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いずれは最強コンビ  作者: HAL
第一章 美女に絡まれた
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第八話

 部屋に戻って鍵をかける。

 それから、すぐにベッドに横になった。

 起きて食事して戻ってくる。それだけなのに、節々が痛むのが辛い。我慢できないほどじゃないけど、さすがに気が滅入る。

 やばいな。身体を鍛えることを当たり前にしなきゃやってけないわ。これ。

 まだ疲れがとれたわけでもないので、すぐ寝入ることができた。

 目が覚めたのは、窓からの日差しによってだ。太陽が天高く昇っているから、昼頃かな?

 ベッドから起き上がる。

「あ、起きた」

 声の方向へ視線を向けると、フェリシアがフィンにちょっかいをかけていた。フィンは警戒心を隠さず逃げ続けていたようだ。

 って!?

「なんでいんのッ!?」

 眠気が吹き飛んだ。

 俺、確かに鍵をかけたよな?

「合鍵があるからよ。じゃないと壊して入ることになるじゃない?」

 頭大丈夫?みたいな感じで返された。彼女が指差す先には確かに鍵がある。

「なるほど。確かに扉は壊されてない――じゃなくてッ!なんで俺の部屋の合鍵を持ってんですか!?」

「女将にもらったからに決まってんじゃない」

 至極当たり前のことをなぜ聞くの?って感じだ。

 女将……なに余計なことしてくれてんだよ!

「いやいやいや。おかしいでしょ?俺の部屋ですよ!?」

「別にいいじゃない。私たちがパートナーになったら、一蓮托生よ。そんなこと気にする必要もなくなるわ」

 なんでそんな自信満々に言い切れんの?俺、異性ですよ?

 ひょっとして俺の感覚が間違ってんのかな?急に自信がなくなってきた。

「いや、そうなったらそうですけど……」

「誰のおかげで、ここに泊まれるようになったんだっけー?」

 伝家の宝刀を抜かれた。

 グッと何も言い返せなくなる。紛れもなくフェリシアのおかげ。そこについては、反論の余地がない。

 まずい。このまま事態が進んじゃうと、俺のプライベートエリアがなくなる。けど、打開策が……

 このままじゃ、部屋で変なことできないじゃん!?変な物置けないじゃん!?

「何よ、狼狽しちゃって。私に見られて困る物でもあるの?」

 慌てて首を横に振る。

「い、いや。まだないので……」

 先に荒野のエリアに行っておいてホントに良かった。妙なもの買わなくてマジで良かった。全裸とかで寝てなくてよかった。しないけどさ。

 俺、ナイス判断。自画自賛が止まらないって!現実逃避と言うのかもしれないけど。

 と思ってたけど、なぜかフェリシアから意味深な笑みを向けられる。

「ふーん。まだ、ね?」

「はは……は。あれですね。今のは言葉の綾というやつでして」

 失言に気づいた!しかし、うまいかわし方が思いつかず、乾いた笑みを返すしかない。

「いいわ。それは後でじっくり聞かせてもらうから」

 やべぇ。これはこのまま押し切られるパターンになったような……

「そんな情けない顔しなくても大丈夫よ。そんなしょっちゅう来るわけじゃないし」

「あ、そうですか」

 顔に出さないよう注意するけど、心から安堵した俺がいた。

 しっかし、参った。気が休まる時がないじゃん。自分の部屋だろうと。いや、もういいや。人間、諦めが肝心だ。

 そんな会話の最中も、フェリシアはフィンに構い続けていたが、子猫の方は変わらず逃げ続けていた。抱きかかえようとすると、メチャクチャ暴れて腕から逃れてる。

 心底嫌がられてると分かって、悄然とするフェリシア。

 あー、もの悲しい雰囲気が漂ってるよ。

 とりあえず慰めることにする。

「まぁ、フィンは臆病な性格だし、初対面で打ち解けられた人なんていないんですよ」

 それに、あんたは紅焔をぶちかましてくれた張本人だし。フィンが気づいてないわけがない。あんな大爆発を引き起こす奴を怖がらないわけがない。

 言わないけどさ。

 俺はベッドから抜け出して伸びをする。気のせいか、筋肉痛が和らいだような。これなら出られるか?

「出かけるの?」

「ですねー。昨日のようなことはできないですけど、軽めの探索くらいなら問題ないかなって」

 フェリシアがフィンに構うのをやめる。改めた感じで切り出された。

「ねぇ?あんたが私のパートナーとなるために、私たちはお互いのことをよく知っておいた方がいいと思わない?」

「いや、それほどでも――ありますね!俺、フェリさんのこと知りたいデス!」

 フェリシアがおもむろに剣の柄を握ったので、返答を百八十度転換した。

 今気づいたが、彼女は戦闘用の服装に着替えている。どっち道俺を連れ出す気だったのか?

「ん。それでよし」

 怖かった……って、なんかこんなんばっかな気がするし。

 何だかんだで、俺はフェリシアと一緒にいるのが楽しくなってきた。育ての親を除けば、こんなに親密に話した記憶もないし。

 巧妙な罠だな。気づいたら抜け出せなくなる。注意しておかなきゃマジでやばいな。

「じゃ、探索に行きましょうか」

 そんな俺の思惑はつゆ知らず、彼女は気楽な感じで宣言した。

 いいかな。結局、昨日はフェリシアの戦いを観戦して、フェリシアと戦っただけだ。星覇者の本分である魔獣と戦ってない。

 今後生き残っていくために経験値を積む必要がある。

 そう思った俺は、フェリシアが退室した後、手早く着替えを済ませる。剣や銃、ブレスレットなどの装備を整える。

 よし。行くか!

 フィンがこちらを見上げている。

「行ってくるから、少し待っててくれよ」

 数回頭を撫でると、フィンは目を細める。

 今回、フィンはお留守番だ。

 フェリシアが同行する以上、どんな危険が待っているか不安になる。だけど、この部屋にいれば安全だ。

 宿泊が決まった時点で、部屋にはフィン用の餌と水が用意されている。出かける前に補充しておいたので少しの外出くらいなら問題ない。今回は数時間探索するだけで、日付が変わるまでやるつもりはない。

 ま、予期せぬ事態が発生してそうなったとしても、フィンは一日中寝てるだろうけど。

 部屋を出て、フェリシアと合流する。

 女将に鍵を預け、二人で宿を出た。

「行ってらっしゃ~い」

 背後から女将の呑気な声が聞こえてきた。

 複数の視線が寄せられるのを感じつつ、俺たちは広場の門へやって来た。

「今回は森に行きましょう」

 あれ?なんか仕切られてるし。

「見晴らし悪いから、初心者の俺にはきついんですけど」

「大丈夫よ。いざとなったら、私があんたを担いで森を抜けてあげるし」

 そういや、彼女の翼は飾りじゃない。

 前回の戦闘では空中戦を仕掛けてこなかったと思い出す。つまり、俺に合わせて戦ってくれたわけか。

「あー、じゃあ最悪お願いします」

 態度には出さないが、心中で敗北感に打ちひしがれる俺。

 見透かされたかもしれないが、フェリシアは何も言ってこなかった。

 森へ至る門へ入る。

 次の瞬間には鬱蒼とした森林へ足を踏み入れていた。

 ここにも門番が二人いた。片方の門番が口を開こうとしたが、フェリシアが素通りしてしまう。

 しょうがないので、俺も会釈しつつ後に続いた。

 しばらく獣道を歩く。

「いいんですか?無視して」

「いいのよ。知らない奴から声をかけられたって、いちいち律儀に応じる必要はないわ」

 有名人も大変ですな。

 一般人の俺には共感できないので、何も言わなかった。

 二人ともしばらく無言で歩き続けた。

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