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45 好き?④(※アリサ視点)

 雫の太ももって寝心地抜群なのよね。

 いくらでも寝れそう……。

 でも遊園地での小暮くんの膝まくらも良かった。筋肉がしっかりしているというか安心感が別格だった。

 また、膝まくらしてくれないかな。いや、私が彼の頭を膝に乗せて頭を撫でてあげるべきなんだろうか。そんなことを考えながら目を瞑るといつのまにか意識が途切れた。


「アリサ、アリサ! いいタイミングだよ!」

「ふぇ……無理、もうちょっと寝かせて」


「そんなにこちょこちょされたいの」

「ひっ! 起きる、起きる!」


 雫が両手をワキワキとさせて、私の両脇腹あたりに手を当ててくる。

 昔っからくすぐったいのが駄目で雫に起こされたりするのによく笑わされた。全身どこ触られてもダメなのでこの弱点は幼馴染以外にバレてはいけない。

 ほんと一秒も我慢できないって……小暮くんが出てる!

 私は飛び起きコートをのぞき込む。まだ体が覚醒していないから動きが鈍い。


「今、どういう状況なの」

「四クォーター目残り一分。四点差で負けてる状況」


「もう終わりじゃない!」

「寝過ぎだよ! 何回か起こそうとしたんだけどね」


 まわりはかなり騒ぎとなっていた。雫に聞けば一進一退の試合だったらしい。

 特に平沢くんの活躍がすごく、四人のディフェンスを抜ききってからのシュートを決めた時は凄かったらしい。

 私が爆睡していたけど、小暮くんが最後に出てきたので私を無理やり起こしてくれた。


「残り一分、相手ボールで四点差。一ゴール最大三点だから二回リングの中に入れなきゃいけない。普通で考えれば無理よね」

「でも……平沢くんなら……平沢くんなら何とかしてくれる」


 雫はもう平沢くんに想いを託しているようだ。

 今日の試合本当に凄かったんだろう。まわりを見渡せばウチの学校の応援者は皆、精一杯応援している。

 平沢くんのファンクラブの子達は大声で応援していた。


 そして残り五十秒のプレイが始まる。

 相手は時間稼ぎのためにパス回しをしている。普通だったそうするよね。

 平沢くん達も必死にボールを奪おうとするけど上手くいかない。

 みんながボールに集中しているその時だった。

 平沢くんが急に逆方向に走り出した。皆がその動きに引き付けられる。

 でも私は……小暮くんしか見ていなかったから理由は分かっている。

 敵のパス回しの隙をついて、キャッチしたボールを下からすくい上げて奪ったのだ。

 そのまま小暮くんはボールをキャッチして平沢くんにロングパス。

 受け取った平沢くんの位置はスリーポイントラインの外側。そこから放たれたシュートはリングの中に入った。これで一点差。


「あの場面で決めるのかよ!」

「さっすが平沢!」

「キャアアアアアア、獅子すごーーーい!」


「平沢くん凄いね! ね、アリサ!」

「え、ええ」


 確かにあのタイミングでスリーポイントシュートを決めたのは凄かった。

 でもボールを奪ってすぐに平沢くんにロングパスをした小暮くんの活躍は誰も見てなかったんだろうか。

 私はもう一度電光掲示板を見る。残り三十秒で一点差。ここまでくればどうなるか分からない。

 最後の攻防は相手ボールからスタート。


「頑張れ、頑張れ」


 雫も祈るように両手を合わせて応援をしている。泣いても笑っても二十秒。

 できれば勝ってほしい。みんなが必須のディフェンスでボールを奪おうとしている。


「あっ!」


 平沢くんがボールを奪って一気にドリブルで相手の陣まで攻めていく。


 残り十五秒、これが決まれば勝利だ。パスとドリブルを多用し、相手も止めようと必死だ。一人いや二人近づいてきた。


「平沢くんが押さえられてる……」


 雫のつぶやきに視線が自然とそちらに行く。

 平沢くんにディフェンスが二人ついていた。得点力のあるエースにプレッシャーをかけていく。

 相手のチームも必死だ。

 残り時間わずかのその時、平沢くんが小暮くんにパスをする。

 それを小暮くんが受け取るかと思ったらキャッチと同時に山なりのシュートをゴール方向に放つ。

 あれは本当にシュートだったのか、パスのようにも見えた。

 滞空時間の長いボールに平沢くんは隙をついてゴール下まで進み、とんでもない高さで飛び上がった。

 ゴールリングを捕らえた手はボールに触れてそのままリングに叩きつける。

 試合時間残り二秒でのダンクシュートはポイントとなり、そのまま試合終了となった。


「すごい……すごいよ!」

「ええ……劇的な勝利ね」


 隣の雫は涙を浮かべ、平沢くんのファンクラブの子は狂喜乱舞となっていた。

 最後の豪快なシュートを見せられたら誰もが引き付けられるわね。最後のシュートを決めた平沢くんの所に全員が詰め寄っていた。


 ただ一人だけは少し離れた位置でその様子を見守っていた。私はその彼の顔を見て、心からキュンとなる。

 そう、小暮くんは親友の活躍に対して凄く嬉しそうな顔をしていたのだ。

 試合は終了、お互いのチームが礼をして選手達は順番にコートから去って行く。

 最後の一分しか見てないけど結構濃い試合だったわ。

 ……最初から全部見ておけばよかったって今更になって思う。


「アリサ、ちょっとトイレ行ってくるね」

「うん」


 雫が荷物を持って階段を上っていくのを見守り、私はこの二階席でコートをずっと見ていた。

 さっきから平沢くんを称える声がひきりなしに聞こえてくる。

 確かに平沢くんは凄かった。三ポイントシュートにあのダンクシュート。

 間違いなくエースという活躍に相応しい。でも何だかもやもやする。

 最強のエースをアシストした彼の活躍も少し話題になってもいいじゃないだろうか。

 平沢くんの活躍は小暮くんの動きあってのものじゃないのかな。


「朝比奈さん」

「ひゃいっ! こ、小暮くん」


 小暮くんのことを考えていたら小暮くんが来てくれた。

 試合が終わったばかりだからかユニフォームが汗ばんでいて、髪も乱れている。いつもと違う荒々しい彼の姿にぐっとくる


「獅子を見ていませんか? 試合が終わってから急に姿を消しちゃって。どこ行ったんだろう」

「こっちには来てないわね」


「そういえば大月さんはどこに行ったんです」

「トイレに行ったけど……遅いわね」


 そして私はある可能性を思い浮かぶ、小暮くんも同じことを考えたようだ。

 私と小暮くんはすぐに試合会場を後にした。

 告白するなら、中は絶対ない。そうなると体育館の外側。建物の外周をまわって開けた所に出た時、雫と平沢くんがそこにはいた。


 ……決着の時が来たのかも。

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