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90 プール・レクリエーション①

 紬が中心となった学校での一騒動が終わりを迎え、健やかな日常が戻ってきた。

 紬は完全に調子を取り戻し、元来の強い心を取り戻したようだ。

 僕の知らない所でバチバチやった所もあったようだけどアリサと上手くやり過ごしたと聞いている。


 そして紬は誘われていたチア部へ入部した。

 臆せず、本音を言えるようになり真剣に練習を行っているようだ。

 この前練習を見せてもらったけど一生懸命笑顔で演技をする紬の姿はとても輝いているように思えた。


 さらに。


「ねぇ涼真。見てみて、これ!」


 休み時間、紬が僕の机の前にやってきて、ばっと手の甲を見せてきた。

 白くて綺麗な肌だななんて思っていたら煌びやかに色づいた付け爪が見えたのだ。


「ヤバクない! 絵理ちゃんと真理恵ちゃんにやってもらったの!」


 アリサが一番良く話しているグループ、そこにはギャルが2人いる。

 以前紬は二人に苦手意識があったらしいが積極的に関わっているようだ。

 アリサ曰く、良い友達と言っていたからきっと気の良い子達なんだろう。ちなみに僕と接点はないので話すことはない。


「チアしてる時は付けられないけど付け爪見てるだけでテンアゲって言うか~」

「紬、楽しそうだね」

「今、とても楽しいよ! 涼真とアリサちゃんのおかげだね」


 紬の楽しそうな姿にほっこりしそうだ。

 しかし。

 何だか服装が少し際どくなってる気がする。

 制服のスカートの丈が短くなってるし、制服の胸当てを外してるせいかつい視線がそちらに……。

 活発な性格だけど服装は清楚で真面目な格好が多かった紬がはじけたようになっているのだ。


 何よりも気になるのは言葉だろうか。


「紬、行くよ!」

「うん! じゃね涼真。とりま、声かけるから」


 幼馴染みがギャル化してる件!

 その内あの綺麗な黒髪に色が入るんじゃなかろうか。いや、楽しそうだからいいんだけどね!


 その日の夜、家事代行のお仕事を終え、日も変わりそうな時刻だった。


「ひよりったら幼稚園の友達が多くて、家に遊びに連れてくるもんだから大変だよ。完全に僕が作るお菓子目当てなんだよなぁ」

「涼真の作るお菓子美味しいからね」

「あんまり食べ過ぎると虫歯になっちゃからなぁ」

「え~、大丈夫だよぉ」


 ここ最近、毎晩寝る前にアリサとオンライン通話をしている。

 今回の紬の一件からさらにアリサとの交友関係が深まったからだろう。

 家事代行の時にいっぱいお話してるのにまだ話をしたくなるなんて……本当に。


「……」

「どうしたの涼真?」

「前も言ったんだけど……あのね」

「さっきから涼真の視線が上下に動いてることと関係ある?」

「あるけど言わないで!」


 オンライン通話、初めは声だけだったんだけどアリサが顔を見てお話したいと言い出したので今はお互いの顔を写しながら通話をしている。

 僕もアリサも寝間着姿。そして季節は夏。

 つまりアリサはものすごくラフな格好で通話をしているのだ。学校一の美少女が豊満な胸元を見せつけながら通話をしてるんだ。意識しないはずがない。

 何度も言った。気をつけてと! でもアリサは決してやめなかった。


「えー。だって暑いんだもん。涼真は分からないと思うけど胸が大きいとほんと困ること多いのよ。紬だって小さくなってほしーって良く言ってるし」


 アリサほどでないにしても紬も十分大きいもんな。


「だから風通ししないと湿疹とか出来ちゃうの。だからほらほらっ」


 アリサはひらひらと胸元をちらりと見せてくる。

 録画とスクショしてぇっ! でもそれは人としてやっていけないような気がする。


「下着見えちゃうよ」

「……いいし。涼真に見られていいやつ付けてるから」


 小声だったから聞こえてないと思ったかもしれないが僕の聴力を嘗めてはいけない。

 だけど聞こえなかったことにしよう。それがいい。あ、ピンク色が見えた。ダメだってば。

 話題を変えてやり過ごすか。


「えっと、今度みんなでプール行くよね! あ~楽しみだ」

「随分と唐突に話題変えたわね。うん、私も楽しみ。ひよりちゃんに涼真、雫に紬もいるしね」

「獅子もいるからね。男が僕だけになっちゃう」


 アリサと獅子の関係は相も変わらずだ。


「いいよ」

「え?」

「男なんて涼真だけでいい。私が仲良くしたい男の子なんて涼真だけなんだから」


 何という破壊力。嬉しさと恥ずかしさと他の口に出せない感情がいっぱい渦巻いているようだ。

 間違いなく嫌な気持ちは一切無い。アリサに言われたことがこの上なく嬉しい。


「静流さんが聞いたら悲しむよ」

「静流は兄だからいいの。家族は別。……夏休みに入ったら泊まりに来てよ。ひよりちゃん連れてきてもいいから、もっと夜更かししていっぱい話したいなぁ」

「……うん。朝は僕が美味しいご飯作ってあげる」

「やったっ! 約束よ」


 時刻が日を超えそうになってきた。

 時間でちゃんと区切らないとお互い永遠に話してしまいそうだったから。

 僕とアリサの間で話題は一切尽きることがない。まるで幼馴染みのようにずっと話すことができるのだ。

 多分だけど僕はアリサを獅子と喋っているように感じ、アリサもまた僕を大月さんと喋っているように感じてるんじゃないかと思う。

 仲良くなってまだそんなに経ってないのに10年以上も一緒にいたような感覚。

 それだけじゃない。

 アリサと話せば話すほど……彼女が魅力的に思えてくる。

 その素晴らしい容姿を通して、その美しくも凜々しいアリサの心に惹かれていく。


「涼真……涼真!」

「な、な、な、何!?」

「呆けてどうしたの? じっと私を見てたみたいだけど。まさか」

「え?」


 アリサは胸元を片手で隠した。


「そんなにじっと見ていいとこじゃないの」

「違うよ!まぁ……」


 心という意味では部位は間違ってないのかもしれない。


「それでどうしたの?」

「ちゃんと聞いてよね。今度みんなでプール行く時……どんな格好で来て欲しい?」

「格好かぁ。水着ってことかな。その……」


 正直アリサなら何でも似合う気がするけど、そりゃ求めてしまうのはその豊かな体を包み込む。


「水着はもう買ってるから違う」


 それは残念……。さっきも思った通りどんなアリサも似合ってるからね。


「涼真は何を考えて、何を言い訳してるのか見えてる気がする」

「見透かさないで……」

「一応男の子が喜びそうなのは選んだつもりだから。えっと……あくまで雫や紬と相談して一番似合ってそうなのだからね! 勘違いしないでね」

「分かってるよ!」


 でもその言葉を僕のために選んだと同義だと思う。

 違うと意識したくても顔が赤くなってしまう。


「私が聞きたいのは行き帰りの服装よ。いつもは自分で決めてるんだけど誰かの要望に添って考えるのも楽しいかなって」

「そういう話か」

「冬物とかは辞めてね。あとは羞恥を楽しむような服は……。涼真がどうしてもって言うなら考えてもいいけど」

「夜だからって寝ぼけないでね。アリサに着てもらいたい服かぁ」


 水着もそうだけど何着たって似合うのは分かっている。

 アリサは女子グループのギャルの影響で体のラインを生かした服を着ることが多い。

 この前遊びに行った時もそうだったし、大月さんや獅子と遊びに行った時なんかも普通の人なら絶対着られないような格好だったしなぁ。

 制服以外でスカートを掃いているイメージもない。

 だったらこれかな。


「清楚なお嬢様……みたいな格好はどうかな?」

「せ、清楚?」

「うん、初めて会った時ひよりがお姫様みたいって言ってたじゃないか。お姫様は無理にしてもお嬢様はありじゃないかなって。ロングスカートの深窓の令嬢……良くないな?」

「ふーん、深窓の令嬢。それが涼真の性癖なんだ」

「性癖って言い方は止めて」


 どうしてそっち方向になるのかなぁ。

 金色の髪をしたアリサがそういう服を着たらどうなるのか。凄く興味がある。


「うーん」


 アリサはスマホを持ったままベッドの上でごろり動き続ける。

 ダブルベッドだからとても広いなぁ。僕の視線は揺れ動く胸元に行ってしまうのは本当にクズ野郎だなって感じてしまう。

 でも無防備なアリサも悪いでしょ。


「分かった。ちょっと考えてみる」

「うん、楽しみにしてるよ」

「……涼真ってそっち系の服の方が好みだった?」


 突然の質問、僕は自然と言葉が出てきた。


「服装の好みは特にないよ。正直誰が着てるかが大事だと思うし。どんな服でもアリサが着ればきっとすごく綺麗なんだろうなって思うんだ。だからそのジャンルの服が好きなんじゃなくて、そのジャンルの服を着たアリサが好きなんだと思う」

「ふえっ!」


 オタクのように好きな事に対して饒舌になった僕。アリサの顔が赤く染まる理由をその時は分かっていなかった。

 両手でスマホにかじりついて何だろうと思ってたけど、視線はやっぱり腕で押しつぶされて深い谷間になった胸元にしかいかない。


「私、頑張るから! 涼真の好きな深窓の令嬢になれるように頑張るから! お、お休みなさい。じゃあね!」


 そのままプチンと通話が切られてしまった。

 おかしいな。胸を見ていたらいつのまにか話が終わってしまっていた。

 はぁとため息をついて、僕はスマホをベッドに置く。

 するとスマホが振動し着信音が鳴った。


「なんだ?」


 ラインの通知が来ていたようだ。

 大月さんからのコメントか。


『深窓の令嬢好きだんて小暮くんってほんとフェチだねぇ』


 何でもう知ってるんだよ。

 通話切って速攻アリサは大月さんに連絡したに違いない。


「……」


 それは良いんだけど何だか腹が経つな。

 大月さんにやられっぱなしな気がするし僕も意表返しをしたい。

 僕はスマホをいじってあいつに通話を送った。


「ああ遅くにごめんね。まだ寝てなかった? ねぇ獅子」


 通話の相手は幼馴染みの平沢獅子だ。


「今度みんなでプール行くよね。明日でもいいから事前に大月さんに言ってほしいんだ。ある格好で来てほしいって。え? 大丈夫だよ。ああ見えて獅子のお願いは聞こうとする子だと思うから。獅子だって見たいでしょ。彼女が普段着ないようなあの格好。うん、宜しくね!」


 それだけ言って通話を切る。

 さて楽しみだな。獅子に頼まれてあの格好をする大月さんをいじってやろ。


 そして6人で遊ぶ日となる。

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