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08 学校一人気のあるボスに目をつけられた件④

 あっ、と思った瞬間、朝比奈さんがメニューを掴み取る。

 そのままポンっと音がしたように顔を赤らめてしまった。


「あああああ……き、昨日まで日替わりはサイフォンだったのに!」


 ここのコーヒーは日替わりと言いつつ、続けて提供されるのが多いのかもしれない。

 朝比奈さんが鋭い目で睨んでくる。

 鋭くても何だかさっきより可愛らしく見える。

 あてつけ? 騙したわねと言わんばかりだ。

 そんなつもりじゃなかったのに。


「まぁ、間違った知識のまま話すのは少し笑ってしまいましたけど」

「くっ」


「でも朝比奈さんの話が楽しかったのはほんとですよ。サイフォン式の話なんて聞けるもんじゃないですし、聞けてよかったと思ってます」

「むぅ」


 一方的に笑うのは宜しくない。からかいと褒めを同程度に提供してあげる方が人と話す時は都合が良い。


「小暮くん、あなたって」


 その時だった。朝比奈さんのお腹からきゅーーんと可愛らしい音が鳴り始めた。


 もちろん聞こえたのは本人と僕だけだ。


「ちょ、ちょっとお手洗いに行くわ」


 ばっと朝比奈さんが立ち上がり、奥の方に行ってしまう。

 お腹空かせてるのかな。

 しかしもっとクールで完璧なイメージだったけど案外抜けているというか。

 間違ったコーヒー知識を大胆に高説するとは思わなかった。


「でも可愛らしかったな」


 学校一の美少女のポンコツシーンをこの目で見れたのは貴重だ。


「ご注文は以上でよろしいかな」


 マスターを待たせたままだった。この騒ぎでも動じていない。さすがだ。


「朝比奈さんはよくここに通われてるんですよね?」

「ええ、平日のお仕事がある日以外は大抵来られますね」


「うーん。じゃあ普段良く頼んでいるものってありますか?」

「こちらの料理になります」


「へぇ。あの、こういうトッピングってあったりします?」


 二十分ほど時間を経て朝比奈さんは戻ってきた。朝比奈さんは手を組んで仁王立ちし、座っている僕は見下ろされた状態だ。


「ち・な・みに電話をしてたから帰ってくるのが遅くなったの。勘違いしないようにね」


「あはは……」


 その弁護がしたかったのか。トイレに二十分は確かに長い。別に二十分大便しても僕は構わないが、女の子ゆえにそう思われたくない気持ちは察する。


「ご注文のパンケーキです」 

「わぁ……!」


 朝比奈さんが戻ってくるのが遅かったため着席と同時に料理が運ばれてきた。

 ふんわりパンケーキに朝比奈さんは強く反応する。

 やっぱり聞いてた通りデザート系が好みなんだな。

 ふんわり熱々のパンケーキが朝比奈さんの所に置かれた。


「え、これ……小暮くんが頼んだんじゃないの」

「頼んだのは僕ですけど、朝比奈さんが食べてください。いつも頼んでいるのに頼まないのは僕に気を使っているのかなって思って」


「一応言っておくわ」

「はい」


「さっき私のお腹が鳴ったように感じたかもしれないけど」

「はいはい」


「幻術よ」 

「……」

「げ、幻聴よ」


 言い直すのかよ。


「ぷっ」 

「笑わないでくれる!?」


 そんなおかしな仕草が面白くてつい、笑ってしまう。冷めない内にどうぞと声をかけ、朝比奈さんはしぶしぶソースの入った小瓶に目を向ける。


「いつものハニーソースじゃない……白い?」

「どうぞかけてみてください」


「変なもの入れてないでしょうね。そういう事件を聞いたことあるし」

「用意したのはマスターですよ」


 少しだけ怪しまれるが大したことはしていない。

 ナイフでパンケーキを裂き、軽くソースかけ、フォークで突いて口に含む。


「んん~~~!」


 頬張った瞬間、甘美な表情に包まれた。


「え、なにこれ。凄く甘い! ウソ、いつもと違う。キャラメルっぽい!」


 さっきまで険しめな表情が消え去り、まるで子供のようにはしゃぎ始めてしまった。

 ほっぺに手を当てて本当に美味しそうにパンケーキを頬張る。

 さっきから片鱗は見えていたけど……ここまで大胆に見せてくるとは思わなかった。これが本当の朝比奈さんの素なんだな。


「さっきの砂糖の量からド甘いのが好きなのかなって思って、マスターに頼んでハニーソースにミルクやグラニュー糖を混ぜてもらったんです」


「こんなに合うなんて。もしかして小暮くんって料理が得意だったりするの?」

「ええ、甘い物好きな友人のためにいろいろ作っていましたからね。喜んでもらえて良かったです」


 朝比奈さんが急に黙り込みじっと見つめてくる。

 そんな仕草につい照れ笑いをしてしまう。

 次にあっという間に空になってしまったお皿に目を配る。

 少し悔しそうな顔をしたが急に立ち上がった。


「マスター! パンケーキ、三枚おかわりください!」

「三枚!?」


「いつも三枚食べてるの! こんな甘いソースがあったら我慢できないじゃない!」


 運ばれてきた三枚のパンケーキに特製のソースをかけて、ご機嫌そうに食べていた。


「晩ご飯はどうするんですか?」 

「普通に食べるわよ」


「そんなにパンケーキ食べたのに?」 

「お菓子は別腹でしょ」


 それは満腹の時の話であって、まずパンケーキを腹に入れる時は言わないんじゃないかなって思う。



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