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いずれは最強コンビ  作者: HAL
第一章 美女に絡まれた
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第七話

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ありがとうございますm(._.)m

 翌朝。

 眠気をこらえて部屋から出ると、フェリシアも出てきた。図ったかのように。

「おはようございます。フェリシアさん」

「あら?奇遇ね。おはよう、レヴィ」

 ちょっとわざとらしいような?

 ホントに奇遇かどうか怪しいと感じたが、眠いからスルーした。

「これから朝食ですか?」

 俺が歩き出すと、彼女もついてきた。

「ええ。そうよ。あんたは初めてだから、案内してあげるわよ」

 フェリシアが親切になってる。昨日と同一人物に見えなくなってくる。

「あー、ありがとうございます。フェリシアさん」

 朝食を食ったら、もう一眠りするか。昨日の激闘のせいで全身筋肉痛だし、今日はお休みにしよう。

 あくびを噛み殺す。

「フェリさんでいいわよ」

「はぁ、そうですか。フェリシアさん」

 眠いからよく聞いてなかった。

 ぼんやりと頭の中で吟味するが、まぁ返事は変わらなかったな。

 正直、あんまり深く関わりたくないってのが本音だ。美人だけども、美人と関わる代償が命、もしくは寿命数年分とか遠慮したい。

 なにせ巨神兵とか……俺は自殺願望者ではないし。

 仰々しい名前だが、決して大げさじゃない。以前、大勢の星覇者が数に物を言わせて巨神兵を撃破しようとしたが、ろくに損傷を与えることもできずに返り討ちにされたらしい。

 その名に恥じぬ巨躯から繰り出された一撃は、地震と錯覚するほどの衝撃をもたらしたという。

 僥倖というべきか、死者は出なかったらしい。幻獣ということで、管理者がきっちり制御してるんだろう。

 ただ、その時の圧倒的なまでの戦闘力をまざまざと見せつけられて、何人かの星覇者はトラウマになって引退したとか。

 セシルから絶対に挑んではダメと口を酸っぱくして注意された。あれは、かなり真剣な目つきだったよなぁ。

 まったく。そんな大敵に挑むなんて、頭おかしいんじゃないか?

 ……いや、おかしいんだよな。だって、バトルジャンキーなんだから。

 漫然とそんなことを考えていると、冷気が漂ってきた。その原因を作ってるのは言うまでもなくフェリシアだ。昨日と同じのバトルジャンキーは底冷えする声音で、

「喧嘩売ってると受け取っていいのよね?一度、死んでみる?」

「フェリさん、今後ともよろしくお願いしますッ!」

 元気よく返事した。眠気が完璧に消えた。勢いよく敬礼したせいで、身体中が悲鳴を上げたが、気合で無視。

「うん。よろしい」

 フェリシアが満足げに頷いてまた歩き出した。

 そんな彼女の後ろについていきながら、ホッと安堵する俺。

 殺気が目覚まし療法に最適だなんて。そんなことに気づく日が来るとは思ってもみなかったよ。俺は。

 はぁ。建物の中ってことで、完全に油断してたな。彼女に対しては、細心の注意を払わなきゃ下手すりゃ灰にされちまうんだった。

 あー、危なかった……

 何とか乗り切った。何ていうか、生きてるって素晴らしい。

 とりあえず、朝食をご一緒することになった。

 直前に殺気を醸し出された手前、断るなんて不可能だった。だって怖いし。

 ってなわけで、食堂に直行。

 食事はビュッフェ形式で好きな物をとってくる。皿をいくつも用意して、ようやくテーブルの前に座る。

 フェリシアはすでに着席していた。

「朝からよくそんなに食べられるわね」

「生きるために食えるうちに食う。それが我が家の鉄則なんで」

 が、フェリシアも小食というわけではない。俺よりは少ないが、成人女性分くらいにはなっていると思う。

「いただきます」

「いただきます」

 食べる前に両手を合わせるのはマナーだ。

 それぞれの種族は合掌し、信奉神に感謝の祈りを捧げる。

 俺は銀皇竜に。フェリシアはおそらく紅霊鳥に。

 飯を食べてると、フェリシアが話しかけてきた。

「あんた、何でここへ来ようと思ったの?」

 あぁ。きっと閉鎖的な種族だから、不思議なんだろうなぁ。

「うーん。外の世界が見たかったから」

「へぇー。望んで来たのね?誰かに強制されたとかじゃなくて」

 肯定を示す。竜人族の中でも変わってるっていうことは自覚している。

 俺の方からも折角の機会なので尋ねてみた。

「フェリさんは何で?」

 彼女は悪戯っぽく微笑む。

「何?私のことが知りたくてたまらないの?」

「あぁ。興味はあるけど、交換条件とかあるなら別にいいかなと」

「ないわよ!ただ、家族とうまくいかなくてね。結婚させられそうだったから、家出したのよ」

 ……何ですと?

「結婚したくなかった?」

「当たり前じゃない。親の都合だけで決められた結婚だし。弱いし。そのくせ、態度はでかいし」

 親の都合で決められる結婚か。ひょっとして良家の出身だったりするのかな?

 ただヒートアップしそうだったので、慌てて話題転換を試みた。

「うわぁ、それは確かに。ただ、家出して、ここに来るって発想がすごいですね」

「別に大したことじゃないわ。家で退屈しているよりはよっぽど楽しいし」

 言葉通り、今の彼女は生き生きとしている。

 昨日は荒々しかったが。もちろん、口には出さない。返事が暴力の可能性があるし。

 俺は昨日の教訓を活かさなければならない!

「じゃ、ご家族やそのお相手がフェリさんを探してたり?」

「するでしょうね。というか、婚約者を気取っている雑魚ならもういるわ。ここに」

 大丈夫かなとあえて話題を戻してみたら、普通に返事が返ってきた。さすがにその内容は予想外だったけど。

「五芒星職員として?それとも、星覇者として?」

「後者よ。しかも、護衛付き」

 うわぁ。俺が言うのもなんだけど、情けなくないか?フェリシアが単独で活動してるのに。まぁ個人の自由だけど。

「まぁ、それほどフェリシアさんと結婚したいってことなんでしょうね……」

「いい迷惑よ。それ以外の何物でもないわ」

 無難な答えを返したつもりだったが、フェリシアには一蹴された。

「あんたの家族はどうなの?」

「俺ですか……」

 少しだけ口調が重くなる。

「俺はフィンだけですよ。血の繋がりがある人はいません。孤児なので」

 フェリシアが申し訳なさそうな顔をする。

 俺の方こそすみません。あなたのことをただの傍若無人女と思ってました。気遣いができるんですね。

「気にしなくていいですよ。物心ついた時からこんな感じなので」

 フェリシアは少し悩んだ様子の後、

「聞いてもいい?今までどうやって生活してたのか」

「いいですよ、別に。って言っても、そんな話すことはないと思いますけど」

 俺は物心ついた時には、とある竜人族の青年に拾われていた。

 それ以前の記憶はないから分からないし、青年もあまり語ろうとしなかった。

 多分、その青年も変わり者だったんだろう。人里離れた奥地に家を建てて、一人で住んでたみたいだから。

 それ以来、俺はその青年と二人で暮らすようになった。たまに生活用品を購入するため、村に立ち寄ることもあったが。

 性格は穏やかですごく優しかった。赤の他人である俺を育ててくれるくらいだし。だから、二人での生活は楽しかった。

 そして、十五歳になる頃、青年はフラッと旅に出た。そして、戻ってくることはなかった。

 村に立ち寄るたびに仕送りが届いたので無事だと思う。彼はフェリシアと比べても遜色ないほど強いので、あまり心配しなかったが。

 ただ寂しいとは感じたな。

 ということを話した。

「そんなわけで、俺の家族はその人を別にしたら、フィンだけですね」

 彼女がある程度過去を話してくれたので、礼儀としてこちらも話した。

「なるほどね。それで独り立ちして、こっちに来たってわけね」

「ってわけです」

 フェリシアがホーッと長い息をついた。

 それから会話がないまま、食事を続ける。

 やばいな。重たい雰囲気になっちまった……後悔するけど、どうにもならない。

 あまり他人と関わってこなかったから、こういう時どうすればいいか分からない。

 食事が終わると、また彼女の方から話しかけてきた。

「これからどうするの?またエリア探索?」

 興味津々な感じだ。おーい。絶対ついて来る気だよ、この人。が、残念だけど、

「全身筋肉痛なんで、今日は部屋で休みます」

「そう。分かったわ」

 フェリシアはやけにあっさりと納得して立ち上がる。

 その様子に疑問符を浮かべながらも俺も立ち上がる。

 食器を返して、二人ともそれぞれの部屋に入っていった。

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