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70 帰り道

「あ~楽しかった!」

「紬はマイペースすぎだよ」

「えへへ、そっかなぁ」


 ほっぺにチュー事件を経て、家事代行のお仕事を終えた僕と紬はアリサの家を後にする。

 確かに子供の頃、二人の幼馴染からよくほっぺにチューをされた気がする。僕の気を引くためにことあるごとにチューされたんだよなぁ。

 女の子からのチューは悪くなかった。紬以外の人物からのチューは記憶から消しているので思い出したくない。


 それから十年はやはり意味が変わってくる。

 なのに平然とチューしてくることから紬にとって僕は本当に幼馴染のことなんだろう。

 僕を好きだという言葉が幼馴染としての言葉なら正直安心できる。


 ……そのままでいいんだ。


「アリサちゃんとのお風呂凄かったよ! 高級ホテルなんて目じゃないくらい大きかった」

「いろんな設備見てるから想像がつくよ。億を余裕で超えた邸宅なんだって思う」

「アリサちゃんも綺麗だったな。ふふーん、涼真、気になる?」


 紬が意地の悪い目つきで僕を見てくる。

 気にならないかと言われれば嘘となる。

 そりゃ僕だって思春期男子なわけで……。誰かと付き合う気はなくても女の子自体を好むのは男である以上ごく当然なわけで。


「もう凄かった。手足は細くて長いのに胸は大きくて綺麗で……日本一の美少女を決める大会なんて出たら圧倒的に優勝なんじゃない?」

「異国の血が入ってるって言ってたから本人は出たがらないだろうね。アリサの魅力はまぁ……うん」


 朝比奈アリサが誰より美しいことは誰よりもなんて月並みの言葉は言えないけど理解はしている。

 元々綺麗だなぐらいのイメージだったんだ。でも親友同士の恋を通じてとても魅力的な心を持っていることが分かった。

 アリサとの関係は大事にしたい。新しくできた親友なんだ。


「涼真が羨ましいなぁ。モテモテだね!」


 含みがあるようなことを言ってくる。

 モテモテなんてほど遠い言葉だったのにアリサや紬のような美少女が僕の生活にぐいぐいと食い込んでいる。


「紬だってモテモテだろ。みんな紬に注目してるよ」

「え~、アリサちゃんがいるからわたしには目を向けてこないよ」


 見た目だけならそうなのかもしれないが男というものは愛嬌というものに弱い。

 アリサは強烈な見た目で羨望を集めているけどキツい性格で一部の男子からは敬遠されている。僕も最初は怖いと思ってたし。

 だから誰に対しても笑顔を絶やさない紬の存在は評判になって当然と言ってもいい。

 負担にならなければいいけどね、


「それで結局部活はどうする? 明日は体育館にある部活を目指すんでしょ」

「それなんだけどね……。体育館って女バスや女バレーを中心に女の子だけの部活しかないじゃない。わたし、女の子だけの部活は辞めておこうかなって」


 随分と妙な断り方だ。女子系の部活に入りたくない。僕には意味が分からなかった。

 そういえば今日いた陸上部は男女混合の部活だ。だから仮入部したのか。


「じゃあどうするの? 文化部は辞めとくって言ってたよね」

「うん、だからね」


 紬が僕の目と合うことになる。


「涼真がいるバスケ部に入部しようかなって」

「バスケ部!? 僕がいるのは男バスだよ! あ、もしかしてマネージャー希望ってこと」

「そういうこと」

「それは願ったり叶ったりだけど……」


 今、男バスはマネージャーがおらず下級生がマネージャー業務を兼任してやっていた。

 スタメンではない僕は結構筆頭でやってたりする。


「紬はプレイヤーとして動きたかったんじゃなかったの?」

「そうじゃないよ。ただ部活を通じて仲良くなりたかっただけ。……でも」


 紬は夜空を見上げ、少し声色を下げて続きを口にした。


「難しいなら涼真達の側にいる方がいいかなって」


 この10年。変わってない所も変わってしまったことも多いこの幼馴染がどのように暮らしてくらのか。

 僕はまだ知ることができないのかもしれない。


 ◇◇◇


 全てが終わり、夜の一人の時間を楽しむ。

 最近獅子が僕の部屋にこなくなった気がする。特に大月さんと過ごしてる時は……。

 ナニしてるのかなー。押しかけてみるか。


 ピコンと音がしてスマホに通知が入る。

 開いてみると大月さんからメッセージが届いていた。


 明日の朝、時間ある? 

 二人きりで話したいことがあるの。


 そのメッセージが送られていた。

 うーん、彼氏持ちの女の子に二人きりで会うのってどうかなって思うんだよな。

 断れないかな。何か嫌な予感もするし。

 とりあえず、朝早くじゃなくても良くない? 朝練無い日だしもっと寝たいんだよな。

 そんなメッセージを送ってみた。


 ピコン。


「げ」


 『獅子くんと付き合う前はしつこいくらい朝に話しかけてきたくせに、付き合ったらもう放置するんだ。小暮くんって釣った獲物に餌を与えないんだね』


 そんな長台詞が帰ってきたのである。

 うん、言えることがあるよね。


「少なくとも彼氏の親友に言うセリフじゃないよな!」


 仕方ない。明日の朝、早めに出るか。

 親友の恋人と秘密の密会である。

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