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68 紬と一緒に③ ※アリサ視点

「いつも涼真にべったりだから……その、涼真が好きなのかなって」

「うん、好きだよ」


 あっけからんに言う。

 やっぱりそうなのか。だったら雫の言うように……柊さんに伝えないと。


「わ、私も涼真のことが好きなの! 彼に恋をしてるの」

「……アリサちゃんが」


 柊さんが目をぱちくりとさせながら私の顔をずっと見つめていた。

 どんな返事が来るだろう。

 でも確かに言っておいた方がいいと思う。涼真を好きな気持ちに負けたくないから。


「そうなんだ! こんな綺麗な子に好かれるなんてさすがわたしの幼馴染だね」

「へ?」


 あまりの予想外の反応に今度は私が止まってしまう。

 動じるのではなく、まさか喜ばれるとは思わなかった。


「あなたも涼真のことが好きじゃなかったの?」

「好きだよ。あっ! あのね、わたしその……涼真を好きなのってそういう意味じゃなくて」


 柊さんは突然慌てて始めた。少し顔を赤くして……ぼんやりとした表情を浮かべる。

 もしかしたら私は勘違いをしていたのかも。


「わたし……その、恋って良く分からないの。だから涼真のことは大好きだけど……それは恋として好きじゃないと思う。アリサちゃんが雫ちゃんを好きな気持ちに近いかも」

「あなたの好きってそういうことだったの……」

「親しい男子なんて正直、涼真と獅子ぐらいしかいないから。男の子で涼真が一番好きなのは間違いないけど……アリサちゃんが心配するようなことはないと思う」

「……よ、良かったのかな」


 何だか拍子抜けしてしまった。

 これだったら涼真を好きだって言う必要なかったのでは……?


「涼真の前にあなたが現れたから心配になって……」

「あー。そうだよね。でもアリサちゃん相手だったら誰も勝てないよ。うん、涼真が羨ましいなぁ」


 柊さんは表情がまたさっきみたいに優しいものになる。

 偽ってるとかそういうのではなさそうだ。


「涼真に告白するの?」

「こっ! そんなのできないっ! 涼真は私のこと……友達としてしか思ってないもの」


 仲良くはなれていると思うけど、、やっぱりここぞって時に涼真から壁を感じる。

 これ以上は近づけない……そんな壁が見えるの。


「私はあなたが羨ましい。涼真の側にいつでもいれるんだもん」


 それは事実。私が雫や心の側にいつでもいれるのと同じでこの子は涼真とずっと側にいることが許される。

 幼馴染という特別な関係。


「ねぇアリサちゃん」


 ふいに柊さんが私の手の裏に手を合わせていた。

 純粋な黒色の瞳に吸い寄せられそうだ


「もし良かったらわたしも手伝おうか? アリサちゃんと涼真の仲を深めるの」

「いいの?」


 柊さんは笑う。


「わたし、見る目はあるから。アリサちゃんならきっと涼真を幸せにしてくれるって思うから」

「柊さん」

「でも……一つだけ条件つけてもいいかな」


 柊さんは言葉を続ける。


「わたしが幼馴染として涼真の側にいることは許して欲しいの。涼真の側にいられなくなるのは耐えられないから」


 まっすぐな言葉だ。でもその声色には迫真の感情がのっているように思う。

 柊さんにとって何よりも大事なことだろう。

 好きな人の側に異性の幼馴染がいるってのは本来であれば面白くない所ではあるけど……それを断ることはできない。


「あなたから幼馴染であることを奪うつもりはないわ。まぁ、嫉妬はするし、羨ましいと思うかもだけど」

「ふふっ」


 柊さんは両手を合わせてくれた。

 やっぱり話をできて良かった。この子の気持ちが分かった気がする。


「あなたのこと……紬って呼んでいい?」

「あ……! うん、わたしを名前で呼んでアリサちゃん!」


 紬が今日一番の笑顔を見せた。

 私の気持ちを伝えたおかげで彼女とちゃんと友達関係になれる気がした。


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