97 プール・レクリエーション⑧
何言ってんだコイツ。恋人の体に僕に触れさせようとしているのか。
「駄目だろ! それはちょっと」
「ひより一人で行くな! じゃ、頼むな!」
そのまま通話を切れてしまう。何ということだろうか。
「獅子くん何て言ってた?」
「……。ひよりの相手するから代わりに僕に日焼け止め塗れだってさ」
「後でお説教だね」
「ま、女性陣ももうすぐ帰ってくると思うので」
その時大月さんはラッシュガードを脱いで、水着姿を晒した。思わぬ人の思わぬ行動に慌ててしまう。
「これ以上は無理。小暮くんでいいから塗って!」
「まじかよ」
そんなわけで親友の恋人に日焼け止めローションを塗ることになってしまった。
大月さんはセパレートタイプの水着を着用していた。
さすがにアリサと紬と比べるとセクシーさという面では劣っているかもしれないが飾り気や水着の色合いから可愛らしさが意識した意向となっていた。
獅子の好みを言えば多分こちらの方が良いのだろう。
僕としては……。
「アリサや紬さんと比べてるんでしょ。ふんだ」
「何も言ってませんけど」
大月さんはマットの上で寝転ぶ。確かに日焼けで肌が少しだけ赤くなっていた。
急ぐ気持ち分かる気がする。そうはいっても天敵の男に肌を触らせるかぁ。
「変なとこを触ったら言いふらすからね。アリサに獅子くんに紬さんにひよりちゃん」
「オーバーキルすぎる」
まぁいい。大月さん相手なら邪な感情も湧かないだろう。胸も太ももも足りていない。こんなこと口に出したらぶん殴られるだろうけど。
僕は日焼け止めローションを手に取った。
「手早くやりますね」
「うん、お願い」
さて、日焼け止め塗るのも三人目。慣れてきたと言ってもいい。
大月さんも昨日遅くまで弁当を作ってたみたいだし、そこに関しては感謝している。
僕の手技で気持ちよくさせてあげよう。
大月さんの背中に指を押し付ける。
「はぅっ!」
「だいぶ背中が張ってますね。ちゃんとマッサージしないと体に悪いですよ」
「アリサや獅子くんにはしてあげるけど……自分には余り」
そうか。僕も部活で疲れた獅子に整体マッサージをよくしてあげるけど、自分でしたことはなかった。
やるばっかでやられることはない。そういうことだろう。なら今回は僕が労ってあげよう。サービスだ。
「よし、僕が本気で気持ちよくさせてあげましょう」
「ちょっと待って! 普通でいい。ああぁんっ!」
大月さんの口から出たとは思えない。甲高い声が響いた。
大月さんもびっくりしたのか口を手で押さえていた。
続きを行う。大月さんの腰を指圧していく。
「ちょ、小暮くん。やぁん……、うぅん、あぁん」
「変な声出すのやめてくれませんか」
「ち、ちがっ! んっ!」
「ふふふ、気持ちいいでしょう。マッサージには自信あるんですよ」
「気持ちよくないし! 小暮くんのなんて大したことないもん。絶対耐えれるから」
「なんだと。なら準備運動は終わりです。本気でやらせてもらいましょうか」
「これが準備運動!? た、耐えてみせるもん」
大月さんの疲れた足にじっくりと力を入れて、ツボを刺激する。
「うぅーーっ! やぁっーー!」
我慢しながらも声が出るのを止められないか。
まいりましたと言わせてやる。今日一日この僕を侮りまくっていたことを後悔させてやるわ。
「やめ、だめっ! わたしには獅子くんがいるのにぃぃ……、我慢しなきゃ……」
「なんかNTRを想定しそうな言葉使うの止めてくれませんか。そんな気一切ないので」
全身に日焼け止めローションを塗った。あとは肩口をほぐせばフィニッシュだ。
「はぁ……はぁ……」
大月さんは表情は紅潮し、息も荒くなってきた。体温が上がっている証拠だ。
一気にトドメを刺してやる。
僕は大月さんの肩のコリをを思いっきりつく。
「ああっ! ダメェ……いやぁ! 無理ぃぃ」
「ふはははは! ついに敗北を認めましたね。僕の勝ちです」
「うぅ……獅子くん、わたし屈っしちゃったよ」
「まったく無駄な抵抗しやがって。これからいっぱい気持ちよくさせてやるからな」
「わたし、汚されちゃう」
「いやいや汚すって何を」
「ねぇ、涼真。何をやってるのかしら」
どきんと胸が響いた。嫌な予感がして振り返るとアリサと紬がいて、二人の瞳にライトが消えていた。
「雫ちゃんに乱暴しているように見えるけどどういうことなのかなぁ」
「乱暴!? 違うって」
「私や紬には大したことしないくせに彼氏持ちの雫に手を出すんだ。随分お楽しみだったようじゃない。次は何をするつもり?」
「普通のマッサージだよ! 確かに僕も気持ちが高揚してたけど、これは大月さんが僕に挑戦状を叩きつけ…」
アリサと紬が大月さんを見る。
「小暮くんにめちゃくちゃされた」
「コイツっ!」
「雫に手を出すものは何ぴたりとも許されないわ」
大月さんラブのアリサはだめだ。説得するなら紬か。僕は紬を懇願するように見る。
でも紬の表情は僕を敵視していた。
「雫ちゃんはね。女子に嫌われまくるわたしに友達と言って微笑みかけてくれたの。そんな雫ちゃんは世界一の優しい女神なんだよ。雫たんは可愛い」
くっそ、すでに紬は懐柔済みだったか!
二人はローションまみれの手で僕に迫ってくる。
「涼真、お仕置きの時間だわ」
「わたし達にやったみたいローションまみれにしてあげる」
「ちょっと待つんだアリサ、紬! う、うわぁぁあああああああ!」
お仕置きという話だったが美少女達に全身弄られて、正直興奮したのは言うまでもないことである。