第2話 草原のネリー
くるくると、ひろい草原に風車が回ります。
草におおわれた風車小屋には、ネリーというちいさな女の子がいました。
ネリーが本を読んでいると、玄関のチャイムが鳴り響きました。
「どなた?」
「わたし、イリスって言います。なでなでさせてください」
イリスは活発そうなお姉さんでした。
ネリーは警戒して、扉を閉めました。
「そう。それでは」
「うそ!?」
ネリーは元気な人が苦手でした。
静かな部屋で、本を読むのを邪魔されるからです。
「ふぅ」
ネリーが自分の部屋で本を読み始めると、窓が開きました。
「ネリーちゃん、話だけでも聞いてよ!」
「いやよ」
「ありがと! 実はね、ネリーちゃんのお父さんに言われてやって来たんだ」
「パパに?」
「そう。今日からここでネリーちゃんのお世話をするよ!」
ネリーは大きくため息をついて、玄関の鍵を開けました。
それから、二人の生活が始まりました。
「ネリーちゃん、なんの本読んでるの?」
「べつに、何でも良いでしょ」
「ネリーちゃん、なでなでさせて」
「嫌」
イリスはネリーにたくさん話しかけました。
しかしネリーはなかなか心を開いてくれませんでした。
ある日、ネリーはしびれを切らして、一人で森の奥に行きました。
風車よりも大きい樹木の間をくぐり抜け、ネリーは川の畔にたどりつきました。
「ここなら、一人で静かに本を読めるわ」
ネリーは石に座って、本を読み始めました。
川のせせらぎはネリーの読書を邪魔しませんでした。
しかし、すこしだけ寂しいなと思いました。
しばらくして、ネリーは家に帰ろうとしました。
「あれ。さっきのところだ」
ネリーは夜の森で迷子になってしまったのです。
ネリーはくらい森の中を歩き続けました。
とうとう動けなくなったとき、遠くからイリスの声がしました。
「ネリー、いるの!?」
「お姉ちゃん!」
「ネリー!」
イリスが走って来て、ネリーはほっとしました。
ネリーはイリスの腕の中で、眠りにつきました。
つぎの日、ネリーが起きるとイリスは朝ご飯を作って待っていました。
「昨日は、ありがとうございます」
「別に、気にしてないよ」
「でも……」
「朝ご飯、冷めちゃううよ」
イリス特製スープは、いつもよりも暖かく感じました。
ご飯が終わって、ネリーは本を読み始めました。
「ネリーちゃん、なでなでさせて」
「しょうがないですね」
「だめかー、って、えぇ!」
「ほら、するなら早くしてください」
「え、あ、う……。し、失礼します」
イリスはネリーの頭に手を置きました。
ネリーは微笑みました。