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77 アリサの部屋で②

 わ、話題を変えよう。


「アリサの髪って本当に綺麗だよね! 何か使ってるのかな。ひよりの髪とかも同じようにしたらいいなって思って」


 陰キャ特有の早口。


「……お手入れはしてるよ。ヘアオイルにもこだわってるし。毎日力入れてるもん」

「へ? どうして」

「毎日頭を撫でて欲しいからに決まってるし」

「……あ、そういう!」


 まさか、僕に頭を撫でてほしいばかりに手間暇かけているのか。

 嬉しいけど……めちゃくちゃ恥ずかしい。でもそうだよな。この髪の触り心地最高すぎるもん。


「本当に何度触っても飽きないよ」

「だったら」


 アリサは起き上がって僕の側に体を寄せてくる。

 その艶っぽい唇に目が行き、僕はアリサに見惚れた。


「他の所も触ってみる?」

「え……」

「涼真なら……いいよ」


 それはどこのことだろう。その強調された胸とか、白く瑞々しい太ももとか……それとも。

 これがアリサからの誘いだというなら僕は……。


「じゃあ……手のひら、いいかな」

「ん」


 アリサの差し出した手を掴み、ゆっくりと触れていく。

 小さくて柔らかくて女の子の手だ。


「涼真の手は温かいね。バスケやってるからかな」

「そうかも」


 僕とアリサは両手を合わせて互いの手のひらの感触を確かめ合った。

 このまま恋人繋ぎのように組み合ってそのままベッドへ……なんてことをつい想像してしまう。

 今のアリサならそれも受け入れてしまいそうだから結局僕の意気地があるかどうかなんだろう。


「ねぇ涼真」

「な、何?」

「してもいいよ」

「何を!?」

「涼真のしたいこと」


 この状況でしたいことなんて限られている。

 ベッドの上で男女が二人。

 アリサが求めてくれるなら僕はもう一歩踏み出すべきなのか。

 その余りに可愛い彼女の姿に見惚れ少しだけ力を入れようとしたその時だった。


「おい!」


 アリサの部屋の扉を開けて、静流お兄さんが乗り込んできた。


「いつまで待たせるんだ。俺は腹が減ったぞ!」


 気づけば時間は19時を超えていた。僕とアリサは両手を握りあったままベッドの上で向かい合っていた。


「……おまえ達やっぱり付き合ってたのか」

「ち! まだ付き合ってないしっ!」


 まだって言い方は違うと思う。


「俺も詳しくは無いが女子の部屋で男女が手を繋いでいたら付き合ってるもんじゃないのか?」


 お兄さんの言ってることはごもっともだが……僕とアリサはそういう関係ではないのだ。


「いいから部屋から出ていって」

「アリサ、急に立ち上がったら危ないっ!」

「きゃっ」


 バランスを崩したアリサが僕の方に倒れ込んでくる。

 僕は動けない。アリサを庇うにはこの体勢のままでいるしかないからだ。


「むごごごご」

「ひゃんっ! 涼真、もぞもぞしないでぇ」


 幸か不幸かアリサの胸に顔を埋めることになってしまう。

 役得だけどボリュームがありすぎて、とても息が苦しい。


 僕は助けを求め、静流さんを見た。


「そうか。君が俺の弟になるのだな。早く済ませてメシを作ってくれ」


 そう言って静流さんは立ち去ってしまったのだ。

 ああ、どうしてこうなったのだろう。僕はアリサの胸に埋もれたまま意識を失ってしまったのであった。


「涼真? ちょ、涼真しっかりしてぇ!」


 でもこんなラッキーイベントもたまにはあってもいい。そう思える日だったと思う。

次から大きなお話になります。

次話は10月に入ってからお届けします。


ちょっと大事なお話となります。


本作は2巻部分は起承転結の転の部分となり、全ての伏線を回収できるのは3巻部分となります。

つまり続刊が必要ということで、今の段階だと正直かなり厳しい状態だと言われています。

もし1巻が好みで2巻も購入予定の方がおられたら発売後、1週間以内に購入頂けると凄くありがたいです。

逆にそれを超えてしまうと打ち切りのジャッジを食らう可能性が高いです。


作者としても書籍として最後まで出したい気持ちが強いので、強制はできませんがお願いを聞いて頂けると嬉しいです。


ではまた10月にお会いしましょう!

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