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92 プール・レクリエーション③

「紬、良い顔になったよね。紬のやりたいこと、僕も応援するから」

「あ、ありがとう。もう、何か照れちゃうよ!」


 ちょっとクサかっただろうか。紬が空気に耐えられなかったのか顔を赤くしながらも大声を上げた。


 しかし大月さんもアリサもいないな。二人はまだ来てないのか。


「アリサと大月さんは?」

「アリサちゃんはお化粧直ししてる。雫ちゃんはここにいるよ」


 どこだ? っと思ったら

 紬の後ろで小さく隠れている女の子がいた。そんな所にいたのか。

 紬は振り返って、大月さんの両肩を掴んで表に持ってこさせた。


「ほ~ら、雫ちゃん」

「まって紬さん! いきなりは恥ずかしいっ!」


「おおおおおおおっ!」


 獅子リアクションでっか。

 そこに現れたのはギャル風ファッションに身を包んだ大月さんだった。

 普段の地味な髪型でも彼氏を惑わす大人びた髪型でもない。

 やってみました感のあるギャルの格好だ。

 栗色の髪に色付きのエクステで彩っており、服装も肩だし、露出多めのミニスカートだ。

 ちゃんとネイルまでしてるじゃないか。


「やっべ、マジで可愛い。雫、可愛すぎだろ!」

「ちょっと獅子くん褒めすぎっ。アリサや紬ちゃんに比べたらわたしなんて」

「そんなことねぇって。俺、やっぱり雫の彼氏で良かったよ。恋人が世界一可愛いんだもんな」

「……もう、ありがと」


 大月さんが褒められまくってメスの顔してんな。

 獅子が喜んでるなら提案して良かったのかもしれない。

 うんうんと思っていあたら大月さんが睨んできた。


「やってくれたね小暮くん」

「何のことですかねぇ」


「白々しい。獅子くんがギャルのわたしを見たいなんて言うから変だと思ったけど小暮くんの差し金なんだね」

「いいじゃないですか可愛いって言ってもらえたんですし。僕も可愛いと思いますよ。可愛い、可愛い」


「はぁん」

「鼻で笑うの止めてくださいよ」


「今度は小暮くんにすごい格好させるから。王子様系とかバンク系とか」

「僕のそんな姿、誰が喜ぶんですか」


「大丈夫。アリサと紬さんだけは喜ぶよ。わたしは小暮くんが恥辱な顔で苦しんでる所が見れればいい」

「性格悪っ!」


 大月さんと話すと延々とこんな会話をしてしまいそうなのでここで打ち切ることにした。


「雫かわいい」

「ありがとうひよりちゃん!」


 そして大月さんとひより。

 ちょっと前にひよりと散歩していたら獅子の家に行くと大月さんとばったり会ったんだよな。

 獅子を好きな者同士バチバチになるのかと思いきや、大月さんは得意のトークでひよりの信頼を勝ち取ってしまった。

 それから年齢差があるのに友達のように仲良しとなってしまった。

 何で世の中は大月さんに良い感じに進むんだろうか。


 さてと……僕としてやはりアリサの姿が一番待ち遠しい。

 制服姿も寝間着の姿もどんな格好をしていてもアリサは可憐で美しい。

 そんな彼女の清楚な姿、いったいどんな感じなのだろう。


「アリサ遅いね。もういい時間だと思うけど」

「アリサちゃんあの格好だから」


 嫌な予感がして僕は掛けだした。この駅のトイレは大広場を突っ切らないといけない。

 いつものアリサなら見た目だけで気が強い子って分かるけどもしかしたら今日は……。


 広場へ出てすぐに、見知らぬ男性に腕を捕まれているアリサの姿があった。

 僕の頭の中に強い感情が籠もる。気付けば大急ぎで掛けだしていて、もう片方のアリサの腕を掴んだ。


「僕のアリサに何か用ですか?」

「涼真!?」


 自分でも分かるくらい敵意の込めた言葉だった。

 でもその男性はサラリーマンくらいの年齢の人で驚いた表情をしていた。


「涼真違うの! 私、慣れない靴で転んじゃって……この人が助けてくれたの」

「え」


 まさか僕はとんでもない間違えをしてしまったのかもしれない。

 夏の暑さ以上に汗が噴き出す。

 この男性は何にも悪くなかった。


「ご、ごめんなさい!」

「ああ、いいんだ。彼氏が来たようだし、私は行くよ。気をつけてね」


 落ち着いたサラリーマンの男性は去ってしまった。

 ああ! 僕は何てバカなことをしてしまったんだ。 穴があったら入りたいってのはこういうのを指すんだろうな。

 アリサにきっと笑われる。そう思って視線をアリサに向けたら……のぼせているように顔を赤らめていた。


「アリサ、どうしたの?」

「言った」

「へ?」

「僕のアリサって……」


 さらに爆弾発言をしていたことに気付く。

 僕の親友に何か用ですかって言おうと思ったのになぜか僕のアリサに変わってしまっていた。


 慌てて訂正を……。

 でもアリサはじっと僕を見ていた。

 彼女との関係はこれまでのやりとりで深く進んでいる。僕だってアリサと一緒に過ごす今の時間がとても楽しい。

 だったら言うべき言葉、そしてアリサが求めてそうな言葉はこれじゃないだろうか。

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしいし、口が震えるけど僕は言い切った。


「違うの?」


 アリサの目が見開く、そして頬を緩ませて、コクンと頷いた。


「違わない」

「じゃあ……みんなの所に行こうか」


 言ってしまった。僕が絶対言わないと思ってたことを叫んでしまった。

 そして今もアリサの腕を掴んだまま歩いている。さっき転んだと言っていたから出来るかぎりゆっくり。

 そうだ。もう一つ言わなきゃいけない。

 僕は振り返るとアリサはぴくりとした。


 アリサが今日、来ている服は普段着ない深窓の令嬢のような服装。

 海外のお嬢様が着るようなお洒落なジャンパースカート。半袖白のブラウスは高級感に溢れていて、まさに英国のお嬢様がお忍びでやってきたという感じだろう。

 おしとやかな振る舞いがとても綺麗で見惚れてしまいそうだ。


 もう一度クサイセリフを吐きます。でも僕の希望を叶えてくれたアリサに対する僕の率直の気持ちだから。


「本当にお嬢様みたいな格好だね。深窓の令嬢っぽいよ」

「え? うん、私らしくないかもしれないけど……たまにはこういうのもいいのかなって。どうかな。やっぱり似合ってないかな

「とても良く似合ってるよ」


 僕は一呼吸を置く。


「アリサはどんな服装も似合ってるし、いつも綺麗だ。……嬉しいよ」

「っ! もう……そんな照れるようなこと言わないで。……ありがと」


 再び僕はアリサを連れて、みんなの元へ歩き出した。

 言葉を話せないほど僕達は照れが限界を迎えていたのかもしれない。


 みんなと合流。


「涼真と朝比奈。顔が赤すぎだぞ。熱中症かぁ?」

「……」

「……」

「これはこれはかな?」

「これはこれはだねぇ」


 ちっ、大月さんと紬は面白そうな顔をして言ってくる。

 何があったかは絶対に言いたくない。


「ふわぁ。おねーさんとっても綺麗。今日もお姫様みたい」

「ひよりちゃん! ありがとう、嬉しい!」


 ひよりが上手く場の空気を変えてくれようだ。

 エンジェルブレスかな。


「雫、紬ちゃん! おねーさんとっても綺麗だよね」

「え……二人ともひよりちゃんに名前で呼ばれてるの?」


「そうだよ。だって一緒に住んでるし」

「わたしは一応親しいお友達だから」


「私もひよりちゃんに名前で呼ばれたい! ひよりちゃん、アリサお姉ちゃんって呼んで」

「アリヒャおねーさん」

「きゃああ、舌っ足らずで可愛いっ! しゅきぃぃ」


「電車来るし、とりあえず行こうか」

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