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81 紬の危機①

「多分いつもはアリサがいたから言ってこなかったんだと思う。今日はアリサがいないから」


 チャンスと思ってかよ、くそっ。


「大月さんは戻ってくれ。僕がたまたま出会わせたって方がいいでしょ」

「でも……」

「大丈夫。大事な友達を傷つける人相手なら僕は臆さないから」

「……分かった。気をつけてね」


 大月さんに具体的な場所を教えてもらい、僕は現場へと向かった。


「獅子くんにもう一回電話しよう……早く出て」


 校庭のベンチでご飯を食べてたって言ってたから……きっと校舎裏だろう。

 人の気配を感じたために気取られないようにゆっくりと近づいた。


「あんたさ……。男に色目使うのマジでやめてくんない?」

「調子に乗りすぎ。好きな相手がデレデレしてんの見ていい気分なわけないんだよ。この子に謝れよ」

「ずっと好きだったのに何でぽっと出のあなたに盗られなきゃいけないの」


「……っ」


 想像通りの展開だった。

 3人の女子に詰め寄られている紬の姿があった。


「わ、わたし盗ってなかったいない……」

「は? あんたのせいでしょ! あと少しって所であんたが現れて。どう落とし前つけるの」

「そんなこと言われても……」


「可愛い子ぶっって。男子にだけいい顔してんのバレバレなんだよ。本当虫唾が走る!」

「これ以上調子乗るってなら……」

「最低」


「いやっ」


 紬の声色は非常に震えていて、今にも泣きそうな感じだった。

 想像以上によくない状況なのかもしれない。相手もかなり高圧的だ。そういう相手に対処方法には経験がある。

 僕はすぐさまその空間に飛び込んだ。


「紬……。こんな所にいたのか! 探したよ」

「……りょ、りょうま」


 大月さんが助けを呼んだって風にすると彼女に害が及ぶかもしれないから偶然を装う。

 ま、そんなことしたらアリサと獅子が許さないだろうけど。


 僕は弱さを見せている紬の姿を見て、正直困惑していた。

 僕の知っている柊紬はマイペースで自分が一番だと思っていて、獅子に真っ向勝負を挑む強い女の子だ。

 なのに今その片鱗はまったく見えない。

 十年経ったら人は変わる。僕だって大きく変わった。でも……。


 僕は紬の手を引っ張って連れて行こうとする。


「おい、何勝手に連れていこうとしてんだよ」

「あんた誰よ?」


「紬の幼馴染です。彼女に用があるので引き取りますね」


 紬が僕の背中にぴたりとくっつく。心底怖がっているようだった。

 相手は知らない女子だな。同じクラスの子ではないようだが、見た目も派手で気が強そうだ。


「陰キャの男にも手付けてんのかよ。本当卑しい女。あんたその女の噂を知らないの?」

「噂……ですか?」

「男をとっかえひっかえしてるって噂。可愛い顔して相当な悪女だよ」


 何か凄く腹が立ってきた。

 正直僕もこういう場に立つのは好きではないんだけど……。

 幼馴染をバカにされて平静でいられる気はない。


「紬は今、幼馴染である僕の実家に居候していて、学校の行き帰りは一緒なんですよ。休日も一緒にいることが多いです」

「それがどうした」

「紬がとっかえひっかえしてる暇なんてないはずなんですが。その噂、本当なんですか?」

「は? みんな言ってるし」

「言ってるだけで見た人いないんでしょ」

「男子とばっか話してんは事実だし!」

「それで悪女の扱いって普通に考えて浅はかって思いませんか?」

「うざっ! 何なのコイツ!」


 恐らく噂が噂を呼んで、先走ったこの女子達が詰問しに来たわけだ。

 噂に振り回される人間は本当に浅はかだ。僕も中学の時にそれに振り回されたが、何一つ変わらない。

 標的が紬から僕に変わったな。もう一押しして神経逆なでおくか。


「しかもアリサがいない時にわざわざ狙って声をかけてきたんですよね。ちょっと姑息じゃないですか」


「ふざけんな!」

「朝比奈アリサは関係ない! あんな高飛車女がいたって一緒だっての!」

「調子乗ってけどあんたなんかウチの彼氏に言えばボッコボコだし。あーし達に言いがかり付けたって言えば……」


「困ったら男頼りかよ。情けないな」

「はぁ!?」

「アリサだったら男相手でも絶対引かないし、怖じ気づかない。そもそも噂を信じ込んで先走って馬鹿なマネもしない」


 僕の知っている朝比奈アリサなら腕を組んで物怖じせずに立ち向かうだろう。

 そんな強くも美しい女の子を知っているから僕はこんな不抜けた女どもに怖じ気づかない。


「あなた達の方がよっぱど悪女ですよ。適当なことを言うな!」

「っ!」


 女の中の一人がスマホを取り出して、僕の写真を撮り始めた。

 おいおい、何するつもりだ。


「あんたに襲われたって言いふらしてやる」

「なっ!」

「そうすりゃあんたは終わりだ! その女と一緒に地獄に落ちろ」


「何やってんだ?」


 その時だった。あらぬ方向からの声に皆、そちらに視線を向ける。

 そこには誰よりも格好いい、まさにヒーローのような男がいたのだ。


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