64 にゃんにゃんアリサ
これはいったいなんということでしょうか。
学校ではその美貌と強気な性格で女王とも呼べるほど凜々しくも格好いい朝比奈アリサが……。
「にゃ……ぁん」
何かすごい格好していた。
プラチナブロンドの髪によく似合う、ホワイトカラーの猫耳に白いプリム。
なぜかお腹まわりは露出しており……緩い胸元がちらり。
ブラックなスカートは限界まで丈が上がっており、屈めば中が見えてしまうほどだ。
だが白い太ももが眩しい。
これは実にけしからん。
「め、メイド服だよね。何で……そんな格好を」
「涼真に料理を教えてもらおうと思って」
「その割に露出激しくない!?」
料理を教えてもらうなら普通のエプロンで良いのでは!?
しかし恥ずかしがってるアリサがとても可愛らしく直視できない。なんでこんな格好を。
「メイド服はまぁいいとして何で猫耳……」
「涼真が好きだって聞いて」
「どこ情報だよ!」
「雫」
「ってことは獅子か! 僕の性癖を広めるんじゃない!」
獅子の奴、大月さんにデレデレのせいで何でもバラしやがる。
「にゃあ」
くっそ可愛い。猫耳メイドの親和性の高さ。大月さんはアリサがやると完璧だと分かってやってるんじゃないだろうか。
気づけばじれーっと紬が僕を見ている。
「もしかしてひよりちゃんが猫耳カチューシャ持ってたけど……それって」
「え……妹にまで」
「紬、アリサ。ちょ、ちょっと待とうか」
「涼真。5歳の妹に自分の性癖を押しつけるのはどうかと思うよ?」
「そんなつもりじゃないからやめろぉ!」
天使なひよりを可愛くするにはどうしたらいいかと考えた結果だ。
決していやらしい気持ちじゃない。
いやらしいというのは目の前のようなアリサのような格好だ!
アリサがぐいっと近づいてきた。
「それより何で柊さんがここにいるの」
「たまたま帰りが一緒で……。紬が来たがったんだよ。許可もらおうとアリサに連絡しようとしけど反応ないし」
「あ、スマホ部屋に置きっぱなしだった」
つまり、スマホも持たずにその格好でずっとここにいたのか。
どういった心情なんだろう。
「それにしたって! ……何でそっぽ向くの?」
「いや……その」
「やっぱり似合ってないかな。……そうだよね。涼真はやっぱり柊さんみたいな可愛らしい人が」
うるうるとアリサの目尻に涙が浮かぶ。
あまりの予想外の反応に別の意味で慌ててしまう。
僕はアリサの両手を掴む。
「似合いすぎてるくらいだ!」
「っ!」
「だからその……。アリサが可愛くて直視できないんだよ。そんな猫耳だめだろぉ!」
「え……とえへへへへへ、可愛いって……えへへへ、嬉しくないもん」
泣きそうな顔が一変して、とろけた顔になる。
そんな姿も可愛らしいが女の子に対して可愛いだなんて、いくら友達だからって前のめりすぎだ。
こんな姿、紬に馬鹿にされるかもしれないな。
紬に視線を向けると奥のテーブルに無数置かれた猫耳カチューシャを手にしていた。何であんなにあるんだよ。
「りょーま」
紬がちょっと甘えた声を出す。
その頭には先ほど手にしていた猫耳カチューシャがつけてあり、猫の手で両手を挙げた。
「クロネコだにゃん!」
「ぐふっ! 僕は黒猫が一番好きだと分かった上での破壊力」
「む~~! やっぱり涼真は柊さんみたいな黒髪が好きなんだっ! ばかっ!」
あっちを立てればあっちに怒られる。
女の子扱いはとても難しいよ……。