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83 頼りになる親友達①

「そんなことがあったのね。まさか私がいない時を狙ってくるなんて。しかも雫にまで迷惑をかけて……絶対許せない」

「アリサにとって大月さんが一番だもんなぁ」


 その日の夜、家事代行の日ではなかったため僕は自宅でアリサと通話をしていた。

 今日会ったことについてアリサに相談する必要があったのだ。


 帰ってきてすぐに紬は部屋に閉じこもってしまい、僕やひよりの声も通らなくなってしまった。

 幼馴染の危機に僕は何て声をかけてあげるべきなのか分からなかった。

 結局、アリサに話を聞いてもらう選択肢を取ることになる


「紬の気持ちが分からないんだ。僕のイメージの紬は獅子に真っ向勝負を挑むような強きでマイペースと天然で皆を振り回す女の子のイメージなんだよ」

「そこは何となく分かるわ。でもそんな強さは見られない。涼真と別れた十年で変わってしまったとこよね」

「アリサはどう思う? 同性だったら何か分からないかな」

「ふぅ、残念だけど私には分からないわ。紬と私じゃ性格が違いすぎるもの。もちろん雫ともね」

「だよねぇ」


 アリサがあんな風に詰め寄られることは想像できない。

 その美貌がある以上やっかみはゼロではなかったと思うけど、女子間のコミュ力が強すぎるのであんな感じで責められることはほぼないのだろう。

 あの女子達もアリサと敵対するのは避けてたみたいだし。


 だけどこうなってしまった以上、時間が解決するなんて考えはしたくない。


「紬は僕の幼馴染だから。放っておくことなんて絶対できない」

「うん、涼真はそういう人だもんね。分かってる」


 紬の笑顔を取り戻すためなら何だってやってみせる。

 何かとっかかりさえつかめれば……。やはり根気よく話すしかないのか。


「一人だけ適切なアドバイスをくれそうな人を知ってる」

「え!」


 まさかの言葉に大きな声をあげてしまう。

 僕はアリサの言葉を待った。


「ただ、気まぐれな子だから……いいアドバイスもらえないかもだけど会ってみる?」

「もちろん!」


 アリサの提案に僕は乗るしか無かった。


 休日となり、アリサと僕は待ち合わせをしてその人の元へ向かう。

 紬はあれから学校へ行けていない。食欲も減っており、見て分かるくらいに落ち込んでいた。

 心配したひよりには無理した笑顔を見せているけど僕に対しては少し遠慮がちで距離を置くようになってしまっていた。

 僕には知られたくなかったのになと……一言呟いたことを知っている。


「アリサ」

「おはよ~」


 隣町で駅前でアリサと待ち合わせることになる。

 気分は晴れないのに制服ではないアリサを見かけると思わずその容姿の良さにドキリとしてしまう。

 通りがかる人達が皆、びっくりしたように見るんだもんな。あんなに綺麗な金色の髪と整った顔立ちの女の子をそう見ることはないのだろう。

 そんな子と親友であることの凄さ。外で会うから実感する。

 アリサは緩めた表情のまま僕に近づいてきた。警戒心の欠片もない柔らかな笑顔。正直安心てしまった。

 以前遊びに行った時に比べれば今日の格好はおとなしめだ。落ち着いた色合いのシャツにすらりとしたパンツ。

 アリサって制服を覗けばスカートを掃いてる所見たことないんだよな。

 性格的に可愛らしい服とか清楚系は似合わないと思っているのかも。


「行きましょ」


 今の紬の様子を話しながら目的地へと歩いていく。

 アリサの語るその人物とはいったいどんな人なんだろうか。アリサは同性の交友関係は広いと思うし正直想像ができない。

 待ち合わせ場所のチェーン店のカフェの扉を開いてアリサの名前を呼ぶ声を聞いた時、それが誰か分かってしまった。


「早かったわね」

「う~ん。早出しちゃったからね。お、小暮っちもお久しぶり」

「……水原さん」


 水原心。アリサと大月さんの幼馴染の子だ。

 僕とも一度だけ面識がある。あの時はまだアリサとも知り合った頃だっけ。


「お互い名前は上がるのに、こうやって会うのは2回目だもんね」

「そうですね。僕のことはアリサや大月さんからですか?」


「それとお兄ちゃんから」

「お兄ちゃん?」

「静流のことよ。心は兄がいないから、昔から静流を兄のように慕っているのよ」

「アリサはお兄ちゃんって言わないのに?」

「何で言う必要があるのよ。静流は静流。一つしか歳も変わらないし、顔も似てるからあんま兄って感じがしないのよね」


 あの喧嘩混じりの仲の良さはなんとも、正直双子だと言っても納得してしまいそうだ。

 僕は長椅子の奥に座り、アリサがその隣に座った。向かいに座る水原さんが先に飲んでたアイスコーヒーを一度口に含む。


「へぇ……話に聞いてたけど。ふーん」

「なによ」


 水原さんがちらっと僕とアリサを見る。


「アリサが男の子の隣に当然のように座るんだもん。もしかしてお邪魔だったかな?」

「なっ!」


 アリサが顔をかぁっと赤くさせる。僕もその意図が分かっているので表情を悟られたないように踏ん張った。


「そ、そういう関係じゃ……。別にいいでしょ! 涼真とは親友なんだから、バカなこと言わないで!」

「この前と聞いた言葉は同じなのに何か感情籠もってるね~」


 初めて会った時にも水原さんから揶揄われた記憶がある。


「私達のことはいいの! それで相談乗ってくれるのよね」


 水原さんが僕を見た。


「小暮っちには借りもあるしね。小暮っち、あたし達の三人の仲を取り持ってくれたこと本当にありがと」


 水原さんが静流さんと付き合ったことから始まった拗れた幼馴染みの関係。

 今は良好の関係だと聞いている。水原さんがこう言うんだ。僕の想像以上に拗れていたんだろうな。


「それで小暮っちの幼馴染みのことだよね」

「はい。でもアリサ。水原さんに相談したのって何か意図があるのかな。水原さんと紬って性格も結構違うように思うけど」

「似てるわよ。心と紬はね。男の子には分からないかもしれないけど」

「へ?」

「心もそうなの。昔から女子にぶっちぎりで嫌われてるの」


 そうだったのか。全然そうに思えない。人懐っこそうだし、元気もあるし、美人でスタイルも良くて、スポーツで成果を出して。あれ? 紬と合致するな。



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