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84 頼りになる親友②

「アリサ……そうはっきり言われると傷つくんだけど」

「なんでそんなことになったんですか」

「心は最近気付いたみたいだけど、正直昔からよ。心は男子と仲が良すぎること。あと見た目とスポーツでナチュラルにマウント取ってくるのが相当嫌われてるわ。コミュ力なさ過ぎするのよ」

「あたしってほらこういう性格だから女子よりも男子の方が仲良くなりやすいのよね。女子のあの特有の何て言うか……苦手なの。だから高校入ってから全然なじめなくて」


 紬も同じ事で詰め寄られていた気がする。

 でも水原さんはけろっとしてるし何か秘策があるんだろうか。


「僕の幼馴染みが同じ目に遭って塞ぎ込んでいるんです。どうすればいいと思いますか。水原さんはどうやって乗り越えたんですか」


 水原さんがちらりとアリサを見た。


「あたしにはアリサと雫がいたからね。二人が側にいてくれるなら同性から嫌われても問題なかった。あたしの友達ってその二人だけだから」

「私と雫はこの子がこういう性格って分かっているから問題ないの。だから紬に対しても悪い印象はないわ」

「なるほど。紬の幼馴染は僕や獅子で男子。そりゃ理解できないわけです」

「だけど高校が別になったから心ったら毎日私と雫に電話してきたのよ。やっていけない、雫助けてってね」

「側を離れてから分かるもんだねぇ。水泳部でもみんなから嫌われるしさ。だってみんな泳ぐの下手だもん」


 ケタケタと笑う所を見て、うん何とか嫌われる要因が分かった気がした、


「アリサと雫がいない所にお兄ちゃんが寄り添ってくれたの。凄く優しくて……小さい頃から知ってるはずなのにときめいた」


 そういう話だったのか。水原さんも人間関係で苦労してたんだな。

 多分静流さんも水原さんの性格を分かっていたんだろう。

 構っている内に二人は親密になって……そんな感じだろうか。


「だからその紬って子も彼氏を作ればいいと思う。そしたら同性のやっかみなんて気にならなくなるわ。その子と一番仲良い男子って誰なの? その子も相当可愛いんでしょ。じゃあ余裕じゃない」

「……幼馴染みの関係なら僕かな」

「じゃあ小暮っちが付き合って守ってあげなさい」

「それはダメっ!」


 アリサが大声を上げ、立ち上がった。


「涼真はダメっ! 絶対……絶対!」

「何で?」

「そ、それは……その……」


 アリサは戸惑ったように僕と水原さんを交互に見る。

 ただ正直付き合ったからと言ってどうにかなる問題ではない。

 僕がそう軽々しく付き合ってしまったらいろいろな人達に立てた誓いはなんだったのか。


「ちょっとお手洗い行ってくる!」


 アリサは逃げるように去ってしまった。

 うーん、この状況どうしたものか。


「よいっしょ」


 水原さんが突然立ち上がり、アリサがいない、僕の隣に座る。そしてぐいっと顔近づけてきた。

 アリサに匹敵する美少女に近寄られて意識しないはずがない。

 この人、確かに紬に似ているのかもしれない。男との距離感がもう……ね。


「雫から聞いたんだけど……。小暮っちはアリサの気持ち分かってるんでしょ」

「まぁ……。本人から聞いたわけではないので違う可能性もありますけど」

「ないでしょ。あたし、あんなアリサを見たことないもの。小暮っちのこと相当好きじゃないとあんな態度取らないよ」

「やめてください。好かれるのに慣れてないんです……」

「ほんと小暮っちって雫に似てるね。雫にイケメン彼氏のこと聞いてみたら同じ感じで照れたよ」


 獅子は大月さんに相当惚れ込んでるからな。

 大月さん的には嬉しい反面恥ずかしいっていう感情、僕にはよく分かる。

 今だって正直嬉しいけど……やっぱり恥ずかしさもある。


「お兄ちゃんと付き合った時、やっぱり雫に申し訳ない気持ちはあったんだ。このまま雫とぎくしゃくしたら嫌だなって。それでアリサに困らせてしまって……悪かったと思ってる」

「水原さん」

「それでもお兄ちゃんのことを好きになったから。でも今は雫も幸せになったって聞いて本当に良かった。だからあたしね、アリサにも幸せになって欲しいかな」

「意外というか水原さんってマイペースなイメージがありましたけど、大月さんとアリサに強い想いがあるんですね」

「そりゃそうだよ。あたしって実はメンタルは強い方じゃないんだよね。だからすぐ落ち込むし、嫌われるのはやっぱり嫌。その子もそうじゃない? 小暮っちもマイペースな子は鋼のメンタルって思ってない?」


 そうかもしれない。

 僕は昔の印象から紬はメンタルの強い子だと思っていたけど……そうじゃなかったら?

 アリサや獅子は親友以外からの攻撃には鋼のようなメンタルを持っている。絶対に折れないし、反撃もする。

 僕や大月さんは恐らく人並みだろう。だけどここぞって時には強いメンタルを発揮する。

 紬は水原さんは一見メンタル強そうに見えるけど……実際はかなり脆い。


「どうすればいいんですか。紬はどうすればいつもの紬に戻ってくれるんでしょう」


 水原さんは一度頷いて笑った。


「メンタル弱いのはどうにもならないから、自分らしくで行くしかないと思う。コミュ症なのに下手に混ざろうとするから嫌われて、傷ついて、落ち込むんだよ」

「自分らしく……」

「その子の側には小暮っちや雫の彼氏が幼馴染みとしているんでしょ。それにアリサや雫が側にいる。それを分からせてやるしかないんじゃないかな」


 なるほどね。水原さんの言うことは最もだ。

 紬は今一人だと思っている。だから閉じこもってしまっているんだ。でもそれは仕方ない。十年間、僕達は別れて暮らしていたのだから。

 だったら何ができるか。道筋が見えてきた気がする。


「ありがとうございます。水原さん」

「良いって。それより何か固いよね小暮っちって。そんな敬語口調じゃなくてもっとフランクに行こうよ。あたしのこと心って呼んでくれてもいいし」


 めっちゃぐいぐい来る。

 こういうことを他の男子にむやみにするから好かれて、同性から嫌われるんだろうな。このあたりはもう天性のものなんだろう。

 さて……と思ったら渋い顔をするアリサが近づいてきた。


「随分と仲良くなったわね。二人とも」

「ね~。涼真っち」


 名前で呼ばれた!?


「私がいない所で何してたの! まったく心はほんと」

「何もしてないって。涼真っちって言葉使いが固いからもっとほぐした方がいいって。あたしのこと心って呼んでみて」

「ダメよ」


 ぴしゃりと遮ったのはアリサの声だった。


「前も言ったよね。涼真が女の子相手に丁寧口調じゃないのは私だけ。私以外の女の子には丁寧語口調で名字で呼ばなきゃ駄目。忘れたのかな?」

「はい、ごめんなさい」

「なるほどツンデレが恋をするとヤンデレになるなるのかー」


 アリサのその目力に僕は従うしかなかった。

 さて、帰ったら早速準備を始めよう。

 紬のために出来る僕の全力だ。

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