正直者が馬鹿を…
「ごめんなさいねぇ
突然のことで、貴女も随分と驚かれたのだと思うけれど……」
「はぁ…」
「わたしも長いことこの職についているんだけれど、こんなこと初めてで…」
「そう…ですか……」
そうですよね…長いこと勤めが必要そうですよね…
「ほんとにごめんなさいね、防ごうとはしたのよ?」
「はぁ…どうも…ありがとうございます」
目の前のむっちり巨乳の悩ましげな肢体をお持ちの女性は…神様なんだそうで…・
なんでも、まだ死ぬ予定じゃなかったあたしがうっかり死にそうになったのを見て…
助けようとしたら…手違いでトドメを刺してしまいました…みたいな……
「生死の法則を曲げるのは世界の理に反することだし
無理に貴女を元の世界で生き返らせると、それを綻びに世界が滅びてしまうから
残念だけれども貴女を元の世界で生き返らせてあげることはできないの」
「……そう……ですか……」
「あ!、ごめんなさい?、泣かないで??」
なんだか無性に切なくて遣る瀬無くて、
悪気があったんじゃないって分かってるんだけど、涙は止まらなくて
神様は泣き出したあたしを慰めるために、むぎゅっと抱きしめてくれた……
あの……
胸が…苦しいです……
呼吸が……!
「あっ、ごめんなさい苦しかった?!」
「ぷはっ!、…いえ…あの……大丈夫です」
「そう?」
「はい」
「じゃあ良かったわ、これ以上死んでしまったら大変だものね!」
既に死んでいるのに、これ以上死ぬんですか
しかも大変って、一体どういう…
えぇぇー……
「えっと、そうそう、安心していいわよ!!」
「え?」
「貴女のご家族ね、えー…と
ざっと数えて後50年程で全員天寿を全うされるから
次に彼らが揃って生まれ変わる時を狙って、貴女も生まれればいいわ!」
「はい?」
「貴女のご家族が全員今の家族構成で再び揃うのは、
えー…と、まぁ貴女ついてるわ! たった五億年で揃うわよ!!」
ご、ごおく?
「ただ、ちょっと問題があって
次に揃う世界は、地球と違って、えーっと、何て言うのかしら…ふぁんたじー?
そうファンタジー!! そういう世界だから
ちょっと魔物がいたり魔王がいたりするんだけれど、大丈夫!
わたしに総て任せて!!」
「え、」
「魔王なんか目線で倒せるくらいのオプションをつけておくわ!
世界の覇権を握るくらいの王家に生まれて
顔も国が傾くくらいの美女にしたらどうかしら!
いいわねいいわね、ノってきたわよわたし!!」
え、あの、ちょ、
「あの、いいです、普通で、普通でお願いします!!
平民でいいです、顔も普通でオプション無しで、お願いします普通でっ!」
「まぁぁああああ!!!
なんて奥ゆかしいのっ、いいのよそんな遠慮しないで!
いいわ、うんとサービスしちゃう!
そうね、周りにロマンスをいっぱい配置しましょう!!」
は、配置?!
いやいいです結構ですそんなサービスいらないから!
「隙あらば貴女を狙う美男たち…
ジェイク、デイヴィッド、マーク、アレックス、ニコラス、ブライアン、ロバート
パーカー、スティーブ、フィリップ、エドワード、アラン、エリック、ウィリアム
ショーン、フレッド、クリストファー、デニス、スコット、リチャード、パトリック
スティーヴン、ローランド、グレッグ、やめてみんな!! あたしの為に争わないで!!!
血湧き肉躍る愛のスペクタクルロマンっあぁん素敵ぃぃいい!!!」
ちょ、男随分多いな、ぷち戦争並み?!
じゃなくて!
「ちょ、待ってください、おち、落ち着いてください!!」
「こうしちゃいられないわ!
色々と下準備が必要ねこれは、腕が鳴るわ!!」
「あの、腕鳴らさないでいいので、あたしの話を聞いて下さいっ」
「そうそう、幾らなんでも元地球人の貴女に五億年は長いわね
待っている間に精神が老成してしまうわ、寝て待ちましょう!!」
「え、」
「大丈夫よ、ちゃんと目覚ましをセットしておくから!
あ、因みにわたしは目覚まし130万個必要なの
お寝坊さんなのよ、うふふ、きゃっ恥ずかしい!」
いやあの、え、恥ずかしいっていうか
問題はそこじゃなくて、そのふわふわの雲みたいなの、布団ですかもしかして!!
「心配しないで、眠ったら時間なんか感じないから
あっという間に新しい世界よ!」
「あの、待って下さい、待ってっ」
「期待しててね! さ、お休みなさい」
人の話を聞けぇぇぇええええええええっ!!!
しかし、叫びも虚しくあたしの瞼は防火シャッターのようにピシャリと閉じたのであった!
家族の続柄や血縁かどうかなど気にせず、単純に次に生まれ変わる全員を狙った場所と時間軸に記憶保持した上で転生させれば最短50~70年だとは思うんですが
女神はどうも頭がゆるい感じなのでそこまでは思いつかなかったようです
皆さんはどうですか、こんなゆるい女神…