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【短編小説】幽霊先生

作者: 青いひつじ


幽霊先生。

僕の学校にはなぜかそう呼ばれている先生がいる。



幽霊先生と聞くと、血色が悪くガリガリに痩せ、まるでこの世のものとは思えない見た目なのだろうと想像するかもしれない。

しかし、その先生はあまりにも普通の見た目をしていた。


主張をしない目、鼻、口、黒髪の七三分け。

体型は中肉中背といったところだろうか。

なぜ幽霊先生と呼ばれているのか、それを知ったのは数日前のことだ。



僕は、佐々木の頸にあるホクロをぼんやり見つめていた。佐々木はクラスメイトであり、学校いちの不良の弟である。

視線を感じたのか、ばっと振り返りこちらをじっと睨みつけてきた。

やばいっ。すぐに逸らしたが、わずかに目があった気がした。何も起こりませんように‥‥僕は心の中で唱えた。


「おい佐々木、どこ見てんだ、前向けよー」


担任の浦井先生がそう言うと、佐々木はチッと舌打ちし前を向いた。


あっぶなー。

毛先にしか興味ない隣の女子もさすがに心配するのではというほど心臓が鳴っている。


「なぁ俺らの担任、他の奴らから幽霊先生って呼ばれてんだって」

佐々木が子分の坊主頭に言った。野球部の岡本だ。


「まじ?なんで?」


「放課後1人で話したり笑ったりしてるらしいぜ。霊でも見えんじゃね。気色悪りぃよな」



入学して2ヶ月。僕は時々、みんなが帰った後の教室に残り読書をする。

夕焼け色の教室で何とも言えない気持ちになるのが好きだ。

もちろん、浦井先生を見かけることは何度かあったが、そんな現場に出くわしたことはない。

あだ名のせいで一部の生徒、特に女子達から気味悪がられていたが、とても優しい先生だった。


ある日の放課後、教室で本を読んでいると浦井先生が入ってきた。


「やぁ」


それだけ言うと丸つけを始めた。

僕は黙って本を読み続けた。


キュッ、キュッ。ペンの音が響く。


「学校は楽しいかい?」

浦井先生は優しく微笑んだ。





「ほら、武田先生あれ見て。浦井先生また1人で話してる」

「まるで誰かいるみたいね」







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