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「なぁ、小暮。ちょっといいか」

「え」


 学校の昼休み。

 席にいた僕は同じクラスの田中、佐藤、鈴木の三人に詰め寄られていた。

 最近、獅子が昼休みを恋人と過ごすようになり、僕の席に寄りつくクラスメイトはいなかったはずなのに。


「な、なに」

「最近朝比奈といい関係だよな」


 これはアレだろうか。

 アリサと名前で呼ぶような友達関係となったことに対する詰問!

 この三人はアリサにずっと想いを寄せていて、数々のアプローチをかけていたのに、僕がうっかり仲良くなってしまったばかりに責められようとしている。


 なってこった! クラスの陽キャ軍団から敵視されたら……僕の学校生活どうなるのか!


「いや、ほんとすげーな」

「おまえのこと見直したよ」

「どうやって朝比奈と仲良くなったんだよ」


 意外な言葉ばかりが並べられる。


「獅子が何で小暮を買ってるんだって思ってたけどそういうことなんだな」


 この三人は獅子のカリスマ性に引き寄せられて友人関係になっており、僕はそのおこぼれだと思われてきた。

 この手のひら返しはなんだろう。


「朝比奈さん……、いや、アリサとはそのほらっ、獅子と大月さんが付き合うきっかけを作った時に仲良くなったんだよ」

「そういや獅子がそんな話してたなぁ。しかも名前で呼んでんのかよ。いいなぁ」


 僕は二人きりの時だけにしようって提案したんだけど、アリサがそれを拒否。

 どんな状況下でも名前で呼べと迫られてしぶしぶ従うことになった。


「みんなアリサのことが好きだったでしょ。だから責められるかと思ってた」


 これは率直な想いだった。

 この三人はかなり前からアリサにアプローチしてたわけだし、言い方は悪いが横からかすめ取った僕は責められてもおかしくはない。

 正直、付き合ってるわけじゃないので責められるのはおかしな気もするけど。


「責めたりなんかしねーよ。正直、無理線だったしな」

「他のクラスの奴らも先輩達も同じ扱いだったからな。男に興味あったんだって思ったくらいだぜ」


 あれだけこっぴどく断られていたら望みが無いと思ってしまうのも無理はない。

 もしかしたら駄目元とか挑戦とかの意味でアリサに声をかけていたのかも。


「それで朝比奈と付き合うのかよ」

「え? いやいやアリサが僕みたいなのと付き合うわけないでしょ。あくまで友達……ってだけだよ」

「でも朝比奈って俺達と小暮への接し方、全然違うだろ」

「そんな違うかなぁ」


 アリサとはいろんなことがあったけど、話す時は凜々しく格好良く……たまにポンコツな所を見せるのが可愛らしいって感じか。

 それって他の男子と変わらないと思うんだよなぁ。友人な分、僕の方が表現は軟らかいと思うけど。


 僕の言葉に田中がアリサの方を見る。


「なぁ、朝比奈」


 田中が大声でアリサを呼ぶ。女子達だけで話をしていたアリサがこちらを向く。


「なに」


 その声色は極めて低く、強い壁を感じる。


「良かったら俺達と話をしないか」

「は? 何で私があなた達と話をしないといけないの。時間の無駄なんだけど」


 冷たい言葉にばっさり切られてしまった。

 さすがの田中も心をナイフで裂かれてしまったかのに胸を押さえる。

 しかし田中は話を続ける。


「じ、実は話をしたいのは俺達じゃなくて……小暮なんだよ」


 そういう風に話を変えるんだ! まぁいくら何でもそんなことで変わるわけ…


「えっ! 涼真が私と話をしたいの!? もう! それを早く言ってくれたらよかったのにぃ」


 ひっくい声色が180度変わったかのように明るくなってしまった。

 アリサが僕の所にやってくる。


「ねぇ涼真」


 近づいてきたアリサが手をモジモジさせながら僕の名前を呼んでくる。


「話ってなに? ここでしか話せないこと?」

「え……大した話じゃないんだけど……えっと。あ、そうだ。いつものカフェに行かない? 今日部活ないし」

「うんっ、いいよ! いこいこっ。また放課後にねっ!」


 アリサは笑顔で手を振って、女子の集団の所に戻っていった。


「これでも接し方が一緒って言えるか?」

「う、うーん」

「朝比奈が誘いに応じる所初めて見た」


 こうやって比較してみると分かりやすい気がしてきた。

 アリサってもしかして僕に対して、相当に好意的だったりする?


「朝比奈って小暮のことが好きなんじゃないか」


 一瞬そんな言葉にドキリとした。


 でも。


 ――小暮くんを好きになる女子なんているわけないじゃん。何、勘違いしてんの――


 ああ、あの時吐かれた言葉がフラッシュバックで脳内を支配する。

 居心地が良すぎて忘れそうになっていたけど、いつだって僕の前にはその壁が立ち塞がっていた。


 だからもう勘違いしないって決めたんだ。


「それだけはないよ」

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