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50 カップル

 授業が終わって、放課後になる。

 帰りの準備を終えて、アリサが僕の席にやってきた。


「涼真、じゃあ……行こっか!」

「うん」

「……涼真、どうかした?」

「なんでもないよ。行こうよ」


 顔には出ていないと思っていたけど、アリサに少し感づかれてしまったのかもしれない。

 でも大丈夫、僕とアリサは親友で……それ以上の関係になることはない。

 この関係が一番心地よいじゃないか。


「雫、行こうぜ」

「うん」


 僕とアリサの視線の先には放課後に入ってすぐに恋人のところへ行く獅子の姿があった。

 大月さんも獅子に寄り添ってる形だ。


「二人とも熱いねぇ!」

「ラブラブじゃん」


 他の生徒達から声が上がった。

 最近、恋愛関係となった二人は学校内でもホットな話題となっており、良い意味でからかいの対象になっていた。


「当たり前じゃねーか。雫は世界で一番可愛いんだからな」

「もう! 獅子くん恥ずかしいよ」


 顔を赤らめつつも嬉しそうな顔を隠そうとしない大月さん。

 二人の仲は非常に良好と言える。


「雫ってあまり目立つことが好きじゃなかったんだけど……恋をするとやっぱり変わるものなのね」


 今までの大月さんなら獅子の体に隠れてしまいそうだけど堂々としている。

 幼馴染だからアリサもその変化に驚いているようだ。

 アリサの幼馴染は二人とも恋人が出来て、その彼氏に合わせるような性格になったと言っている。

 アリサとしては複雑なのかもしれないけど幸せそうならそれもありだろう。


「大月さんって最近までずっとアリサのお兄さんが好きだったんだよね」

「ええ、見て分かるくらいにね」


 だけど今は完全に獅子にべったりのように見える。

 今もその小さな指を獅子の手に絡ませていっぱいアピールしているように見えた。

 告白された側がするような行動には思えない。


「一緒にご飯食べても平沢くんの話題ばっかり。あの男に嫉妬が抑えられないわ」

「こっちも大月さんの話題ばかりだね。まぁくっつけたのは僕達だし、仕方ないといえるけど」

「そ、その分涼真が構ってくれるってことだもんね。……親友だし」

「う、うん」


 アリサの言葉にちょっとドキっとしてしまうが何とか平静を保つ。

 しかしまぁ……こうやってアリサが隣にいることが凄いんだよなぁ。

 プラチナブロンドの髪が目立つ学校で一番可愛らしい女の子。それが朝比奈アリサだ。

 僕は獅子。アリサは大月さん。お互い親友が離れていってしまったので……その代わりをお互い求めてるのは間違いない。


「よぉ、涼真」


 獅子と大月さんがこちらに来ていた。


「今日は部活もないし、二人はこれから遊びにいくの?」

「うん、獅子くんと一緒に買い物にね」


 答えてくれたのは大月さんだった。


「そうですか。じゃあ、夜はちょっといいレストランですかね?」


 アリサ以外の女の子には丁寧口調で対応する。

 この切り替えが最近ちょっと面倒くさくなってたりする。

 女の子は誰構わず敬語だったのにアリサと話す時はタメ口で無ければならないので大変なのだ。

 うっかり、アリサに対して丁寧語口調で話すと何でそんな他人行儀なのってすごく寂しそうな顔をするのでとても焦る。


「いや、今日は俺んちで食うんだ。雫が飯作ってくれるから二人でな」


 獅子の両親は海外で仕事しているのでそこそこ大きな家で一人暮らしをしている。

 だから僕の家に来ることが多かったんだけど最近は大月さんと一緒に過ごすことが増えている。


「あまり遅くなっちゃ駄目だからね! 何されるか分かったもんじゃないんだから」

「なにもしねーよ」

「え、何もしてくれないの。……獅子くん、寂しいなぁ」

「いやっ、ちがっ! それは言葉のあやで!」


 僕の前でイチャイチャし始めるんじゃない。

 大月さんからのぶっこみにアリサが息をしてない。


「どちらにしろ雫を遅くまで連れ回すわけにはいかねーからな」

「ま、そうだねぇ」

「バイクの免許はあるけどまだ1年経ってないしなぁ。二人乗りして送れるならもうちょっと遅くまで一緒にいられるんだけど」


 獅子は大月さんを家まで送っていくのが前提のようだ。

 夜遅くに女の子一人で帰すような男じゃないからね。


「アリサ」

「……」

「もう、アリサってば!」

「はっ!」


 大月さんの声でアリサが息を吹き返した。


「アリサも小暮くんと遊びにいくんでしょ」

「ちょっとカフェに行く程度ですけどね」


 二人の遊びにいくと比べられると僕とアリサの遊びは何とも小さい。

 これが恋人と友情の差なのかもしれないけど。


「じゃあその時でいいから例の件、小暮くんに話しておいて。OKだったらわたしが後でメッセージを送るから」

「何のことです?」


「カフェでお話するならその時でいいでしょ。じゃあねアリサ、小暮くん。獅子くんいこっ」

「おう、またな二人とも」


 明確な回答を得られず、獅子と大月さんは教室から出ていってしまった。


「私からちょっと涼真にお願いしたいことがあって……。詳しくはカフェで話をするから」

「分かったよ。でもさ、やっぱり四人で話すと楽しいよね。四人で一緒に行った遊園地を思い出すよ」


「そうね。あそこで雫と平沢くんが急接近して、私と涼真も……」

「アリサ?」

「何でもないもん」


 そういう意味ではやはり僕達四人は親友と呼べるのかもしれないな。


「なら大月さんも僕にとって親友になるのかな。だとしたら彼女も下の名前で呼んだ方がいいか」


 その瞬間、がしりとアリサを肩を掴まれる。その圧力に悲鳴を上げそうになった。


「おかしいなぁ。何を言ってるのかな。涼真が女の子相手に丁寧口調じゃないのは私だけ。私以外の女の子には丁寧語口調で名字で呼ばなきゃ駄目。分かった?」

「い、イエス」


 その圧力にはどうあたって敵う気がしなかった。

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