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いずれは最強コンビ  作者: HAL
第一章 美女に絡まれた
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第六話

 熾天使フェリシア。

 相手は、多分誰もが知ってるような有名人。しかも美女。

 その申し出を受けるか否か?

「で、答えは?」

「やめときます」

 たまらなく魅力的な話だったけど、リスクがでかい。入って早々にそんな危ない橋を渡りたくない。

 フェリシアの眼差しが鋭くなる。

「何でよ?そんなにイヤ?」

「イヤじゃないですよ。ただ、俺もまだ死にたくないんで」

 フェリシアは少しの間沈黙する。

「そうね。ちょっと性急すぎたわ。生死に関わることだから、すぐにイエスとはならないわね。じっくり考えてみて」

 今の内容に、さっきの断りがなかったことにされた感があるが、とりあえず頷いておいた。

「そういえば。あんた、初日なんでしょ?」

「ええ、まぁ――って、なんで知ってんですか?」

 今日が俺が天空都市に来た一日目。何とも密度の濃い一日だった。先行きに不安を感じる。ってか、不安しか感じない。

 まぁそれはおいとこう。なぜそれを知ってる?

 フェリシアが何でもないように、

「あの後、本部に用事があったの。そしたら、セシルとばったり会って。で、教えてもらったのよ」

 あの後ってのは、やっぱり死闘のことだよな……

 そっちに触れないよう話題転換を試みる。

「はぁ。セシルさんと知り合いなんですね?」

「そうね。一緒に食事したり、買い物行くくらいは仲いいわよ」

 そうですか。ご友人であらせられましたか。

「それはそうと。あんた、宿はもうとったの?」

「あー、まだです」

 そもそも宿屋がどこかも分からない。居住区のどっかだろうけど。

 探そうと思ってたら、目の前の女に連行されたんだけどさ。

「じゃあ、私のところに来なさい」

「はい?」

 これは、ルームメイトというやつですか?

「私が使ってる宿はまだ部屋が空いてるらしいから。部屋や食事の質は保証できるわ」

 そりゃ、そうですよね。残念な気持ちが湧き上がらなかったといえば嘘になる。

「私と同棲したいなら、手伝ってもらわないとダメよ?」

 彼女は見透かしたかのように笑みを浮かべる。

「へいへい。ただ、諦める気はないんですね?」

「当然」

 見事なまでに言い切られて、嘆息する。

「考えさせてください」

「ええ。命に関わるからね。じっくり考えて、それから『はい』と答えなさい」

 頷きかけて、急停止した。

「どう考えても未来は変わらず?」

「そうね」

 言い切られてしまったよ。

 その後、彼女に案内されて宿屋にたどり着いた。当分、お世話になることが確定してるらしい。

 まぁ、今さら独力で宿を探すのもめんどいから、よしとしよう。ここなら、フィンを連れてても大丈夫らしいし。

「ちょっと待ってなさい。空き部屋について確認しておくから」

 そう言って、女主人のもとへ足を運んだ。そのまま何やら話し合っている。

 受付にいる金髪の女将、狼人族だな。みたところ中年のおばちゃんだ。恰幅のいい体型で、それにふさわしい威厳が感じられる。一家の主的な?

 彼女は、フェリシアの紹介ということで、こちらを時折探るような視線を送ってくる。

「大丈夫みたいよ。ちょうど私の隣の部屋が空いてるって」

「はー、そりゃ助かります」

 ともあれ、フェリシアの助けを借りながら受付を済ませ、フェリシアの隣の部屋を借りれることになった。

 去り際に、「しばらくお邪魔します」と言い残しておいた。

 すると、愛想笑いのような笑みが返ってきた。

「じゃ、女将さん、部屋にはもう水を用意してもらえた?」

「もう終わってるよ!」

 なぜか二人で目配せし合ってる。

 水?何のためだ?まぁいいや。フェリシアのためなんだろう。

 部屋が隣なのは、彼女が露骨な勧誘に――もとい、遊びに来る口実になってしまいそうだけど、そこしか空いてないならしょうがないな。

 そこからは、彼女に案内してもらった。階段上って、三階の部屋だった。

「あっちの角部屋が私の部屋で、ここがあんたの部屋ね」

 フェリシアは角部屋か。いいなぁ。

 フェリシアが俺の部屋の鍵を取り出して、ドアを開ける。開けた後、鍵を渡してくれた。

「なくさないでよ」

「ほい」

 が、フェリシアはそのまま俺の部屋へ入っていく。

 ……なんで?

「どうしたの?早く入ってきなさいよ」

 俺の部屋だよな?一応、俺が主になるはずだよな?首を傾げながらも、これから寝泊りする部屋へ足を踏み入れた。

 広い。

 ベッド。ソファ。本棚。チェスト。テーブルとイス。

 それだけの家具があるのに、まだスペースがある。

 嘘ぉ!?星覇者ってこんないい暮らしができるの?

 感激だよ!これ……

 と、俺の感慨に見向きもせず、フェリシアはとある一室へ入っていった。

 迷いのない様子だから、自分の部屋と同じような間取りなのかね?

「えーと、何を?」

「ここが浴室よ」

 はぁ。部屋に浴槽があるんですか。驚きが冷めないって。

 続いて入ってみると、確かに浴室だった。間違いなく。

「水よ」

 まぁそうだろう。湯気も出てないし。

 ただ、水がどうしたんだ?ま、まさか、色気のある展開か?

「それで――」

 何をするつもりか聞こうと思ったら、途中で止まってしまう。

 彼女の背から、真紅の翼が生えていた。

 いきなり半獣化され、硬直してしまった。呆気にとられる。

 ただ、戦闘時のような熱波は感じられない。威圧するような猛々しさでなく、穏やかで力強い印象だ。

 俺とは違って、半獣化を使いこなしている。内心、感嘆した。

 どうやらさっきの続きを始めようってわけじゃないな。

 いくら何でも部屋の中で戦うなんてあるわけないと思うけど、いきなり半獣化されるとそんな馬鹿げたことまで思い浮かぶ。

 彼女は掌を浴槽に向ける。小さな火球が放たれた。

 劇的な変化が起きる。水が瞬間的に沸騰してお湯になった。

「はい。まだ熱いから、少ししたら入れるわよ」

 ポカンと口を開けた。

 第一印象が最悪だったフェリシアが、優しくなった。これがツンデレ効果ですか?笑顔を見せられるとやられそうだって……

「あ、ありがとうございます」

 感謝の言葉に満足そうに頷く。

「私のパートナーになれば、毎日やってあげる」

 流し目された。

 心が動いたのはしょうがないと思う。

 潔癖ではないけど、風呂に入れるもんなら毎日入りたいし、フィンだって、水よりはお湯で洗ってやりたい。体調崩したら問題だし。

 ま、水だろうと湯だろうと洗おうとしたら、暴れるんだけどさ。

「じゃ、私は部屋に戻るわ」

「あ、はい。おやすみなさい」

 フェリシアが手を振って出て行く。

「おやすみ。また明日ね」

 ドアが閉まる。

 ん?また明日?

 明日も仲間になれって言われ続けるのか?

 ちょっとげんなりしながら、部屋を見渡す。

 まぁとりあえず。せっかくだから、風呂に入ろう。

 散々動き回ったし、汗もかいたし。

 で、風呂に入った。いい湯だった。ちょうどいい湯加減って最高だと思う。

 さて、これからどうするか?今後の方針でも考えるか?主に、フェリシア対策を。

 と思ったけど、疲れたからもう寝よう。

 ベッドに入る。フカフカのベッドですさまじく寝心地がいい。

 すぐに俺は意識を手放した。

 そうして、ハードだった一日はようやく終わりを告げた。

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