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05 学校一人気のあるボスに目をつけられた件①

「悪いけど五メートルほど離れて歩いてもらえる? 逃げたら分かってるよね」


 美人のにっこり顔は綺麗だけどとても怖い。

 圧が強く、逃げられない。まさにボス戦だ。

 学校で一番人気の女の子、朝比奈アリサが前を歩きその後ろを僕は追う。

 正直逃げたい所だが、朝比奈さんの目的が大月さんとの仲なら一層逃げられない。


 校舎を出て、裏門を過ぎ、校舎沿いの並木道を通る。角を曲がって、学園の通学路とは違う道へ足を進めるとそのままのペースで真っ直ぐに歩いた。

 生徒一同が使う正門、裏門から出る二本の通学路から大通りに出るまで一本道なのに不思議だ。 

 今、朝比奈さんが歩く道を選択する生徒はいない。

 人通りの少ない所に誘い出して脅しをかけてくるとかないよなぁ。

 朝比奈さんが突然停止して後ろの僕の方を見る。

 そのまま周りをチェックするように見渡し、そのまま建物の中へ入っていった。ここに来いってことか。


 早足で追うと外目に分からなかったが小さなカフェがあった。

 彼女はここへ入ったようだ。

 こんな所にカフェなんてあったんだ。若干古い様相で築数十年といった建屋となっていた。

 このあたりは住宅街となっており、生徒達も立ち寄ることはない。

 高校に通い始めて結構経つのに全然知らなかったな。中に入ると耳心地の良いヒーリングミュージックが聞こえてきた。


「いらっしゃいませ」


 初老のマスターが重低音の響く声をかけてくる。前には朝比奈さんがいた。


「マスター、いつもの場所を使ってもいいですか? 彼は付き添いですので」

「ええ、どうぞ」


「ありがとうございます」


 普段は高圧的な口調の目立つ朝比奈さんの柔らかな声、初めて聞いた。

 どうやらこのマスターと親しい関係のようだ。


「こっちに来て」


 客は僕達を除けば貴婦人方が多い。

 地元の人達の昔ながらの憩いの場なのかも。

 建物は古いが綺麗にされており、飾り付けも興味を引く。学生が出入りするような所ではない感じだが。


「手前に座って」 

「あ、はい」


 角の席を使わせてもらい、朝比奈さんが奥に、僕が入口側の二人席に座ることになった。朝比奈さんと向かい合う。


「うっ」

「なによ」

「な、なんでもないです」

 至近距離で朝比奈アリサと向かい合ったがその凄さに気づく。


 長く伸びたプラチナブロンドの髪とエメラルドグリーンの瞳。

 鼻筋が整った顔立ち。ハーフは必ずしも美人ではないと聞くが。

 どう見たって朝比奈アリサはとてつもなく美人だった。

 ここまで直視できない美人と出会ったのは久しくない。


「あの、なんで僕は呼び出されたんでしょう。学校じゃダメだったんですか」

「そうね。でもその前にこの店のこと知っていたか聞いていい?」


「いえ。学校の近くにこんな雰囲気の良いカフェがあるなんて知らなかったです」

「そっか、やっぱり知らないのね。私以外で来ている生徒を見たことないわ。来たら困るし」


 朝比奈さんは少しテーブルの前に乗り出し、外をちらりと覗いた。

 美女の接近に動じてしまうがそれ以上に彼女のある部分のボリュームに目がいく。

 僕は悪いと思い目を反らす。美人でスタイルが良いとか反則じゃなかろうか。


「ふぅ、誰もいないわね」


 朝比奈さんはかなり周りを警戒しているようだ。

 そういえば朝比奈さんはこの店の座席の一番奥に座っている。

 その席は建物の凹部に位置し、外からは覗けない席だ。

 確か鈴木や佐藤が朝比奈アリサは部活動に参加しておらず、授業が終わると早々に帰宅してしまうと言っていた。

 しかも校舎を出たあたりで姿を消してしまうため放課後遊びに誘おうにも上手くいかないとか。

 もしかして意図して姿を消しているのか。


「ここの場所を知られたくないとかだったりします?」

「ええ。学校にいるとあの手この手で誘ってくるのに困ってるから」


 すっごい人気だもんな。多分、僕の知り合い以外にも誘われているんだろう。


「部活動に入らないんですか? 夕方まで時間を潰したらどうでしょう」

「始めは雫と同じ園芸部に入ろうかと思ったんだけど、仮入部の段階で園芸部に人が押し寄せてね。全部私目当ての男子」


「うわぁ……」

「さすがに迷惑をかけるから入部はやめたわ」


 朝比奈さんが見上げ、遠い目をする。


「図書室に逃げても追ってくるから校内に居場所がなくてね。逃げる所を探してたらここを見つけたの」


「なるほど。今、朝比奈さんがいる場所も外からじゃ見えないですし、時間を潰すにはちょうど良いですね」


 思った以上に切実な話に苦労しているなと感じる。だとしたら。


「僕にこの場所を教えてよかったんですか?」

「良くないわ。この憩いの場所は誰にも晒したくなかった。だけどそれでもあなたと話をしなければならなかった」


 それほどまでのことを考えていたのか。僕から他の男子に漏れてしまうリスクを承知で朝比奈さんは僕にコンタクトを取ってきた。


「言いませんよ」 

「え?」


 だったらその想いは汲んであげるべきだ。


「誓います。朝比奈さんの居場所のことを僕の口からは絶対漏らしません」

「何で? あなたには隠すメリットはないでしょ……」


「僕の友達も似たような目に遭ったことがあるから気持ちが分かるんです」


 僕の親友の獅子も中学時代、似たような目に合っていた。

 中学生になって顔立ちが男らしくなり、急激に身長が伸びた結果過激な女性生徒に付きまとわれるようになったのだ。

 四六時中ついてくるし、ストーカー行為もあった。

 幼馴染として僕も巻き込まれたから大変だったね。

 獅子と釣り合わないから側に寄るなとナイフ突き付けられた時はマジでやばかった。

 男の僕に言うなよと突っ込んだもんだ。

 あんな経験するとメンタルはほんと強くなるね。何しても動じなくなる。

 代わりに強気な女子が怖くなったから目の前の子も正直怖い。

 

 ちなみに獅子が今の時点で誰とも交際してないのは女子に対して不信感があるからだ。

 男の獅子ですらあそこまで執着されるのだから、女の子の朝比奈さんは一層恐怖だろう。モテる苦労、近くで見ていたからよく分かる。


「ありがとう。まぁ言ったら言ったであなたにとても辛いことが起こるかもしれないから黙っていた方がいいと思うわ」

「へ?」


「知りたい?」

「遠慮します」


 学校で一番人気かつ、頭も良い女の子だ。そのあたり抜かりないんだろう。僕を陥れる手段なんていくらでもある。


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