65 ごはんを食べよう
とりあえず猫耳は封印。
アリサにも紬にも外してもらい、ようやく夜ご飯のお仕事に移ることができる。
料理を教えるという話だったがさすがにもう遅いので後日にしてもらうことにした。
手早く三人分を作るために紬にも手伝ってもらったんだけど……。
「柊さん、料理まで出来るなんて……勝ち目ないじゃない」
何だかえっちな格好したまま、ご飯をがっついていた。
今日の晩ご飯はチキンソテー。ご飯に合うように辛めのソースで仕上げており、アリサのおかわりが止まらない。
「涼真と柊さんが作ったご飯凄く美味しいわ。愛情が籠もっていて……私、あなた達の子供になりそう」
何を言ってるんだろうかこの子は。つっこみそうになる気持ちを押さえて、箸を進めていく。
「アリサ、おかわりいる?」
「食べりゅ」
確かに子供かもしれない。
まぁ……大月さんが相当甘やかして育ててたもんな。
「アリサちゃんってたくさん食べるんだね……。でも体は細いし、やっぱり胸」
「紬、みんな一度は思うことを口には出さないように」
「アリサちゃんみたいになるにはいっぱい食べた方がいいのかな。よーし、涼真、わたしもおかわり!」
「紬は太りやすいって言ってなかったっけ。いいの? 大丈夫?」
「ちょっと! 余計なこと言わないで」
「私の前でイチャイチャしてぇっ!」
また怒られてしまった。
そんなにイチャついてるように見えるのだろうか。
幼馴染だったらこんなもの……と思ったが異性の幼馴染って紬が関係する組み合わせしかないんだよな。
アリサの幼馴染はみんな女の子だし。
ん?
「私だってイチャイチャされたいのに」
「アリサ、口元にソースがついてるよ」
食卓のテーブルの上に常備しているナフキンを手にアリサの口元を拭う。
うん、綺麗になった。普段なら絶対やらないんだけど……絶対やれってメモに書いてた仕事だし。
「な、な、な、なっ!」
アリサは顔を真っ赤にさせてしまう。あれ、もしかして聞いてない?
怒られる前に言い訳をしないと。
「大月さんの家事代行メモにあったんだよ! アリサは……その食べこぼす時があるから優しく拭ってあげてって」
「う、嘘! し、雫ぅぅぅ!」
「知らなかったらごめん」
「むぅ、そのメモ。他にも何が書いてたの」
「確か綺麗に食べたら頭を撫でて褒めてあげるとか1週間に1回は耳掃除してあげるとか風呂上がりは髪をドライヤーで乾かしてあげるとか。まだまだあるけどこれ全部大月さんにさせてたの?」
「全部じゃないよ!?」
じゃあ大半はそうなのか。
そりゃ大月さんアリサを甘えさせすぎだよ。いくら僕でも同じ幼なじみでも獅子に対してはここまではしない。
「分かった。アリサが嫌ならこういうことはしな」
「涼真ならいいよぉ。して」
何ということでしょう。この破壊力。同性の獅子なら絶対やらないことだけどアリサがしてというのであれば甘やかしてしまいたくなる。
良いならやっていいんだよな。
別に変なことはしないけどね!
「涼真とアリサちゃんって仲良しなんだね」
「そりゃまぁ……友達だしね」
「うん! 仲良しは良いことだよ」
そう言われるとこのアリサとの関係は少し複雑とも言える。
友達……雇用主、深くは考えてはいけないのかも。
「柊さんは……。そうね、あなたとはもう少し話をしないと駄目かも」
「アリサちゃん?」
「良かったら一緒にお風呂に入らない? ウチは広いからゆったり話が出来るわよ」
「ほんと! 入る入る」
アリサと紬で二人きりか。少し心配な気もするけど。
この家のお風呂だったら豪華なんだろうなぁ。
「お風呂かぁ。いいな」
その瞬間、二人の美少女がじろりと見られる。
「涼真、いくら何でもわたし達と一緒にお風呂はどうかと思うよ」
「雫と一緒にはよく入るけどさすがにそこまでは……」
「違うからね!」
そんな露骨に言うわけないだろ!
まったく僕の尊厳が台無しになってる気がする。
「家に帰ったらひよりちゃんと一緒に入ってあげるから。今日は我慢してね」
「僕が入りたいみたいに言うのやめて」
「でもちっちゃい時は嫌がるわたしをお風呂に連れ込んで」
「そのエピソードはもういいから」
紬の場合は素なのかからかってるのか分からない時がある。
まったくもう……。
「私だって涼真と一緒にお風呂入れるもん! 今度入るっ!」
「アリサも対抗しなくてもいいから!」
何だかどっと疲れる夜になった気がする。
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