66 紬と一緒に① ※アリサ視点
「どうしたのアリサ、顔が真っ赤だよ。緊張しているのかな」
「だって……」
「僕とお風呂に入りたいって言ったのは君じゃないか。真っ赤な顔をした顔も可愛いよ」
そう、ここは我が家のバスルーム。
今日、私は片想い中の涼真と一緒にお風呂に入ろうとしているのだ。確かに私は言ったよ!
柊さんに対抗してお風呂に入るなんて言ったせいでこんなことになるなんて。
家族を除けば男の子とお風呂なんて一度もない。
「しかし大きなバスルームだね。そんな所に僕を誘うだなんて……アリサはえっちな子だな」
「そ、そんな」
父が風呂好きのため我が家の風呂ルームは凝りに凝っている。2年前に家をリフォームしてからは特にって言えるかも。
私はたまにしか使わないけど個室サウナにジャグジー、奥には室内プールも存在する。
多忙だけどラブラブな両親がいつも二人で入っているのだから広くて当然だ。子供達はその点ノータッチである。
ハウスキーパーがいないと賄えないのはこういう所があるからよね。
「さぁおいで。抱いてあげるよ」
なんだろう、今日の涼真はかっこよすぎる。
いつも心優しくて穏やかなのに情事の時だけ力が入ってリードしてくれるそんなギャップが大好きで萌えるのだ。
こないだまでは絶対男には靡かないって堅く心に誓っていたのに好きな人だったらいいかなって思ってしまうのが恋の怖い所。
「さぁ……タオルを外して……」
「は、はい」
言われるがまま、私ははらりとタオルを外して裸体を晒す。
元々太らない体質だから食べても変な肉はついてないはずだけど大丈夫かな。いろんなとこの処理とかあんまり考えてなかったかも。
ああ、意外に汚いねって言われたら死んじゃう。
でも涼真は優しい笑みを浮かべてくれた。
「とても綺麗だ。アリサは世界で一番可愛いね」
そんなこと言われた顔が真っ赤になってしまう。
涼真も下半身を隠す、タオルを外した。
これでお互いは裸同士。この後はきっと男女の営みが始まるのだろう。
始まる……。
あれ、何で涼真の股間部分が真っ白になっているんだろう。
そうか。理由は一つ。
私、涼真の裸を見たことがないからだ。
そう、ここは……。
「アリサちゃん!」
「ひゃい!?」
「どうしたの? ぼーっとしてたけど」
「なんでもないわ」
うぅ、私の馬鹿。涼真と一緒にお風呂入る妄想に浸ってしまうなんて……。
普通に考えれば涼真があそこまで積極的に来ることないよね……。私だってそんな勇気ないし。
「アリサちゃんのおウチのお風呂、すごいねー! 初めて見たよ」
「正直私もやりすぎだと思うわ。こうやって話をしながら入るにはちょうどいいけど」
柊紬。涼真の幼馴染の子。
恋のライバルになるか見極めなければならない。
そしてあのことを彼女に伝えるんだ。
「すっごい、サウナやプールまであるなんて……。アリサちゃんって何者なの」
「親が凄いだけ。私はただ恵まれただけの高校生よ」
将来のビジョンとかはいろいろあるし、それに準ずる教育も受けているけどそれはあくまで将来への投資なだけで今のは私はまだ何者でもない。
兄のようにスポーツの世界で活躍し始めたら話は違うけど……。
「アリサちゃん、すっごく綺麗だし、わたしは憧れるけどなぁ」
自分の容姿が特別優れているのは分かってるし、日本一とは言わないけど上位に位置する自覚はある。雫は世界一可愛いけどね!
そうじゃなければあれだけ男が寄ってこないだろう。箱入り娘のつもりではないので美人ではないと否定するつもりはない。
「あなただって十分魅力的でしょ? 自覚はあるわよね」
「……うーん、まぁ」
柊さんは少し言いよどむ。
猫かぶりな子ではなさそうね。
そして私と同じで男の好意で面倒くさい経験をしたことがある感じだわ。
「で、でも絶対アリサちゃんほどじゃないもん。日本人離れした顔立ちと金色の髪、びっくりしたもん」
雫を含むいろんな人に言われたわ。柊さんより見た目が良いから学校一の座は譲られることはないって。
でも本当にそう?
しっとりと背中まで伸びた綺麗な黒髪。
艶もあるし、すっごく綺麗なのよね。
私は母親の影響でこの髪色になったけど……ずっと日本で暮らしてきたから正直その髪色に憧れるわ。
涼真がもし黒髪の方が好きだったら。
「スタイルも凄くいいし、手足も細くて長くて……。わたし、ふとももがちょっとね、気にしてるんだぁ」
柊さんもスタイルは良い方だけど私ほどではない。
でもそれが何なのって話。正直、これ以上大きくなっても困るっていうか。まだ大きくなってるのよね……。生活に支障も出てるし。
逆に柊さんの胸は適度な大きさだわ。ボリュームもあるし、水着映えもするでしょうし。
それに何よりふとももよ。男の子はふとももは大きければ大きいほど良いってネットで見たことがあるわ。
もし涼真が太もも好きで巨乳なんて無理って思っていたら。
「勝てないっ!」
「アリサちゃん、どうしたの!? 何に勝てないの!?」
「なんでもないわ」
「う、うん……」
あなたによ! っと言うわけにはいかない。
はぁ……駄目。悪いことばかり考えてる気がする。ちょっと落ち着こう。
「もし何か悩んでるならわたしで良ければ話を聞くよ!」
全部あなたのことなんだけど!?
この歯がゆさがなんとも言えないほどだった。