73 直視できない
大月さんめ……。
何てことをぶっちゃけてくれたんだ。
アリサが僕を好きだなんて世迷い言を……。本人の口から聞いてないので100%ではないのは間違いないけど、最近のアリサの態度や親友の大月さんがゴリゴリに押す所を見ると90%くらいには跳ね上がる気がする。
僕はどんな顔をしてアリサに会えばいいんだ。
スマホを開き、さっき大月さんが送ってくれたアリサの写真を画面に映す。
「……」
めちゃくちゃ可愛いな。こんなの反則だろ。
それはカフェなんかでの写真だ。正面にアリサがいて左手を頬に添え、おそらく誰かにあーんしている所の写真が撮られている。
ちょっと恥ずかしそうな表情で、長くきめ細やかな金色の紙が凄くよく目立つ。
ぱっちりとしたエメラルドグリーンの瞳はとても綺麗で小さく柔らかそうなリップに思わず目がいってしまう。
本当に……凄く可愛い。
アリサが僕のことを好きだとして、それがアリサと一緒に恋愛相談をしていた時代の僕としたら、今の意識してしまった僕はアリサに好意の範疇に入るのだろうか。
あの時の僕は敬語口調で距離を置いてたからなぁ。そんなちょっと変わった所が気にいったのかもしれん。
アリサってめちゃくちゃモテるから好いてくる男子がほとんどだったと思うし。
だからこれまで通りの方がいい。アリサもそれを望んで……。
「言い訳ばっかだな僕は」
恋愛に対して逃げてばかりだ。
中学のあの時から僕は何も成長していない。
でもそれは贖罪なんだ。あの子を傷つけてしまった僕が僕に対する大きな罪。
……それを抱えたまま誰かと付き合うなんてことをしたらきっと皆がまた僕を糾弾することだろう。
僕にそんな資格はないと。自分だけ幸せになってはいけない。
「くっ」
左目が痛む。あの時のケガで弱視となったこの左目。思い出すと痛むんだよな。
邪眼とかそういうネタにできれば良かったんだけど……あの時を思うと笑えない。
ただ一つ言えるのは……僕の勝手で誰も傷つけてはいけないことだ。
そのためにどうすればいいか、それだけに注力しよう。
◇◇◇
そして時は部活の時間になる。
いつもの部活動になるはずなのに全バスケ部員がその光景に驚きを隠せなかった。
「柊紬と言いま~す。バスケは初心者ですけど精一杯応援したいと思いますので宜しくお願いしま~す!」
「おおおおおっっ!」
バスケ部員熱狂。
黒髪美少女転校生の紬の噂は何も一年生だけで広まってるわけじゃない。
二年生、三年生にも伝わっており一目見ようと僕のクラスに来ることだってあった。
そんな紬がバスケ部のマネージャーになるんだ。熱狂しないはずがない。
「けー。紬が来んのかよ。昔みたいに泥茶とか飲ませてこねーよな」
獅子は当然ご立腹。相変わらずの憎まれ口。
ケンカするほど仲がいいとも言えるからそこは気にしないでおこう。
そして。
「朝比奈アリサ。宜しく」
「うおおおおおおおおおおっっ!」
何でアリサがここにいるんだよ。
腕を組んでいつものようにツンとした態度でそっぽを向いた。
当たり前だが学校一の美少女の彼女の存在だけで単純な男子生徒は皆、湧く。
「部長! バスケ部に仮入部したいという奴らが大勢!」
「却下だ。来年まで誰も入部は許さんからな!」
堅物部長の言葉にとりあえず安心はする。
噂を聞きつけた男子達が集まってきたのだ。
そりゃそうだ。アリサと紬が男子バスケ部に入るんだからな。
「あの~。マネージャーのお仕事は誰から教わればいいですか?」
紬が部長に声をかける。
堅物部長がその紬の仕草に顔を赤くしてしまう。紬ってナチュラルに男を煽る仕草をするんだよな。甘え上手というか。
「お、おう。誰か教えてやれ! 一年ども!」
「俺が教えてるよ!」
「任せてくれ!」
「二人ともオレが責任を持って」
「涼真に任せりゃいいだろ。いつもおまえら雑用事を涼真に押しつけてんだからさ」
「うっ」
「任せていいか?」
「いいよ。僕なら全部教えられるし」
獅子がじろりとにらみ、同級生達がたじろぐ。
バスケ部はマネージャーがいないため一年生が交代制で雑用事をやっていく。
道具の整理はみんなやるんだけど、お茶作りとか洗濯とか嫌がる人が多くてね。僕が率先してやっていた。
獅子も気づけば手伝ってくれるんだけどバスケ部のエースは腕を磨いてほしいので上級生のところに送り出すことが多かったんだ。
「紬も朝比奈も涼真となら安心できるだろ」
「獅子にしてはいい判断ね。たまには使える所もあるじゃない」
「まぁ……。涼真が教えてくれるなら」
「言っとくけどちゃんと覚えろよな。涼真に迷惑かけんなよ!」
言葉だけだと三人バチバチやってるんだけどなぁ。
「あの三人の顔面偏差値やべぇ……」
「獅子の奴、彼女いるのに二大美少女とも仲いいのかよ」
「イケメンに美少女が集まるんだな」
関係を知らないとこうなるんだよな。
獅子を取り合ってる二人の美少女という構図になる。
実際は獅子は大月さんにぞっこんだし、あの二人は……。うん、やめよう。
「紬、アリサこっちに来て。お仕事を教えるよ」
そうして二人を連れて、バスケ部でのマネージャー業務を教える。
最初は僕が付きっきりの方がいいだろうな。
アリサが近づいてきた。
「ねぇ、涼真。これはあっちに持っていけばいいの?」
「ふわあっ!? あ、えっと……うん」
「どうしたの? 顔が赤いけど」
「何でも無い! なんでもないんだ」
さっきの大月さんの騒動のせいでアリサの顔が見れない。
このアリサが僕を好きなんじゃって思うと……うぅ。落ち着け僕。いつも通りにするって決めただろ。
写真のアリサも可愛いんだけど、動いているアリサは段違いに魅力的だ。あの綺麗な声で僕の名前を呼ぶ所がまた……。
アリサは荷物を持って席を外した。
話すなら今しかない。側で作業をする紬に声をかける。
「アリサは何でマネージャーになったの? 正直マネージャーのイメージがまったく見えないんだけど」
「今日のお昼にね。バスケ部のマネージャーになるって言ったらアリサちゃんと雫ちゃんが固まっちゃって……。もちろん、雫ちゃんに言ったよ。獅子にはぼろぞうきんしか与えないから安心してって」
二人が固まったのはきっとそれじゃない。けど僕の口からは絶対言えない。
大月さんはかなり紬を警戒してるもんなぁ。僕と紬はただの幼馴染だって言ってるのに。
「それでアリサちゃんも一緒に部活に入ってくれるって。一人だと心配だったけど二人なら安心だね!」
「左様ですか」
天然というかマイペースというか。紬の純真さが眩しく思える。
しかしこのタイミングでアリサが部活に入る理由なんて……。大月さんに言われなかったからきっと僕も鈍感ムーブをしていたことだろう。
アリサもバスケが好きになったんだねと喜んで言ったら怒らせる気がする。いや、本当にバスケが好きになったのかもしれないけど……。
どうしたものか。
カフェの写真は書籍のカバーイラストと思ってください。すぐ↓にあります。
めっちゃ可愛いですよね! 口づけしたくなるリップがたまらんです!
涼真の過去はだいたい決めています。
今の感じまとめるとこんな感じ。
・中学時代に仲の良かった綺麗な女子がいた。
・ある事件でその綺麗な女子を強く傷つけてしまい、その贖罪で女子に対して敬語口調となり誰とも付き合わない覚悟を決めた。
・ある事件で目を傷つけてしまい弱視となってしまっている。
・ある事件で守ってくれた獅子に恩義を感じており彼のためなら何だってやる。
そんな感じですかね。この過去の詳細を見たいなら書籍5巻くらいまで出れば確定でやれると思うので是非とも書籍を手に取って頂けると嬉しいですううううう!
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