早瀬先生は生徒にアッチの意味で食べられちゃうそうです。
「はぁ…、疲れたぁ………」
時計の短針が9の数字を指す頃、私はふらふらとした足取りで帰路についていた。
「明日も仕事あるのか……。はぁ…、休みが欲しいよぉ………」
「癒やしが…、癒やしが欲しい………。愛莉ちゃんに癒されたい……」
「愛莉ちゃん」その名前が脳内に反響する。愛莉ちゃんとは…、私の生徒の内海愛莉ちゃんのことだ。実は彼女と私は大体一ヶ月前から恋人関係となり、いつも毎日私のことを様々な方法で癒してくれていたのだが…。
「んむぅ…、今日は仕事が忙しくて愛莉ちゃんに構ってもらえなかったからかいつもより癒されたいって感情がぁ………」
ここ一ヶ月で最も疲労が溜まった今日に限って仕事のせいで帰れなくて、愛莉ちゃんに癒される時間がなくなっちゃった……。
「はぁ…、全く………。こんなに忙しくて低賃金とかやってられないよなぁ……。でもまぁ、愛莉ちゃんと出会えたから先生やってよかったかもなぁ」
そんなことを呟いていると、いつの間にか私の家に到着していた。
「さっさとシャワー浴びて寝よ…」
そう言って私は自宅のドアを開け、入り、ドアを閉めた…、のと同時に、
「あっ、お帰りなさいっ!!!」
誰も居ないと思っていた私の家から聞きなじみのある声が聞こえた。そして奥からドタドタと足音を立てて現れたのはベージュカラーの髪色をした私の恋人…、内海愛莉だった。
「あれ?今日は私の家に来る予定は無かったと思うんだけど…?」
愛莉ちゃんが一人で私の家に上がっているのは珍しくない。愛莉ちゃんは私が渡した合鍵を持っているし、ここ一週間で2回ぐらいはこんなことがあったからね。
だけど今回みたいに何の連絡もなしに家に上がっているのは初めてだ。
「うん、本当は無かったんだけど先生、今日仕事が忙しくて私とお話しとかできなかったじゃん。それが寂しくて…」
「だからお母さんに友達の家で泊まるって嘘ついて、先生の家まで来ちゃったの!だからねぇ…、今日はお泊まりだよ!」
愛莉ちゃんは子犬のように明るく元気な声で私にそう伝えてきた。さぞかし私の家でお泊まりするのが嬉しいようだ。
「えへへ…、それじゃあ早速いつもの……」
───ぎゅっ。
「えへへ…、先生とってもあったかい……」
「すーーー、はぁーーーーっ」
残業でクタクタになった私は生徒の愛莉ちゃんに力一杯に抱きしめられ、私の匂いを嗅がれていた。
「あはぁ…、先生の匂いさいっこうれすぅ……」
「んっ…、うぅっ……。や、やっぱり吸われるの恥ずかしい………」
ここのところ何度も愛莉ちゃんに吸われているのだが、この何とも言えない感覚に未だ慣れず、先生の私が生徒に翻弄される羽目になってしまっている。
「すぅ…………っ、はぁーーーーーっ」
愛莉ちゃんは蕩けた顔で私の服に顔を何度もぐりぐりと押し当てながら、深い呼吸をしていた。
「こんなの麻薬だよぉ…、うへっ……、しあわせぇ……。これを嗅ぐために今日の学校頑張ったんだぁ…」
「先生の匂いってホント癖になっちゃう…。私の体の中に先生成分がたくさん入っていくぅ……」
「もっと…、もっとちょうだぁい……」
愛莉ちゃんは私を押し倒し、馬乗りになる。私を見下ろすように見てくる愛莉ちゃんの顔は、絶好の獲物を見つけた獣のように見えた。
「ちょ…っ…!ここはっ!」
「えへへぇ…、先生美味しそうですねぇ…」
愛莉ちゃんがこうなってしまったらもう止められない。多分私は玄関で美味しくいただかれてしまうのだろう。だがここで食べられてしまったら色々と後始末とかが大変のため、一か八かで説得した…、のだが……。
「あはっ…、もー無理です。いただきまーす」
結局、私の声は届かなかったようだ。