。

 その後、俺は広場に来ていた。

 天空都市から天界へ至る門は広場に設置されているからだ。天空都市から行けるエリアは、荒野、森、海の三つらしい。

 今までの星覇者の活動が記録された資料室だか図書室だかが用意されている。三つのエリアの詳細についても、そこで調べることは可能らしい。

 これもセシルから教えてもらった。

 記録された蔵書は基本的に持ち出しを許可されていない。

 その場で閲覧し、万が一破損したら弁償する。

 それが大まかなルールだとか。詳しくは、そこにいる司書に聞けばいいらしいけど。

 講義とかしない理由は、血気盛んな星覇者ならろくに話を聞こうとしないからかな?でもって、即座に天界へ出張って死ぬとか。

 いや、これは邪推だな。

 とりあえず、今度行ってみるかね。情報収集を怠ると、よろしくない未来が待ってるだろうし。

「さて、と」

 ともあれ、俺は目当てのものを探す。

 門がある広場には、掲示板と呼ばれるものがある。

 管理者が作成しているらしい。全ての星覇者が種族ごとに一覧化され、実績が記載されている。

 で、俺はその掲示板の真ん前にいる。見上げるほどの巨大さだった。

 種族、名前、称号、探索エリア、魔物の討伐数が順に記載されている。

 種族と名前はそのままだ。

 称号というのは星覇者の格付だ。王、司令官、騎士、兵士の四つに分類される。基準は不明。なぜなら、管理者が設定しているから。

 最初は兵士から始まり、騎士、司令官、王へと昇格していく仕組みだ。

 周りから声が聞こえてくる。

 掲示板を見ている人は少なくない。そのうちの二人の会話が耳に入ってきた。

「おい!あの熾天使がこの近くで目撃されたらしいぞ?」

「何だと!?どこでだ?あのフェリシアさんを一目見たいぜッ」

「やめとけ。メチャクチャ機嫌悪いみたいでな」

 そのフェリシアって人のファンなのかね?何となく気になって調べてみた。

 いた。鳥人族の一番上に名前が載っている。フェリシアだな。ランクのところに「王【熾天使】」と表示されている。

 称号の右は、二つ名らしい。管理者が付けているとか。しっかし、熾天使って随分派手な二つ名だなぁ。

 うわぁお~。討伐数が二百を超えてるぞ。

 天空都市の門を使えるようになってから、まだ四か月くらいしか経ってないはずだ。

「マジかよ。一日一殺でも間に合わないってのに……」

 人外なんじゃないのか?王クラスだとここまで差がつくのかよ。

 ま、いいや。気にしないで、俺はのんびりやってこう。

 馬人族に【聖騎士】という二つ名持ちもいたが、【熾天使】と同程度の実績だった。他は次回見る時の楽しみにしておこう。

 ちなみに、竜人族の欄がもあったが、やっぱり俺の名前しかなかった。格付は兵士、称号はなし。探索エリアも魔物討伐数もゼロ。少しずつ上げていこうかね。

 掲示板から顔を上げ、歩き出した。

 今回は荒野に行こう。

 海は水中戦だからなぁ。泳げないこともないが、地上戦もろくに経験してないから初心者にはきついと思う。

 森は見晴らしが悪いから、海ほどの難易度じゃないだろうけど、これまた初心者にはきつい。

 よって、荒野行きに決定。

 ってなわけで、我らは荒野の門へ近づく。

 躊躇なく俺とフィンは門の中へ入る。

 門から門への移動を転送という。

 転送された後の景色は、見事に一変していた。

 まさに、荒野。人工物など一つもない。目の前に広がる光景はそうとしか言えない。

 赤茶けた大地、ところどころ生えている枯れ木。

「星覇者かね?」

 後ろを振り返ると厳めしい面構えの門番が二名いた。髪の色から、狼人族と馬人族に見える。

 各門には警備がいるらしい。ま、いきなり門から魔物が出現とか勘弁だしな。

「はい。そうです。新人ですが」

「そうか」

 大して興味も持たず、沈黙する男たち。

 竜人族は冷遇されるわけなのかね。いや、それは被害妄想かな。職務に忠実なだけかもしれないし。

 気にせず、先へ進もう。

 そういえば、天空都市の側に門番はいなかった。広場全体の番兵として何人か見かけた気がするが、門番はあくまで転送先にいるんだろうな。

 俺は改めて周囲を見渡す。

 ここでは数か月前まで五種族と魔物との抗争があったはずだ。その五種族の中に竜人族が一人だけいたらしい。

 本来なら、魔物が死屍累々となっていてもおかしくはなかった。火葬して弔ったため、今ではただの荒野としか見れないが。

 ここはかつての戦場の跡。

「ふぅ。やめだ」

 頭を振って、過去から現在へ戻ってくる。感傷に浸っても、俺にできることはない。

 フィンは俺の後ろをトコトコと付いてくる。これで魔獣が出没するエリアじゃなけりゃ散歩みたいで和むところだけど。

 今回は下見と試射なので特に荷物なんて持ってない。剣と銃、一人と一匹分の軽食くらいだ。まぁ、門からそんなに離れなければ大丈夫だろ。

「あまり離れるのもまずいし、この辺で試すか」

 もちろん、銃の試射だ。

 ホルスターから銃を抜き、安全装置を外して構える。そして、引き金を引く。やることはそれだけだ。

 それで、オーラの弾が放たれるらしい。

 すぐ傍の岩に照準を定める。

 引き金を引いてみた。

 小さくない発砲音が響き、一直線に飛ぶオーラの弾をかろうじて捉える。

 速い!

 オーラの弾丸は岩に命中した。

 満足げに笑みを浮かべようとして凍りついてしまった。

 弾は貫通していて、向こう側が見えてた。

「すげ……」

 呆然とした。

 貫通力が想像よりもずっと高い。槍とは射程の長さが歴然としているし、大して力もいらない。だって、引き金引くだけだし。

 すんごい武器だよ、こりゃ。

 ただ欠点もあった。それは、発砲音が響くこと。

 銃を使用すれば、確実に居場所が特定されるな。

 フィンが驚いて俺から距離をとってた。相変わらずの素早さだ。

「大丈夫だぞ?冗談でもお前は狙わないから」

 フィンは警戒を解かない。これは慣れてもらうまで待つしかないな。

 その後、何度か試射を繰り返す。ブレスレットを確認すると、と表示されているので、20発くらい撃ってみたわけだ。

 フィンも慣れてきたみたいで、お昼寝していた。よく寝る子だね。ほんとに。

「次は盾を試してみるか」

 剣と同じ要領で、盾を出現させた。

 前腕を覆って余りあるほどの大きさで、円形の盾がブレスレットを中心として顕現する。

 盾は半透明なので、ブレスレットの数値も確認できた。「160/450」となっている。

「盾の創造は50のオーラ消費量。言われた通りだな」

 さすがに、ここまで消耗すれば疲れてきた。呼吸も荒くなってきた。

 見た目通り、盾は大きさに比例してそこそこの重量がある。

 ん~。これじゃ、左手で剣や銃を扱うのは無理っぽいな。盾を使ってなければ、できなくもないけど。

 俺は何となく盾を見つめる。

 当然ながら、剣も盾も使い続ければ摩耗していく。

 一定の使用回数を超えると、壊れてしまうらしい。その一定回数には個人差があるらしいが。なんでもオーラの質を高めればいいとか。どうすりゃいいか、さっぱりだけど。

 俺はため息をつく。さすがに疲れてしまった。オーラを半分以上消費すりゃ、当然なのかな?

 盾を消して深呼吸する。

 とりあえず検証は終わったことだし、戻るとするか。

 いや、ひとまずオーラをある程度回復させなきゃならないな。ここはもう天空都市の外なんだ。どこから魔物が襲ってくるのか分かったもんじゃない。休息はとれるうちにとる。そうしよう。

 大の字になって寝転がった。フィンも同意するように、俺の腹に頭を預けた。

 周囲に気配はない。フィンが警戒しないのが何よりの証拠だ。

 一人と一匹は夢の世界へ旅立った。

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