51 カフェ①
例のカフェと言えば分かるだろうか。
僕とアリサが初めてちゃんと話をするようになった因縁というかきっかけの場所だ。
今日もナイスミドルなマスターが美味しいコーヒーを入れてくれる。
ちなみに今日の日替わりはサイフォンコーヒーだ。メニューを見たので間違えるはずがない。
「いっただきます!」
今日もアリサはパンケーキを3枚も注文していた。
相変わらずの健啖家っぷりだ。
そんな様子に思わず微笑みたくなる。
「なによ。いきなり笑って」
「ここに来るとアリサがいっぱい食べてる所を見れるなぁって」
「……涼真はその、いっぱい食べる女の子ってどう思う」
アリサはパンケーキを頬張るのやめ、ナプキンで口元を拭う。
そのままナイフとフォークを置いて恐る恐る聞いてくる。
そんなの聞かれるまでもない。
「いいと思うよ。特にアリサは気持ちいいくらい美味しく食べてるし、素敵だと思う」
「ふぇ」
「アリサが嬉しそうだと僕も嬉しいから……ってめちゃくちゃ顔赤いけど大丈夫!?」
「嬉し死ぬ」
「ちょ、すみません。お冷やくださーーい!」
真っ赤になったアリサが元に戻るまでかなりの時間を費やしてしまった。
「ごめんなさい、取り乱しちゃった」
「アリサってやること成すこと全部極端だよね……」
「涼真と出会ってから……ホント心が揺らいで仕方ないの」
「えっ! じゃあ……あんまり会わない方がいい?」
「そーゆー、鈍感な所がだめなの!」
「はい、わかんないけどごめんなさい!」
とりあえず何でもいいから謝っておけってのが持論である。
まぁ正直、僕もアリサと出会ってからわりと人間関係動いているのでお互い様なのかもしれない。
本当の意味で落ちつくまで少し時間がかかった。
「それで。今日私を誘ってくれたのって何か話をしたいってことなのよね」
今日のきっかけは僕からアリサをカフェに誘ったことだった。
正直アリサと話さなきゃいけないことは特になかったので……まずい、怒られるかも。
でも嘘つくよりはいいか。
「ごめん」
「へ?」
「実は目的があって誘ったわけじゃないんだ。ただ……何気なく誘ってしまっただけで。気を悪くしたらごめん」
「いいんじゃないそれで」
アリサは微笑み、じっと僕を見た。
「ただ……一緒に暇を潰す。親友らしくて私は好きよ」
「アリサ」
「涼真が暇で何もやることがなかったらまた誘ってよ。私はいつでもウェルカムだから。雫が付き合ってくれないんからほんと暇だし」
「あはは……分かったよ。ありがとうアリサ」
「もちろん私も誘うんだからね」
アリサとこうやって何気なく話す時間が本当に楽しいと思う。
獅子が大月さんに首ったけになっちゃったけど……本当にいい出会いが出来た、心から思う。
「じゃあ……今度は私からいい?」
「うん」
「ねぇ涼真。雫の代わりに私の家でバイトしない?」